男は、そう頷いた。この四角い顏はよくマスコミで見る。
学生時代関東に住んでいた頃、友人の一人である追浜彰から
「パンチ・パンチ・パンチ」
という本をPresentされたことがある。
今飛ぶ鳥を落とす勢いの南海静という女性SportsJournalistの処女作で
女子ボクシングに取材した作品である。
彼女の裏には、蟹田敬三が存在したと言われる。
私は蟹田氏を見た
「{パンチ・パンチ・パンチ}は読んだことがあります。」
と彼に言った。
「うれしいね、先日の1980年代の日米貿易摩擦に関する本は読んだ?!当時の
通産官僚に書かせたんだよ。」
と黒糖焼酎を飲みながら答えた。
「まだ、読んでいません。」
私はそう答えるしかない。
それにしても、いろいろな人に本を書かせている。蟹田敬三恐るべし。
「實はさ、此處のMasterが私の責任編集で本を書くことになった。
彼の創作料理のレシピ本だ。」
蟹田氏はグラスをカウンターに置くとそういった。
Masterはうれしそうだった。結構独創的すぎて私も巻き込まれてしまっている。
すごい本になるかな・・。
「ところでだ。加賀美屋の人が取り組んでいる孤島苦に對してだが、
これも本になるかもしれない。」
と蟹田氏は述べた。私は苦いものを食べたような顏をした。
あんな地獄にと当時は思った。
数日後、蟹田氏は徳之島を去っていった。
おわり