もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

罪の声 塩田武士

2020-10-02 00:08:33 | BOOK
グリコ・森永事件は覚えている。
お菓子のパッケージの話題になるとネットに誰かが「若い子は知らないのか」と書きこむが
実際事件前はどうだったのかは記憶にない。
お菓子売り場には行ってたはずなんだけれど。

映画化される
それも源ちゃんが出るサスペンスなら観に行こう。
というきっかけで文庫を買ったら
面白くてひと月で2回読んでしまった。

作品の中では『ギン萬事件』とされているが
事件の概要はそのまま描かれている。
確かに犯人からの金の受け渡し指示は子供の声だった。
何も知らずに巻き込まれたであろう3人の子供に作者は物語を与える。

テーラーを営む曽根俊也が父親の遺品の中から見つけた手帳とテープ。
平凡だった日々に突然恐怖が口を開ける。
世間を騒がせた恐ろしい犯罪に子供の自分が加担させられていたのだ。
俊也は父の幼馴染で顧客でもある堀田と共に
誰がテープを録音し『ギン萬事件』に関わっていたのか
その人物は自分とどんな関係なのかをおそるおそる調べ始める。

同じ時期に事件を調べ始めたのは新聞記者の阿久津英士。
社会部の特集記事に援軍で呼ばれて乗り気ではなかったが
事件の真相と深い闇に近づいていくうち
記者魂も目覚め
テープの子供、青酸いりの菓子の標的とされた子供
犯罪に巻き込まれた子供たちの為に真相を知りたいと動く。

もうとにかく面白い。
現実の事件を綿密に取材した展開に
作者の想像で出現した犯人たち、その姿がぴったりと接着されてリアルなのだ。
生まれついての犯罪者
そうならざるを得なかった犯罪者
ベクトルの全く違う動機の犯罪者

たまたま集って起こした大事件。
それらに巻き込まれてしまった家族の悲劇。
一級のサスペンスでした。
コメント
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