ブルーシャムロック

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柾樹の亡くなった母親について

2017-08-10 04:53:30 | 信・どんど晴れ
「あの子の母親は、いつも柾樹に厳しかった。四六時中叱ってばかりで、
怖くて厳しいという印象を持っていたようだよ。」
大女将が亡くなり、松本佳奈は上司である女将に、朝倉夏美を伴わず、一人で
徳之島の葬儀の場所に訪れた加賀美柾樹という男の母親について聞いてみた。
「私と比べて彼女のほうが、大女将に受けが良くてね、彼女が私と大女将の間に立って
色々と波風を立たせないように頑張っていた。 " 長男の嫁 " という立場が良かったのだろう。」
女将は一瞬考えて、
「長男の方、柾樹の父親が、大阪に出て行くという事を止められなかったと言いましたよね。
それ以来、何かがおかしくなっていったとか私は先日聞かされました。」
松本佳奈はまた聞いてみた。
「ああ。急に大阪に行くとか言って消えていった。何度も彼は大阪にも鹿児島の市内にも
遊びには行くものの、浮いた話題は聞いたことがない。」
女将は答えた。
「はぁ。柾樹さんも、母親には厳しくされて辛くなかったのですか。
いつも、怒る材料を見つけられて、」
佳奈は些か苦笑するしかない。
「彼女は、柾樹に厳しくする理由としては、自分が憎まれ役になることになって
柾樹を加賀美屋から解き放って置きたかったのだろう。自由になって
多分關東に行くことを是認していたのだろう。」
女将は佳奈の方向を見た。
「確か、あの柾樹のおふくろさんとか言う人が亡くなったのはまだ柾樹が小学生だった
時だと思う。」
女将は佳奈を睨みながら
「そうだ。あのおやじさんが大阪に消えた時、半年後に亡くなった。
彼女が亡くなってから、大女将は孫である柾樹を加賀美屋に縛り付けたかったのだろう
母親である、彼女が厳しく加賀美屋から遠ざけたかったのに。」
という。
「そうかもしれません。あの婚約パーティー以後、柾樹は夏美さんと横浜で幸せな
結婚をしたかもしれない。」
佳奈は言う。
「あ、ひょっとしてあんたが言っていた、横浜の綺麗なホテルで結婚式を上げた
かもしれないね。柾樹も優柔不断な子だったから、大女将の言葉を断りきれなかった
あの葬式の時、柾樹のひとりきりの目は、やっと加賀美屋から解き放たれた目だった。
しかし、傍に夏美さんがいなかったのがなおのこと悲しかったよ・・。」
と女将が言う。
「もし実現した柾樹さんと夏美さんの結婚が実現したら、私をおいて
横浜に赴いたんですか。やっぱり残酷だ。」
佳奈は困ったような顔をした。
「もちろんだ。あんたには關東に逃げてもらっちゃ困るから。」
女将はそう笑いながら答えた。
佳奈の心の中は致し方ないと考えつつ、關東で仕事の見つからない
私の居場所は加賀美屋と徳之島なのかと思うしかなかった。
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徳之島からの電話

2017-08-05 11:58:47 | 信・どんど晴れ
「ああ。そうなんだ。」
私は固定電話の受話器を下げると、ため息をついた。
私のいとこ、中環 (atari_tamaki) の嫁ぎ先の大女将が先日那覇の病院で
亡くなり、遺骨が徳之島に戻ったところで葬儀らしい。
私は何者か、私は中環 (atari_tamaki) と同じ古仁屋という奄美大島の
集落出身で、私は仕事で鹿児島の本土に行き、現在は市内の鴨池と言う場所に住んでいる
男である。
「環さん、あの加賀美屋に嫁いだときは次男の嫁だから何かと長男夫婦より
差別を受けたとか言っていましたよね。」
私の愚痴をよく聞いてくれる妻が言う。
「ああ。そうなんだよな。彼女のことだ。さっさと死んでくれてよかった
ぐらいに考えているのだろう。」
私は彼女の幼い頃からいとことして見てきた。敵に対してすごく厳しく、
些か、敵と味方を分けたがる性格が存在した。だから思い込みのきらいがある。
大女将がいきなり、長男夫妻の息子の婚約者を後継者にすることを決めてしまった時には
すごく怒りを自分にぶつけていた。
「お葬式のことは、環さんは何か言っていました。」
妻が、徳之島に行くためのことを心配し始めた。
「何も言っていないから、大丈夫なのだろう。」
私は言う。
でも、頭にあるのは彼女がここ数年元々神奈川県の学校に進学していたものの、加計呂麻島の
実家に帰っていた、松本佳奈さんという女性を自分の後継者にするとか言っていたな・・。
ひょっとしたら・・・。
おわり
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