「この写本を出版することを決定したいと思うのですが。」
甘井サンが図書館の館長や県知事などの県の関係者の前で
答えた。
「面白いんじゃないの。師匠もこういうのおもしろがってくれそう。」
県知事がくすりと笑っていた。
師匠というのは、県知事が關東にいた頃に落語家をやっていた時代の肆遊亭道解という
有名な噺家である。この県知事、師匠は映画監督などをやり、著明な作曲家を
見いだす男なのに対してのびずに弟子の彼は地元で県知事をやって当選した男である。
まあ、それはいいとして
「これは、これを執筆したもとの模型秘伝帳の記した一族には許可を取ったのかね。」
図書館の館長が怪訝な顏をした。
「ここにいる海老名さんが湖東三山まで赴いて一族の人たちに許可を取り付けて
きました。」
甘井サンがにこやかに私を推してくれた。
お偉方はうんうんと頷いていた。
關東の出版社は
「これで新しい古典文学全集の目玉が出来る。」
と言ってくれた。
かくして、模型秘伝帳の写本はめでたく日本列島と琉球群島で出版されることとなった。
おわり