走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

監視と罰則

2020年10月22日 | 仕事
ちょっと昨日の内容が難しかったかもしれないので補足を。

ポリシーとは法律とか規則などを指します。以前にも書きましたが北米の医療系の免許は日本のようなあげっぱなし免許ではなく規定を満たした人のみが更新できる更新制の免許です。カナダは政府から切り離した団体が免許管理を行い、それらをカレッジと呼んでいます。

カレッジは免許保持者の水準を保つためにスタンダードやスコープなどを設定しています。それに従う事により水準が保たれるわけです。カレッジはスタンダードやスコープを設定するだけでなく監視もします。記録の監査だったりします。麻薬処方に関わるポリシーが変わった時、カレッジは揃って麻薬処方の管理を強めました。カレッジは麻薬処方の数が多い医師などの記録監査を行い、スタンダードに沿って処方されていたかなどを調べて始めたのです。

知り合いの医師がこの監査でメサドン(大変強い麻薬)の処方権を失いました。監査により不適切なメサドンの使用を患者にしていると判断されたからです。症例を聞いて正直「それはあかんやろ」とは思いましたが、たった一例です。一例で処方権を失う罰則はかなり厳しいと思いました。もっと厳しい処分は一時的に免停とか免許失効とか。このような事が始まれば、医師もグインと方向性を変えます。それが患者に突然「もう処方はできない」とか「麻薬が必要ならば他所へ行ってくれ」となったのです。

今まで簡単に処方してもらえていた麻薬が突然もらえなくなる。しかし麻薬は突然やめる事ができない薬です。減量するにしても処方されていた量や期間により減量のやり方があるのです。それらを全く無視した強制的な減量、もしくは突然の中止があちこちで行われたのだから、それが患者にとってどれだけ負担になったのか想像できるでしょう。

薬物依存医療をしている私は麻薬の処方量が多い。メサドンの処方も多い。いつ監査に入られても良いように、記録はしっかりしておかなければならない(減量計画や増量の理由など)と頭に叩き込んである。それは患者を守る為であり、自分の免許を守る為である事を忘れてはいけないのだ。


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