走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

罰よりサポート

2022年10月10日 | 仕事
おろしたい、と彼女は言います。母親にはなれない。無理。

妊娠していることに気づかなかった彼女は既に妊娠30週。

んんんんんん、ここまで妊娠が進んでいると妊娠初期の堕胎とは異なり母体の負担が大きいので、はい、そうですか、とはならない。

中期、後期の堕胎を扱っている病院へ連絡するように伝えた。地元にはないので交通費を出してもらえるように支援団体と繋げた。

で、2週間後彼女の決意は出産。違法薬物を使用していても病院でサポートがもらえる、支援団体が赤ちゃん用品の手配やサポートもしてくれる。一人ではない、とわかったから出産を決めたと話す彼女は嬉しそう。

そうなんです。バンクーバーの女性病院では、薬物依存があっても、出産前後のケアを母子共にできるシステムが整っています。

必要なのは罰ではなくてサポート。サポートを受けて出産後に母親になるかどうかは、その人次第。一つ言えるのは一人で出産して赤ちゃんを捨てたり、周産期医療を避けてハイリスク出産となることを避けることができる。これがきっかけで依存から脱出する人だって。

このようなサポートがあると知らない人も多い。一人きり、四面楚歌とは思わないで早めに相談しましょう。カナダでは薬物依存は糖尿病や高血圧と同じ慢性期疾患ですから。

冒頭写真: こちらはサンシャインコーストが向こうに写っています。カナダ本土と陸続きですが、道はありません。フェリーでしか行けない場所。


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