走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

DNRやDNARの誤用と誤解 その3

2023年10月29日 | 仕事

過去のまとめ


DNRDNARも患者本人の意思表示であり、指示できるのはカナダの場合医師かNPだけ。


カナダでは決められた記入用紙があり、そのコピーもブレスレットも刺青も法的効力はありません。そして正式な用紙の有効期間は一年と限られている。


シリーズ3日目


DNRDNARも心肺停止時の指示だけです。しかし実際の人生で医療に関する意思決定をしなければならないケースは沢山あります。それらの意思を表示できる場所がACP(アドバンス ケア プラニング)です。ここもまた国民の意思表示の道具です。しかし記入できるのは患者本人で医師やNPの指示ではありません。よってDNRDNARとは大きく異なります。


どんな意思決定をしなければならないケースがあるでしょうか?


例えば口から食事が取れなくなった場合、経管栄養を希望するかどうか?

人工呼吸器の装着をするかどうか?

もちろん心肺停止をした場合なども入ります。

これらは全て医療に関する意思決定に関するもので遺言や遺産に関連するものではありません。


以前にも書きましたが、どんなに親しくても愛していても他人の生き死に関連する意思決定を代理でするのは簡単なことではありません。よって自分の意思決定ができる間にACPに書いておくことは、家族や友達への最大のプレゼントとなります。


日本にはない医療の形 おまけ - 走るナースプラクティショナー   ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

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シリーズは昨年で終わらせましたが、おまけ編で少し補足を。治療の事を治す医療と書きました。病気を治す事が目的ですが、治せなくてもほぼ健康な状態を保ち日常生活を送れ...

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さて貴方は85歳ですが持病もなく元気はつらつ、障害もありません。その時に書くACPと同じ年でも余命2年のがんと診断されている、ではそれぞれの意思決定が異なることが多々あります。またどんな姿であっても生きていたいと思う人と障害のない暮らしができないのなら生きている意味はない、と思う人など、人の考えは人それぞれです。


よって第三者である家族や友人や医療者は、その人の年や疾病や障害でその人の考えを推測することはできません。だからACPを書くことによって、自分が意思表示を伝えられないようになってもACPにより意思表示が可能になるのです。もちろん昨日書いたDNRDNARと同じく家族や友人がその存在を知らない場合は、どんなにACPを記入していても、それは日の目を浴びません。だからただ記入するだけで満足するのではなく、家族や友人へACPの存在や自分の意思について伝えておきましょう。そして一回きりの作業ではなく、長くても一年に一度内容を見直しましょう。特に自分の活動レベルや考えが変わった時にはその都度書き直し、家族や友人に伝えることが重要となるのです。


ACPがあり、家族や友人の中で理解の差異がない場合、医師やNPは初めて出会った意思表示ができない患者に対してDNRDNARの指示が書きやすくなります。


続く


10日間の日本旅行を終えてバンクーバーへ戻りました。珍しく秋晴。



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