ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
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人は、退出下さい。

purochan

2013-11-20 05:01:16 | 信・どんど晴れ
「佳奈、この人らが、私の旅館の従業員だ。」
加賀美屋の女将である加賀美環は松本佳奈に従業員を紹介し始めた
「この人が調理長の広田さん。京都に長い間修行したあと、少し前まで
首里の宮廷料理屋でも働いていたことがある。」
と、ベテランだが優しそうな感じの彼を紹介した。
「こちらが私の夫の社長と、息子の新一。経理などを担当している。
息子がここをリゾートホテルに建て替えようと考えているけど。」
女将は苦笑していた。
「お袋、それは死活問題だからでしょう。」
新一と言われる息子はせっつくように言う。
「まぁ、其れは跡。急ぐ問題では無かろう。」
社長が新一をなだめていた。
佳奈は
「伝統的な旅館か、リゾートホテルか知らないけれども、私はただココで働くだけ。
徳之島に無理矢理連れてこられたんだ。でも、みんな明るそうだな。」
と考えているだけ。
「佳奈、ここから逃げないと約束してくれるか?」
佳奈は、女将に強く念を押された。
「うーん。」
佳奈は心中複雑だった。
ある程度腰掛で、また關東に舞い戻る事を考えていたからだ。
甲高い音が聞こえた、もう老令にさしかかろうとした男性の声とは思えない。
「広田さんだな。」
女将は落ち着き払った声で言う。
「私も島唄は聞き慣れた方ですが、彼もまたですか。」
佳奈の島では本職を持ちながら、歌者として島や地域の人が知っている歌い手が
沢山いるのだ。加賀美屋の調理長もその一人なのだろう。
「私も社長も歌を歌ってみんなで過ごす。」
と楽しく言う、でも關東の緊張感からすると、なにやら落ち着きが無い。
「まぁ、どうでもいいですけれども歌でおもてなしをするのか。」
佳奈は他人事だった。
それから数年後、女将の甥が婚約者を連れて濱から徳之島に帰ってきた。
調理長も女将も社長も自慢のノドを披露し、それに合わせて新一が踊っている。
横浜生まれ濱育ちという婚約者の女性は圧倒されていた。
婚約パーティーの世話をしている佳奈は横目で見ていた。
一段落したとき、佳奈は女将につぶやいた。
「目出度いですね。濱かぁ・・・。学生時代その近くに住んでいたんで
なにやら興味深いですよ。」
女将は何千も重ねたお重をしまう場所に運びながら去っていく。
「只野婚約パーティーで済めばいいのに、余計な人が余計なことを言わなければ
いいんだよ。柾樹さんは濱で婚約者の女性と仲良く暮らせばいいのに。」
と言った。
「大女将とかいう人ですね。物事は映画のようにうまくいかないですから。」
と振り向きざまに女将に答えた。
つづく
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ちむぐくる

2013-11-19 07:26:48 | 信・どんど晴れ
「それにしても、古い老舗旅館ですね。」
私、松本佳奈をある女将が徳之島の旅館にいきなり就職しろとかけろまとーの
私の実家に押しかけて、徳之島のここにこいと言ってくれた。
私は関東に戻って関東に就職することを考えていたが、
「お前はここがいい。」
と女将は言い張ったのだった。
「なんで私なんです ?]
私は女将に聞いてみた。
「その理由はいうな。」
私のルームメートの一人がビデオで借りてきてみていた映画で
東北のある町だか村で、娘がアイドルになるとかいって東京に出て行って
その十数年して孫娘を連れて帰ってきたという筋書きの企画をおもいだした。
「なんだか少し前はやった映画みたいですね。私がアイドルになるために出て行った
娘を押しとどめた母親の顔になっています。」
と冗談めかして言った。
「それのどこがいけない。東京にいってアイドルになれる訳じゃないと
あの映画を tv でみていて思ったよ。だから私だったら島のアイドルを無理に作るんだ。」
とやたら信念を込めた顔で言う。
「じゃあ、あの劇中で孫娘の親友の女の子が東京に出たいといっていたじゃないですか。」
という私の問いに、
「あのこも、島に押しとどめる。」
と言った。
この人やるきだよ。
私は思ったね。
ああ、今度旅館の他の日とのことを話そうと思うよ。
つづくかなぁ・・・。
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潮風のメモリー_4

2013-11-18 18:22:59 | 潮風の櫻
その後、空井は北三陸市のあるスナックにいた。
ココのスナック自体、かつての上官である鷺坂が常連にした
所だった。
そこで、大吉にあった。そこで衝撃の事實をきいた。
「實は、ここにいるユイちゃんと俺を助けてくれたのはアメリカの海兵隊員だったんだよ

日本語に堪能な方が救助にあたってくれたんだ。」
ユイはだまって寫眞を空井に
「この人たち知っているよ。津浪にあった松島基地の再開に協力してくれた人たちだ。」
空井の大声に、店に来ていたアキが
「蛇男、いろんな縁があるんだね。まあ、再開できたんだから官公庁の性格上また救助に
いけば
いいべ。このまえのNEWSで見たけれどもブルーインパルスが歸ってきたときくよ。」
空井は軽いなぁという雰圍氣で苦笑して。
「そうだね。救助のHelicopterもなんとか歸ってきたし、つぎ救助隊員の広報として
仲間をprしたいね。」
とGlassのWhiskyを眺めながら述べた。
そういう軽口を言った跡、東北の長い梅雨が明けるか開けないかのとき、
秋田と岩手の県境で土砂災害が起きた。
松島基地のメンバーは自分たちに出動要請がくることを考えていたが、出動要請がでなか
った。
他のセクションの捜索隊員が倒木などと格闘しながら、被災した人の救助にあたっている

そして・・・。
2013年10月・・・。
伊豆大島の災害救助の基地として松島基地のメンバーは、広報業務に当たっていた。
空井は北三陸市の人に、こういうメールを書いていた。
「北三陸市の皆様、僕たちは伊豆大島の土砂災害の後方業務に追われています。
なんとか復旧した基地が、災害救助の基地として使われている事が誇らしく思って居ます

自分たち松島基地の人間が救助に向かったらもっとかっこよかったのにとは個人的には
思って居ますが。」
北三陸市の人は連日のテレビの報道と照らしながらそのメールをにこやかに見ていた。
おわり
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潮風のメモリー_3

2013-11-15 09:06:07 | 潮風の櫻
今回の松島基地の報道のあり方が招いたもの、
それは
「自衛隊に代表される官公庁の救助隊が災害の時にすぐ駆けつけてくれるか?」
という疑問を多くの人に植えつけたことだった。
電話に応対する空井など、松島基地の人間が映しだされた時、
多くの人は複雑な思いに駆られた。
一人大吉は
「やはりそうだったか・・。」
とつぶやいた。
つづく
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