走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

善意と危険

2020年12月27日 | 仕事
SNSで見かけたビデオ。海外の話。服飾デザイナーが冬の公園で寒そうにしているホームレスを見かけた事がきっかけで作ったホームレスの簡易シェルター兼服の製作の話。

ホームレスの方とお話をしてデザインを考えたとか。

しかし、その作品を見て、私はんんんんんんんーと思う。確かに暖かそう。でもそれは安全なのか?と思う。安全な場所は確保できているけど隙間風があって寒い、と言う人にはもってこいのデザインだと思う。しかし私が診察しているホームレスの方々の話からは実用性がないと思う。

カナダのホームレスの人たちは夜寝ない人の方が多い。何故って危険だから。襲われる可能性があるから夜通し起きていて、明るくなってから仮眠をとる。襲われるとは所持品を盗まれたり、暴力を受けるという事。それは仲間内であったり、怒りの吐口に弱者を探す一般人でもある(悲しい話だけど事実。ホームレスの方々を同じ人間と思っていない人はどこにでもいる)。暗闇では目立たないから夜襲をかけるのだ。

このような理由でグループを作り野営するホームレスの方々は多い。しかしロンリーウルフのように一人を望む人もいる。そういう人が完全な隠れ家的な場所が見当たらないと夜通し起きている。

で、その服。足も寝袋のようにすっぽり。腕の部分はあるが保温の為5本の指部分がない。

襲われた時に瞬時に反応する事ができない。走ってその場から逃げ出すこともできない。二人組に襲われたら米袋のように掴まれて川に放り投げられたり、車に積んで遠方へ連れ出して好きなようにする事だってできる。恐ろしい物だと思う。

道端はまだ人通りがあるので寝袋に入って寝ているホームレスの方を見かけるかもしれない。しかし人通りが少ない場所では寝袋に完全に入って寝ている人は見かけない。危険時に反応する為だ。

ホームレスの方々にとって必要なのは簡易シェルター兼服ではなくて安全なシェルター。そしてそこから社会復帰できる様々なサポート。まさかこのビデオは売名行為目的で作られたのでははないだろうな、、、とちょっと下衆なことまで考えてしまいました。



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