時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

EUで進む移民排斥(現代のベルリンの壁)

2015-10-08 23:31:17 | ベルリンの壁2.1
予想通りに移民排斥の動きがEUで強まっている。
ドイツ政治家アレクサンドル・ラル氏のコメントを以下に挙げる。


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欧州は難民の地位を付与されなかった移民を数週間内に強制送還すると決定。

その数は数十万人に達する。


独政治学者アレクサンドル・ラル氏は
タイムズ紙が消息筋からの情報として報じたこのニュースについて、
強制送還が関係するのは主にEUとの連合協定を結んでいるバルカン諸国および東欧諸国だ
との確信を示している。

セルビア、アルバニア、コソボから
ドイツに流入した移民だけでもおよそ30万人に達している。


この数は一時はシリア難民を凌駕するまでに至った。

独の新たな法律では東欧からの移民は政治難民として申請する見地を持っていない。
それはこれらの移民が逃げてきた国では政治的迫害もなく、内紛も起きていないからだ。

こういったわけでこれらの移民はセルビアないしアルバニアに送り返される。

ラル氏はこの状況の変化について次のような考察を示している。

「つい先ごろ独では、難民を温かく受け入れている国といったうきうきした感じが支配的だった。
 独議会などはメルケル女史にノーベル賞を授与せよいった呼びかけまでなされていた。
 それはメルケル氏がこんなに人間的な側面から独をアピールすることができたから
 という理由からだった。

 独の高齢化社会は独へと働きにやってきて、これからの30年間、
 労働力として経済を維持する者から補給を受けるだろうという話だった。

 ところがメルケル氏のお膝元の政党で彼女に真っ向から反対する勢力が現われてしまった。
 市長らやあらゆるレベルの長が、押し寄せる難民を収容する施設もベッドも足りず、
 保護のしようがないと、文字通り支援を求めているためだ。

 オランド仏大統領とメルケル独首相は
 コントロールを失った難民の流れから欧州を守る手段を模索する。

 第1歩は政治難民を主張する権利を持たぬ者らを排除すること。
 第2にはシリア、ヨルダン、イラクからの難民の流れを縮小すること。
 そして最後に第3に、シリアに隣接する諸国に十分に大きな資金を渡して、
 シリア難民を受け入れてもらう
ように計らうことだ。



独がどんなに寛容な人類愛や慈悲を難民に示しているとしても、
自国民がパニックに陥ることなく、選挙民が断固とした秩序を求めて
急進的極右政党に票を投じないよう、状況はコントロールしておかねばならない」。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/europe/20151008/1007954.html#ixzz3nzG5Pd2e
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ラル氏は「極右への票を増やさないために」と言っているが、
事実上、これは右派の要求(移民排斥)に折れたのではないだろうか?

セルビア、アルバニア、コソボ。
つまるところはNATOが空爆という形で軍事介入した
コソボ紛争の傷跡が未だに癒えていないということだ。

どうも「落とし前をつける」という日本語に該当する言葉が向こうにはないらしい。

かつて、西ヨーロッパは東ドイツが国民の他国への移住を禁じたことを
非人道的な行為と非難し、ベルリンの壁を東ドイツの悪のシンボルとして描いたものだ。

皮肉なことに「東ヨーロッパに移民の自由を」とあれほど叫んでいた国々は、
今、自分たちの手で壁を築き、東ヨーロッパの人々の人権を侵害している。

国境と言う名の柵で東欧・中東をグルリと囲み、攻撃する。
これは冷戦時代のソ連や東欧諸国すらしなかった蛮行ではないだろうか?


シャルリエブドの事件のときも、テログループの凶悪さを強調する一方で、
ヨーロッパ社会のイスラム教差別に対して強く意識しなかったことに偽善を感じたが、
今回の移民排斥も、責任を持つはずの国が他国に問題を押し付けるその身勝手さに憮然とする。

EU難民問題を予言していたカダフィ

2015-09-21 00:05:51 | ベルリンの壁2.1
リビアという国家をNATOが消滅させた結果、現地人の生活維持が困難になり、
結果的に難民をEUに送り出すビジネスが横行するようになった。

実のところ、これは予測不能の事態ではなく、
現に生前のリビア元首カダフィはインタビューにおいてこの事態を予言していた。


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欧州における第二次世界大戦以来最大の難民危機は2011年3月、
リビアの指導者だった故ムアマル・カダフィ氏によって予言されていた。

死の直前に行なわれたインタビューで、氏は、リビア情勢が不安定化したとき、
アフリカ全土から数百万の移民が欧州に殺到するだろう、と述べていた。


「数百万のアフリカ人がフランス、イタリアに入るべく地中海越えを試みるだろう。
 リビアは地域の安全に重要な貢献を行なっているのだ」。

フランスのFrance 24によるインタビューでの発言。

カダフィ大佐の息子サイフ・アル・イスラム氏も、
やはりFrance 24によるインタビューで、同様の見解を述べていた。

「リビアはソマリアのようになるかもしれない。
 シチリアやランペドゥーザに海賊が出没するようになる。
 数百万の不法移民が押し寄せる」と同氏。

予言は的中した。今年に入ってから、EUには50万人もの移民が押し寄せ、
一日あたり数千人が新たに流入している。欧州委員会によれば、
今度の移民危機は第二次世界大戦以来最大のものである。


続きを読む http://jp.sputniknews.com/life/20150918/915113.html#ixzz3mI9o9kUz


リビアで20件の救助活動が行われ、
ゴムボートで地中海を渡ろうとした移民約4700人が救助された。
ロイターがイタリア沿岸警備の発表として伝えた。女性1人が遺体で見つかっているという。
死因は不明。

移民の大半、4300人は、イタリア海軍と沿岸警備、「国境なき医師団」、
EUの地中海海軍作戦EUNAVFOR Medに参加中だったドイツおよび英国の船による
合同救助活動で救出された。この演習は7月22日から行われており、
移民の不法輸送をせきとめることを目的としている。


残りの300人はギリシャ沿岸警備により救助された。
救助された移民たちは間もなくイタリアの港に届けられる。

今年に入ってからEUには50万人以上の移民が入り込み、
毎日その数は数千人単位で増加している。欧州委員会によれば、
今度の移民危機は戦後最大のものである。

来週、23日には、移民危機を話し合うEUサミットが緊急開催される。

移民の流入を危惧する欧州諸国は国境管理を強め、障壁を設けている。
それでも移民の流れは止まりそうにない。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20150920/925405.html#ixzz3mIALfsSc
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ベルリンの壁に対してはあれほど人権侵害を訴えたNATO諸国が今、
自らの愚策、一つの主権国家を破壊・消滅させた責任を取れずに四苦八苦している。


地中海はまさに現代のベルリンの壁である。

リビアの破壊が難民ビジネスを生み出した(ISISの人身売買)

2015-09-16 00:23:33 | ベルリンの壁2.1
移動の自由は誰にでもあると豪語していた
西ヨーロッパがドイツ等の一部を除き、難民を前に門を閉じつつある一方で、
ISIS(イスラム国)による人身輸送が人気のビジネスになっている。


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移民輸送と課税で「イスラム国」は年内に10億ドルの利益をあげる

「イスラム国」は違法な移民の輸送によって
 利益をあげ、かつ、欧州の難民危機を助長している。

ノルウェー国際分析センターのクリスチャン・ネルマン所長によれば、
人身売買や各種の関税は、今や石油にかわる「イスラム国」の主要な収入源となっている



以下、ネルマン氏の語ったことの概要をご紹介する。

「イスラム国」は国家を立ち上げるために、
 少なくとも年間5億ドルという、莫大な資金を必要としている。

しかし昨年、資金源が断たれた。
それまで彼らは石油を主な財源としていたが、石油による収入は6~8割も減ってしまった。

しかし、収入源のシフトチェンジの手並みは極めて鮮やかで、
今は関税と人身輸送が主な財源となっている。

人身輸送は今や北アフリカ・中東で最ももうかるビジネスだ。

地域には様々な犯罪組織が乱立しており、暴力による恐喝で金銭を徴収している
こうした徴税制度と人身輸送が、「イスラム国」の収入源として素早く取り入れられた

年内に密航ビジネスの規模は20億ドルを超える見通しで、
「イスラム国」はこの分野でゆるやかにシェアを拡大していくと予想される。

http://jp.sputniknews.com/middle_east/20150915/897353.html
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上の「徴税」は、リビアおよびシナイ地方の交通の要所で行われており、
レバノン・ヨルダン国境にも拡大しつつある。


ISISには国境を開閉する権限があり、移民を任意の箇所へ誘導することが可能になっている。
つまり、現地の人間に暴行を働くことで特定の場所へ追い出し、金をせしめるというわけだ。

これだけを読めば「ISISけしからん」という感想が出るだけで終わってしまうが、
一連の犯罪の背景には中東研究者を含め
多くの人間が民主主義の勝利と絶賛した「アラブの春」が存在する。


次のスプートニクの論評は
そのへんのゴミのようなイスラム国解説本よりも反芻するに値する。


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いま人身輸送を生業にしている人の多くはリビア政変前には別の仕事で生計を立てていた。
カダフィ氏は多額の農業投資を行い、国境地帯の諸都市にも色々な投資を行っていた。


そのカダフィ氏がいなくなると、仕事にあぶれた多くの人が
生計を立てる唯一の道として人身輸送にシフトした。


シリアとイラクにおける紛争に直接向けられた、もっとずっと幅広いメッセージが必要なのだ。
ただ単に難民問題を単独の問題として処理するのでは、
「イスラム国」の増強、そして脅威という問題を解決できない。


極限すれば、欧米は、単に「イスラム国」を爆撃することに加えて、
資金の流れ、リクルート戦術、宣伝工作、テロ組織の温床となっている腐敗した政権、
リビアをはじめとする一部の国の社会的混乱といった、全ての問題を総合的に考慮する必要がある。

テロという問題に長期的展望のもとで対処するにはこうしたことが必要なのだ。

(同記事より)
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John RosenthalのThe Jihadist Plotでは、
NATOがアルカイダと結託してリビアを軍事侵攻したことが書かれている。

彼に限らず、西側諸国が現地の過激派と組み、
リビアという国家を文字通り地上から消滅させたことは周知の事実だろう。


少なくともロシアや中国のような非欧米圏の国家では、
アフガン→イラク→リビア→シリアの順に
NATOの軍事干渉が行われていると認識する政治家・学者は少なくない。


イスラム国というと、サイコな連中がクレイジーなことばかりしていると思われがちだが、
一見、狂信者の集団に群れに見えるこの組織にも生存のために加入する人間が多く存在する。

米英仏侵略トリオは、ISISの支配地域に爆撃を行っているわけだが、
どこぞの国のせいで生きる術を失った人間もテロとして殺すのだろうか?


上の論評でも指摘されているが、
ISIS対策は単にテロ組織を空爆するだけでは解決されない問題であり、
NATO参加国は、自分たちが今まで破壊してきたものに対するツケを払わなければならない。


より大きな包括的な対策(ISISに代わる生存システムの構築)が必要である。
トカゲの尻尾を切るだけでは、根本的な解決には至らない。

ようやく言及され始めたヨーロッパの難民問題 (現代のベルリンの壁)

2015-09-04 23:30:43 | ベルリンの壁2.1
かつて、ドイツのベルリンには壁があり(案外ショボい)、
そこを乗り越える者に厳しい罰が与えられた(見張りの兵が見逃すケースも多かった)。



今、その壁はヨーロッパと中東・アフリカの国境いにあるようで、
この無色透明の壁はNATO諸国の空爆や内乱誘発により住処を失った人間を阻んでいる。


フランス、イギリス、アメリカを中心とした欧米諸国の空爆、
反政府組織への支援活動が内戦を誘発し、結果、大量の難民が発生した。


今、彼らはそのツケを払わせられそうになっているが、
案の定、難民の受け入れを渋り、場合によっては自国への立ち入りを厳しく禁じている。


ベルリンの壁は労働者の確保のため、東ドイツが設けたものだが、
現代の壁は排外主義が蔓延した西側社会によって建てられた。


この独善的な振る舞いについて、イランラジオは的を射た見解を述べている。

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アメリカが、中東・アフリカ難民の問題に対して見せ掛けの反応を示し、
ヨーロッパにはこの問題に真剣に取り組む責任があるとしました。


ドイツDPA通信によりますと、ホワイトハウスのアーネスト報道官は、
3日木曜、ヨーロッパは難民問題を単独で解決できるとし、

「アメリカは、2011年以来、シリアの難民に対して40億ドルの人道支援を行ってきた」

と主張しました。

アメリカ国務省のトナー副報道官も、記者会見で、
新会計年度の終わりまでにシリア難民1800人を受け入れる可能性を明らかにし、
「アメリカ政府は、シリア難民のすべての状況を検証するが、
 それには1年半ほどかかるだろう」と語りました。

アメリカは、中東諸国、特にシリアの難民問題について語っていますが、
彼ら自身が、テロリストを支援し、シリアの人々が現在の状況に陥る元凶となっています


http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/57770-
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NHKのニュースでは、難民の大量発生をシリア政府の責任に転嫁しているが、
おそらく、欧米のメディアも似たり寄ったりの見解を述べていると思われる。


こういう被害者側に罪を擦り付ける行為は、日本の差別主義者によく似ている。