ブルーシャムロック

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12月の曇りの日_番外編

2019-02-12 18:44:27 | 逆襲の藤隆
「どこまで逃げたのだろうか。」
男は女に聞いた。
「さぁ、私もわからないよ。そして、あんたにもわからないよ。」
女は答えた。星が瞬くこんな夜といったところだろうか。
「僕も君に誘われるまま凄く逃げた。出来杉が僕を追って来る可能性が大きいから。」
女性は多少憐れみの表情で、
「あいつか。あいつは懐ろに入ってくる奴を籠絡するのは好きかもしれないけれども、
逃げる奴はそこまで追わないよ。逃げちまったほうがかっこいい萌える。
あいつは、お前さんの優しいところを利用するから、ある意味正面切って戦えないなら
私といいことしないかい。」
と男に答えた。
「いいことって・・。」
彼は考えた、かなり際どいあれ・・。
「あんた際どい事考えたろ。違うよ。全然違うよ。真剣に逃げた後、あんたが立ち直って
まっとうに生きることを私と考えるのさ。私も自分の世界に巻き込んだやつから逃げた。
だから私もあんたも Even。」
とからりと笑う。
「ああ。そうなのか・・。出来るならばそうしたい。」
男は頷いた。
「ところで向う岸の、あんたを見た。大事故があったらしい。それが契機で向う岸の
出来杉とその嫁さんと乗り越えることをしたらしい。だからこっちの世界のあんたも
あの女はやめようよ。あんたが結婚したって、また出来杉が凶暴化する。
それを防ぐために、出来杉がいても生きることが出来る世界を考える。
それにさぁ、あの女あんたのこと騙すのちょろいと考えているよ。」
女は何時になく饒舌だった。
男はあんぐりと口を開けていた。
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12月の曇りの日_10

2019-02-08 18:54:25 | 逆襲の藤隆
「それにしても、出来杉という男は自分が善意で生きていると思っているようだった。
自分が嫌われていることへの警戒心がなさすぎる。彼の行動が抜身の刃を感じさせるのに。」
イザヤ・ケーニヒスベルクの言葉だった。
「ああ。そうなんだ。俺もそれを感じるから出来杉は興味がないと思った。
どこかの國の裏で人間妖怪だのと言われて皇帝に即位した男のほうが人間らしい。」
城野本丸はそう返した。
「ところで、本丸。出来杉を憎んだ男との接触はできたの.」
イザヤは聞いてみた。
「うん。研究の虫みたいな人間で、ある意味{つまらない男}だが、彼の出来杉への戦い方なのかもしれな
い。」
本丸は答えた。憎んだ彼自身が、事故のあと、研究や努力で自分を犠牲にした事に生きがいを
感じるようになったからだ。いつもメールや時計を気にしていて、仕事をきっちりやることで
出来杉への復讐心を育んでいる部分が彼にはある。本丸は感じていた。
「僕のフィアンセはいつも天然だ。そしてフランクフルト時代の日本人の同僚も・・。」
イザヤは、自分が狙われていると思い込んでとき折現実逃避するようなことを言う。
「イザヤ、君はすごいよ。普通に俺と出来杉の取材ができているじゃない。抜身の刃を見せない
君を、だらしない俺は尊敬している。」
本丸はそうなだめた。彼にはそういうしかない。幼い頃本丸は余りにもだらしなくて
それを指摘されてきた。今もそれを引きづっているが、イザヤはそれを感じない。
パリの今の会社に勤務するようになってからイザヤとバディを組んで思う。
「ああ。自分で自分を褒めるのはきらいだけれども、それがフィアンセや昔の同僚が自分を好きなのかも
しれないな。」
とイザヤ。
「ところで、イザヤ、フランクフルト時代の日本人の同僚って・・。」
本丸が言おうとした時・・。
「彼女は既婚者だよ。それでいい。でも同僚としての腕は尊敬している。」
とイザヤは話した。
(本編了)
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