走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

薬代

2014年09月23日 | 仕事
カナダは医療が無料だからと安心するのは間違い。州の保険を持っていれば病院に滞在するのは無料だし、家庭医や専門医にかかるのも無料。訪問看護も無料。しかしその他は自費となるのだ。薬代、歯科代、救急車代、老人ホーム代。訪問介護代、、、と続く。働いている人は職場の保険がカバーしてくれるが人口の何割がそうなのだろうか。

ルイはオンタリオ州北部から来たフレンチカナディアン。州を転々としながら暮らしていた。英語が得意でないのでたまに???となることがあるのだが、隣のアルバータ州にいる頃ホームレスになったよう。アパートメントを紹介してもらい、医療も整った頃に大家と折り合いが悪くなりホームレスに逆戻り。そのついでにBC州へやって来た。最初はビクトリアに3ヶ月そしてラングレーへやってきた。ルイは糖尿病と肺気腫を患っている。居場所を変える度新しい医療者に出会い一からやり直し。

私のクリニックに来るようになったのは6月始め。BC州の保険を持っていない彼はアルバータ州の保険で検査は出来ても薬は全額自費となるのだ。ホームレスの彼にとって自腹を切ると言っても切っても何も出てこないので3ヶ月間服薬をしていない彼の糖尿病はかなりひどかった。誰も保険加入を勧めなかったようでBCに住むようになって3ヶ月以上経つのに保険がない彼。BC州の保険が有効になるまでサンプル薬で乗り切ることに。ベストな治療ではないが、これしかできないのだ。綱渡りのような状態で保険の発行を待った。

身体障害を理由に生活保護も申請したが審査には3カ月以上かかる。それまでに支払われる金額は非常に少ない。住居はみつかったので家賃を差し引くと月$120で生活しなければならない。ルイは食材の無料配給、教会の食事サービスで食いつなぐ。

先日ようやく保険が発行された。ルイは大喜びで診療所にやって来た。

州の保険の他に収入や疾患によって薬代が免除になるシステムがある。ルイは生活保護を受けている人に分類される。私の仕事はこのシステムで許される薬を処方する事。許可範囲を超えると自費となりお金のない彼が薬を買うとは思えないから。リストを見るととてもベーシックで安い薬ばかり。製薬会社が持ってくるサンプル薬は新製品、高額な薬が主流。なので全部の処方を変えなければならない。使い慣れた薬にさようなら。新しい薬が彼に合うのかどうか、、、ルイもがっかり。また一からやり直しと、、、。

しかし薬だけではなく専門医に紹介できるようになったので眼底検査にも行けるし、糖尿病教室にだって行ける。ポジティブになろうよ!あー、まだまだ彼との凸凹道は続くのだった。


これは他の人の家。コンテナと同じぐらいの大きさのトレーラーを二つに仕切って住んでいます。中はそれぞれ3畳ぐらいかな?キッチンもシャワーもありません。でもほらちゃんと野菜を育てている。豆にトマト、人参、パプリカ。凄いねー

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