過去のまとめ
DNRもDNARも患者本人の意思表示であり、指示できるのはカナダの場合医師かNPだけ。
カナダでは決められた記入用紙があり、そのコピーもブレスレットも刺青も法的効力はありません。そして正式な用紙の有効期間は一年と限られている。
ACPは国民の意思表示の道具。記入できるのは患者本人で医師やNPの指示ではありません。
シリーズ4日目
DNRやDNARやACPを持っていない患者が救急へ運ばれてきたら、カナダではどう対応しているのでしょうか?
フルコード(全ての医療を行う)で対応します。
家族や友人が来院すればDNRやACPを持っていないか?本人の意思を聞いていないか?確認します。それでも不明な場合は患者の状態が緊急ながらも落ち着いた時(やれる処置は全てした後に)、家族や友人へ今の病状と将来の成行にいついて説明し、今後の治療方針を決めます。しかしこれはあくまで情報提供であり、医師やNPの個人の人生観(延命治療についてどう考えているかなど)について話す場所ではありません(この場面だけではなく全ての医療現場でする必要がなく、するべきでない行為)。
また、医療者は回復不可能(例えば脳死が確認された)と判断できた場合治療を中止する(安楽死ではありません)こともできます。中止するとは人工呼吸器の停止(自の力だけでの呼吸への切替)が代表的です。Poor Practice と呼ばれたり訴訟にならないようにアセスメントや記録は不毛な医療と判断される思考過程や科学的証拠を明確に記載されていなければなりません。
また家族や友人が納得できるよう医療者側は丁寧に説明を進めます。数日かかる時もありますが、不毛な医療と言う大義名分で家族や友人の理解なしに切り替えるより、家族友人の今後のグリーフケアを考えても、数日の時間の投資は重要です。医療的な情報提供が医師やNPで行われた後はソーシャルワーカーやスピリチュアルケアプロバイダーが家族会議を引き受ける場合がほとんどです。
この過程は入院患者でも同じです。入院時に患者の急変時の意向は明確化しておくのは当たり前とされており、情報がない場合のディフォルトは常にフルコードです。
私が働くカナダBC州はDNRの用紙の他にMedical Order of Scope of Treatment (MOST)を採用しています。これも指示となるので記入できるのは医師とNPだけです。MOSTではDNRだけではなく、細かなシナリオについて記入できることができます。例えば
ICUの入室を拒否する、しない
抗生物質投与など回復可能な治療を希望する、しない
症状緩和ケア以外の全ての治療を拒否する
侵襲の高い手術は拒否する
などです。記入には患者本人といつ意思確認をしたのか記入するようになっています。参考にした資料も記入できるようになっています。例えばDNRやACP。意思表示のできない患者とは、医療的意思決定代理人の情報を記入する欄もあります。
こと細かな内容を記入する(項目ごとにチェックを入れれるようになっている)ことで、DNRやDNARやACPを書くことが全ての医療を拒否していると勘違いされないためです。ACPを記入したりDNRやDNARを希望することは決して医療から見放されるではないからです。
続く
冒頭写真: 小樽ではまだ時差ぼけ中で早くに目が覚めたので朝日を見に行きました。早起きは三文の徳。気持ち良い〜