さっきから松本佳奈は自分の住んでいる家のモニターにかじりつきながら見ていた。
画面に映っているのはBulldogのような顔の強面男。
もうひとりは以前流行した映画の「ぶちょー」というキャラを演じた俳優に似た顔の
脚本家、そして紅一点、かつて上方落語の噺家を目指す女性やないしは
和菓子職人を目指す女性に扮した女優のような顔の娘と差し支えない年齢の子である。
ある番組の記者会見である。
Bulldogのような顔に「古崎某」とテロップが出る。彼の役職はドラマシリーズの
制作総指揮を担当する、制作団体の外部から呼ばれた人間である。
「今回、みなさまを集めたのは他でもない。これまで大河ドラマと呼ばれたドラマ枠を
{ドラマチック・ヒストリア}として坂本龍馬や徳川家康を登場させないドラマを作りたいのです。」
と低く、断言する声で言っていた。
会見現場の看板には幕が下ろされている。
古崎氏の命令一科、幕が上がる。
看板には
「アンコロモチストーリーズ」
と書かれている。
「今回のドラマの題名です。内容は脚本家から述べられます。」
という。
脚本家は
「今回一年間公開するドラマは、和菓子職人があんころ餅を作ることになって
それに、和菓子を作る意味を問いただす現代劇です。」
と説明した。
「あのー、このドラマ枠この間まで時代・歴史系ドラマじゃないの。そんな現代劇じゃ」
佳奈は画面に突っ込みを入れる。
「ですから、現代劇は歴史ではないというのでしょうか。それはみなさまのPassionが
足りないと思います。現代も歴史になるのです。」
と、古崎は言った。
一人のインタビュアーは
「古崎さん、あのこれまでの枠の香氣を持たせた企劃はやる気はないのですか。」
といぶかしげに聞いた。
「もう計画進行中です。」
古崎は言った。
「えっ。」
佳奈は首をかしげた。
「本当にできるのかな。」
同じようにテレビモニターをみていたRoommateの横手淡雪や高槻久留実に問いかけた。
Roommateは
「さぁ。」
というダケだった。
そして、アンコロモチストーリーズが始まって一ヶ月してから、高槻久留実がInternetを
見ていたとき、
「佳奈ちゃん見て、ドラマチック・ヒストリアの次回作は伊能忠敬・間宮林蔵・近藤重蔵
最上徳内が登場する、北海道探検記みたいだよ。」
と画面を指した。
佳奈は、それに潜り込むように見る。
「おおっ。なんだかすごいことに。」
後日だけれども、堀越二郎が登場する戦後新幹線を設計した人間の物語、
あるいは天武持統時代に取材した古代史ドラマが公開されたことを付け加えておく。
他の枠は、何かにとりつかれたように不特定多数が大好きな坂本龍馬や
徳川家康が
出てくる企劃のドラマを公開開始したという。
古崎、剛腕ながら結構時代に物を問いかける力はあるのだな。
おわり
画面に映っているのはBulldogのような顔の強面男。
もうひとりは以前流行した映画の「ぶちょー」というキャラを演じた俳優に似た顔の
脚本家、そして紅一点、かつて上方落語の噺家を目指す女性やないしは
和菓子職人を目指す女性に扮した女優のような顔の娘と差し支えない年齢の子である。
ある番組の記者会見である。
Bulldogのような顔に「古崎某」とテロップが出る。彼の役職はドラマシリーズの
制作総指揮を担当する、制作団体の外部から呼ばれた人間である。
「今回、みなさまを集めたのは他でもない。これまで大河ドラマと呼ばれたドラマ枠を
{ドラマチック・ヒストリア}として坂本龍馬や徳川家康を登場させないドラマを作りたいのです。」
と低く、断言する声で言っていた。
会見現場の看板には幕が下ろされている。
古崎氏の命令一科、幕が上がる。
看板には
「アンコロモチストーリーズ」
と書かれている。
「今回のドラマの題名です。内容は脚本家から述べられます。」
という。
脚本家は
「今回一年間公開するドラマは、和菓子職人があんころ餅を作ることになって
それに、和菓子を作る意味を問いただす現代劇です。」
と説明した。
「あのー、このドラマ枠この間まで時代・歴史系ドラマじゃないの。そんな現代劇じゃ」
佳奈は画面に突っ込みを入れる。
「ですから、現代劇は歴史ではないというのでしょうか。それはみなさまのPassionが
足りないと思います。現代も歴史になるのです。」
と、古崎は言った。
一人のインタビュアーは
「古崎さん、あのこれまでの枠の香氣を持たせた企劃はやる気はないのですか。」
といぶかしげに聞いた。
「もう計画進行中です。」
古崎は言った。
「えっ。」
佳奈は首をかしげた。
「本当にできるのかな。」
同じようにテレビモニターをみていたRoommateの横手淡雪や高槻久留実に問いかけた。
Roommateは
「さぁ。」
というダケだった。
そして、アンコロモチストーリーズが始まって一ヶ月してから、高槻久留実がInternetを
見ていたとき、
「佳奈ちゃん見て、ドラマチック・ヒストリアの次回作は伊能忠敬・間宮林蔵・近藤重蔵
最上徳内が登場する、北海道探検記みたいだよ。」
と画面を指した。
佳奈は、それに潜り込むように見る。
「おおっ。なんだかすごいことに。」
後日だけれども、堀越二郎が登場する戦後新幹線を設計した人間の物語、
あるいは天武持統時代に取材した古代史ドラマが公開されたことを付け加えておく。
他の枠は、何かにとりつかれたように不特定多数が大好きな坂本龍馬や
徳川家康が
出てくる企劃のドラマを公開開始したという。
古崎、剛腕ながら結構時代に物を問いかける力はあるのだな。
おわり