走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ハームリダクションの意味 その2

2021年02月16日 | 仕事
昨日の続き

自分の免許が危うくなる?!
この薬物依存の妊婦さん。普通の周産期ケアだけではなく、薬物使用をゼロまで減らして胎児への影響を食い止めなければなりません。そのためには薬物依存医療の専門医やチームとタッグを組んでいかなければなりません。よってそのようなチームを持っていない医師はケアをするべきでない、と言う図式が現れます。

もちろんそのような妊婦用のチームがあります。そこへ紹介するのが普通です。

しかし患者がそのチームへの紹介を拒否したら?だってこの妊婦さんは薬物使用をやめる気がないのだから。

今までの医師たちは、私はあなたの面倒は診れるスキルがないから診ないとドアを閉じていました。貴方のケアができるチームに紹介したのに断ったのは貴方。自己責任よ!って言いながら。たしかに北米にはコンピテンシーが設定されていて、内科医が心臓手術はできないようになっています。この論理から医師たちは、私は薬物依存と周産期のスキルがないから診ない、と言えるのです。診ればコンピテンシーから外れるので罰せられる事になります。

しかし患者はそのおかげでケアをしてくれる人を失くすのです。もちろん紹介を断った患者が悪いと言えばそれまでです。でもだからと言って医療へのケアのアクセスを奪ってしまうことは正しいのでしょうか?たしかにその医師は薬物依存医療の知識には長けていない。しかし正常妊婦のケアはできる。そしてその妊婦はこの医師に心を開いているのだ。

続く


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