走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

NP(仮称)への第一歩 その3 法的責任

2021年12月09日 | 仕事
シリーズ3日目

絶対的医行為は看護師の診療の補助行為に入っていないことは理解していただけたと思います。平成26年(2014年)には特定行為、および研修指定について保助看法の改定がありました。 これにより今まで侵襲性の高い38医療行為が相対的医行為となったのは、誰もが周知のこと。

さあ、ここで少し法律の考え方を一緒に復習しましょう。知っておきたい医事法の基本 のページ2から3半ばまでをまず読みましょう。「成文法と不文法の違い」「医療を進める際に根拠となる法律」は押さえておきたいものです。

こちらは平成25年の事業で報告は26年。つまり特定行為の法改正がされる前の厚労省の文書です。3ページ目の刑事法と民事裁判の違いも理解が必要でしょう。以下に抜粋しておきます。

3 刑事・民事裁判に関する留意事項
○ 判例の解釈に当たっては、刑事裁判と民事裁判では、目的、立証責任及び求めら れる立証の程度が異なることに留意が必要である。具体的には、刑事裁判の目的は 違法な行為を行った者に対して国家が刑罰を科して社会秩序を回復させることであり、 それが故、立証責任は起訴する検察官が負い、立証の程度は極めて高度なものが要 求される。これに対して、民事裁判では、生じた損害を誰にどの程度負わせるのが公 平な解決となるのかとの観点から審理がなされ、原告の判断によって、医療機関、医 師、看護師など誰を被告とするのか選択することができ、強制捜査の権限を持たない 原告が立証責任を負うことから、因果関係の立証の程度は高度な蓋然性でよく、立 証の負担が軽減されることがある(昭和 50 年 10 月 24 日最高裁第二小法廷判決など。

もう一つ同じ文書で5〜6ページもよく読み込みたいと思います。麻酔行為について書かれています。こちらは日本麻酔科学会のページ。特定行為内の行為で有ればセーフですが、それ以外をしている人たちは限りなく黒に近いグレーゾーンで働いていることを認識しなければなりません。

6ページ目の医師の指示のあり方と法的責任の中で注目したい部分を抜粋します。

○ 「看護事故に対し、看護師が医師とは別個独立に責任を負うべきであるか否かは、 看護業務にどの程度独自性があるかにかかっている」とし、「チーム医療が推進され診 療における分業と協業が進行していること、在宅医療における看護師の役割が拡大さ れてきていることから、看護師の責任も医師ないし病院の責任とは別個の独立したものとして理解されるに至るであろう」とする見解がある。
○ また、看護師については、医師と同様、看護師賠償責任保険が存在しており、看護 師が独立して責任に問われ得るという考え方が、社会的に定着していると見る余地もある。

看護師賠償責任保険に加入していますか?

さあ、これらの事を知って、それでも職場が貴方を守ってくれると思いますか?

昨日、既に特定行為以上の事を、たとえば絶対的医行為を業務として行なっている診療看護師はこれからどうしたら良いか?と最後に書きました。その答えは

医療施設には必ず顧問弁護士がいるはずです。管理者や院長などを交えて、今すぐ相談するべきだと思います。そして業務の見直しをする必要があると思います。法の拡大解釈をするのなら、それなりの準備をしなければなりません。例えは昨日あげました。それが法律家の視点で十分と思えるかどうか?そこが重要でしょう。どこそこの病院ではしていること、医師が診療看護師に命令しているからやっても大丈夫。こんなことは刑事、民事裁判時に貴方を守ってくれるとは思えません。

特に今回の意見交換会は看護協会主催ですが、日本看護系大学協議会、日本NP大学協議会の三団体協議の結果。今まで診療看護師の活動を支えてきた日本NP協議会が入っているのです。日本NP大学協議会の下で自分の業務を考えてきた方も多いはず。今回の意志表明とも言える意見交換会で、絶対的医行為について明確化されたということは今までとは状況が変わってきた、と理解することが必要でしょう。

免許を管理する団体もなければスタンダードもスコープもない日本。医療ミスが業務上過失致死として罰せられる日本ですよ。現在の法律に明記されている医師しかできない絶対医行為を拡大解釈で行う。あまりにもリスクの高い行為だと思います。正直に言えば顧問弁護士と相談しNP(仮称)が法改制と共に誕生するまで絶対的医行為には手を出さないのが賢明な策だと私は思います。

続く


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