走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

最悪からの回避

2014年12月20日 | 仕事
薬物を取り込む方法は、飲む、吸入、静脈注射がある。
コカイン使用といっても、鼻から吸い込む人もいれば溶かして静脈注射をする人もいる。問診をする時は詳しく聞く。
ハームリダクションキットの中身は滅菌使い捨ての注射器、針、クケッタイ、蒸留水、クックポット(ビール瓶の蓋のようなキャップ状のもの)が注射器を棄てる入れ物に入っている。
こういうものがなかった頃は粉を溶かした液をスプーンに入れライターで加熱。注射器で吸い上げ自分に打つ。注射針は貴重なので回し使いする。血液感染が起こるのはもっともだ。

ハームリダクションキット配布のメリットは
注射器など使用器具をシェアすることで起こるB、C型肝炎やHIVの感染防止。
汚染された器具で起こる、敗血症、胸膜炎、弁膜症などの感染症の防止。
不法廃棄された使用済みの注射器で一般人が針刺し事故を起こすことを防ぐ。
配布の時に渡すだけではなく医療の窓口として教育のチャンスにできる。
教育内容は定期的な診察や血液検査の必要性を伝え,普段の健康状態をチェックする。
移動診療車にはこのキットが置いてある。ほとんどの保健所に置いてある。
バンクバーには自己注射ができるスペースも用意されている。

自己注射サイトが医療機関によって作られた時、市は大論議が起こった。何故中毒者を助けるのかと、市民の理解を得るのが難しかった。合法かどうかも討論になった。資金が凍結されそうにもなった。しかし今もこのプログラムは生きている。

依存症をやめさせる目的ではないが、感染症の広まりを防ぐことができる。
その他に、保健師が地域を回って性病や感性症の血液検査、予防接種を行っている。私の仕事内容でも重要なポイントだ。最悪の状況の中でもさらに最悪なことにならないようブレーキをかけるための重要なプログラムだ。


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