走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

名案かどうか

2019年04月24日 | 仕事
最近日本では、健康度により割引がつく生命保険があるとか。例えば糖尿病の指標のHgbA1c。3ヶ月の血糖値の平均値といえば簡単に理解できるでしょうか?これが正常値であれば生命保険の掛金が10%引きとなるとか。

ほおー。被検者の生活習慣の改善意欲を向上させる名案!という一面があるのは確かです。では負の面はどうでしょうか?

例えば海外旅行保険。慢性疾患がある人とそうでない人の保険料はかなり異なります。若い人と年寄りでも異なります。それは保険料を支払うことになる可能性が高いか低いかの違いからです。カナダは北緯49度以上にある北国です。冬の間に南に移住するスノーバードと呼ばれる鳥のように冬を南で過ごすカナダ人は多い。しかし年を取るとその数は減っていきます。理由は年齢と慢性疾患で旅行保険が高すぎて買えない、が最大の理由です。

つまり疾病にかかりそうにない年代、慢性期疾患のない人にとって健康度によって値引きされる生命保険はお得に受け取られますが、そうでない人にとっては脅威となるのです。そしてその高さに保険を買うことを諦める事が生じるかもしれません。そうなればその疾患の悪化により入院が必要になっても個人の生命保険がなく、入院費が払えない。ならば徹底的に悪くなるまで入院も避ける、、、なんて状態になりかねません。あら、まるでアメリカのようですね。しかし 日本には国民保険があります。だから大丈夫と思いますか?個人の保険がないので国民保険から払われる。それでは政府の財政圧迫は変わりません。これは極論ですが超高齢社会と少子化が同時に起こっている日本ではいつまで国民保険が続くのかも保証できない状態です。

先の話に戻って、被検者の生活習慣の改善意欲を向上させる名案は個人の生命保険が購入できるレベルの労働者で意欲向上すれば自己の健康度をあげる事が出来る人をターゲットにしているもの。そうでない貧困層には無縁の話。そしてこれは収入により健康格差が起こる原因の一つにもなりかねます。こうやって少しずつ貧困層は追い込まれていくんですよ。貧困層と富裕層の健康格差は確実に政府の財政難を引き起こす。これはアメリカが世界に教えてくれた教訓です。日本はその方向へ向かい出すのですか? 小さな一歩。しかし方向はそちらを向いているので心配したくなります。


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