走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

心配の種

2023年05月20日 | 仕事

医療クライシスは深刻で医師不足で救急が回っていない。NPが借り出されている。知合いがそのうちの一人。


彼女のスペシャリティーは心不全。心不全以外のことには疎い私が助けになるのか?1日シフトを終えて足手纏いではなかったのか?!と漏らす。


誰が選ばれるかの基準は、

1、病院で働くプリビレッジ(登録)を済ませている

2、職場を離れても患者のケアに影響が出ない

2点。


私は1はあるが2は無理。予約は詰まっていて、私の代わりに患者の診察をしてくれるチームメイトもいない。


専門性が高い彼女は何が来るかわからないERは苦手なのに、飛ばされて、とぶつぶつ。プライマリーNPの方がこのような状況には向いているが、プライマリーをしているNPたちは忙しく持ち場を離れるわけにはいかない。専門クリニックで働くNPたちは二次的ケアなので持ち場を離れることができる。なんともうまくいかない組合せ。


こんな現場の中、だからもっと早くNPERInternal medicine で働いて貰えばよかったんだ、と声高く言う医師たちがいる。Internal medicineは大義の内科。サブスペシャリティとして循環器、呼吸器、肝臓、腎、、、、と分野を持っている人もいる。しかしその分野の専門医とは少し違う。内科を専門とする専門医の名称。何でも屋的に重宝される。特に専門医の少ない過疎や入院施設で。Internal medicineは専門医なのでファミリーやジェネラルプラクティショナーとは異なる。


他の州や米国とは異なり、BC州のNP教育はファミリーの一本。医師で言うファミリーやジェネラルの域だ。よって力を入れていたのはコミュニティーでプライマリーをすること。30%ぐらいは病院で働いているが、その分野の背景を看護師時代に持っているとか追加のトレーニングで循環器科、心臓血管外科、呼吸器外科、外科、ICUERで働くぐらいで大多数ではない。それらを望んでいたNPには肩身の狭い状況だった。そして今医師不足の波に乗って、この扉がドーンと開こうとしている。今週のNP会議ではそれを喜ぶ声を沢山聞いたが、私は心配の方が多い。サポートは?スコープは?とそこが気になる。オンコールの給与制度は?責任は?ローテーションは?ここが今まで遅れてきた理由。そこが整っていないのに医師不足の波に押されての開始。


やりたいことができるのはやりがいにもつながる。しかし給与やオンコール体制や勤務形態が整っていなければ長続きしない。ま、自分は関わっていないから自分の職場が脅かされるわけではないけど、心配だわ。


冒頭写真:大好きな花が咲く季節。オダマキ。



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