走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

日本に馴染みのない医療の形

2020年12月28日 | 仕事
フォローしている有賀医師のブログについて私の働いている国の意見の追加を

日本の方は馴染みがないと思いますが北米では治療を選ぶ権利が保障されています。個人の幸せ、個人の思想が重要視されている国なのでそうなります。

「治療を拒否する」と言うと殆どの方が門を閉ざされる、病院から追い出される、在宅も来てくれない、と想像される人がいますがそれは勘違いです。全てにおいて選ぶ権利が国民にあると言うことです。

例えば挿管(喉から肺まで管を入れて呼吸を補助する)は拒否するが点滴や抗生剤の投与は拒まない。

在宅でできる限りの治療はして欲しいが入院はしたくない。

などカスタマイズされた治療です。よってコロナに罹患して呼吸状態が悪くなったからといって全員がICUへ運ばれるわけではないという事。このようなカスタマイズされた治療希望の内容をACP アドバンスド ケア プラン と呼びます。法的な機能ではなく本人の望みが明確になっている。これが人生の終わりまで保証されている個人の治療選択の意思です。形は本人の言葉であったり書面であったり、代弁者であったりするのです。医療者はこれに沿ってその希望内で全力を尽くします。

よく治療を拒否すると苦しんで死ぬんだ、と勘違いされる方も大勢います。治療はその漢字に表れているように治す事が目的です。残念な事に現代の医療で全ての疾患を治す事は不可能なのです。それがコロナの重症患者であり、癌の末期なのです。話は戻り医療は治療だけではありません。例えば緩和医療です。緩和は疾病を治す事ではなく疾患からもたらされる症状を緩和する事に重きを置いています。医療が発展したこの現代で500年前のように苦しんで死ぬ事は当たり前でなくなりました。痛み止、吐き気止、痙攣をコントロールし、呼吸苦もコントロールできるのです。

次に治療を拒否すると死を希望していると思われる。これも大きな勘違いです。死を希望する医療についてはここでは書きません。

これらのことから治療を拒否する事が医療を拒否する図式にはならないのです。
続く

冒頭写真: ご近所さんから頂いたこの飲物。カナダはアイスワインが有名ですが、これはそれに唐辛子を入れたもの。シロップのように甘くねっとりした飲み口ですが匂いと後味が唐辛子そのもの。前菜として飲んでね〜とまさにその通り。ちびちび飲んでその辛さに病みつきになる恐ろしさ。身体中が火照ります。


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