走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

きっかけ作り

2015年04月28日 | 仕事
アルコール依存症があるベスが、このままでは住むところを失くし、二人の娘に愛想をつかれてしまうと、アルコールの拮抗剤を服用しだしたのは2ヶ月前。毎日飲まなければならず、毎日薬局からスタッフが家へ出向き服用を確認するようにしていた。これでお酒に手を出す誘惑から逃れられると喜んでいたベス。しかしどこか不安げだった。

3週目。イースターの長期休暇だった。お酒に手を出し拮抗剤の作用で嘔吐が続いた。薬局からスタッフが来た時にはベロベロに酔っていて服用を拒否。3日連続で拒否し拮抗剤は中止した。留守電にメッセージを残したが返事はなし。

今日、ホームレスアウトリーチのデニーと家を訪れる。酔っ払っているベス。視点は定まらず、呂律も回らず、よだれを何度も拭きながら話をする。それでも家の中に入れさせてくれた。

(責めに来たのではない。) 近くまで来ていたし、どうしているか心配だったからと伝える。ほら、最後に会った時には家を失くすことや娘さんたちとの関係がまずくなるからって言ってたでしょ?ベスの顔色が変わった。しかしすぐ話をそらす。訪問の終わりに、来週は近くのクリニックに来るから、何時でも来てねと去る。

診察らしい診察ではなかったが、自己の健康を考えるきっかけになって貰えばと願った私だった。


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