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孫正義,借金 孫正義氏が「借金」も「赤字」も恐れない理由(画像=THE21オンラインより)
■短期間のP/LよりもLTVの最大化を追求する
27歳でソフトバンク〔株〕の社長室長に就任し、孫正義氏のもとで「ナスダック・ジャパン市場開設」「〔株〕日本債券信用銀行(現・〔株〕あおぞら銀行)買収案件」「Yahoo! BB事業」などにプロジェクト・マネージャーとして関わった三木雄信氏は、孫氏は創業当時からずっと「SQM思考」で行動してきたと言う。SQMとはSocial Quality Management、つまり、社会全体で供給者と需要者をつなぎ、必要なものを必要なときに必要なだけ供給すること。ソフトバンクグループが多額の借金をし、時にはあえて赤字を出すのも、SQM思考をしているからだ。
※本稿は、三木雄信著『SQM思考 ソフトバンクで孫社長に学んだ「脱製造業」時代のビジネス必勝法則』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■借金できるのも実力のうち
日本人は「借金」という言葉が大嫌いです。
「お金を借りること=悪いこと」という価値観が根付いているのでしょう。確かにひと昔前は、自前でコツコツお金を貯めるのが最も確実で安全だったかもしれません。
しかし、孫社長の考えは正反対です。
「お金を貸してくれるということは、ソフトバンクという会社の価値を認めてくれている証拠。だから借金できるのも実力のうちなのだ」
つまり借金は、マイナスを背負うどころか、企業価値の証明になる素晴らしいことなのだ。そう孫社長は考えているわけです。
今は世の中の「人・もの・金」を必要なときに必要なだけ調達できる時代です。そして調達に必要なのは事業アイデアだけ。以前は土地や建物を担保にしなければ借りられなかったお金が、発想一つで手に入るのです。
孫社長なら、「借金しないなんて損じゃないか!」と言うでしょう。
■「お金は天から降ってくる」
「お金は天から降ってくる」
これは孫社長がよく口にしていた言葉です。
事業アイデアが次々と湧いてくる孫社長にとって、これは冗談ではなく実感だったのではないでしょうか。おかげでソフトバンクグループは、いまや日本有数の「借金王」です。
2018年12月に東洋経済新報社が発表した「借金の多い企業トップ500」でも、4年連続で堂々の1位に輝きました。
その額は、前年の12.6兆円からさらに膨らみ、13.7兆円に到達。米国の携帯電話会社のスプリントや英国の半導体設計大手ARMを買収したことが巨額負債の原因だと報じられています。ARMの買収だけで約3兆3,000億円を投じたのですから、負債額が膨らむのも当然です。
これを読んだ人は「そんなに借金してソフトバンクは大丈夫なのか?」と思うかもしれませんが、もし孫社長がこの記事を読んだら、「どうだ、ソフトバンクはすごいだろう?」と鼻高々で自慢するはずです。
ソフトバンクに実力がなければ、これだけのお金を借りられるはずがありません。
しかも借金して買収したのは、スプリントやARMという巨大企業。特に後者は、「世界中のスマートフォン端末の97%はARMが設計したチップを搭載している」とされるほどの圧倒的シェアを誇ります。
今後IoTが拡大し、あらゆるものにチップが搭載されるようになれば、ARMは半導体設計の世界でほぼ一強の勝ち組になるのは間違いありません。それはつまり、買収したソフトバンクが世界的な勝ち組になるという意味でもあります。
借金の額が大きくても、そのお金を投資して得られるリターンが借金の額をはるかに超えるものならお得じゃないか。
これが孫社長の思考回路です。
「借金=悪」の思い込みから抜け出し、「自分たちの会社や事業の成長性を高めるための有効資源」とポジティブに捉えることが、これからの時代に勝てるビジネスを生み出すためには必須となるでしょう。
■短期的な収支より、LTVを追求せよ
日本企業は、「赤字」という言葉にもアレルギーがあります。
経営においても、四半期や単年度の決算が黒字か赤字かで一喜一憂します。
しかしSQMの時代に重要なのは、短期間のP/Lにこだわるより、「ライフタイムバリュー(Life Time Value=LTV)」の最大化を追求することです。
これは「一人の顧客が一生にうちにもたらしてくれる価値」という意味です。
つまり、商品やサービスを1回売ったら終わりではなく、いかに継続して利益を獲得できるかが勝負になります。
人々が求めるものは「所有価値」から「体験価値」へ移っています。
購買が「もの単位」だった頃は、プロダクトを1度売ってしまったら、顧客との関係はそこで途切れました。
いかし、プラットフォームやサブスクリプションモデルのビジネスでは、1度「体験価値」を売った後も継続して顧客とつながることができます。パーソナライズも、会員制などの囲い込みモデルと相性がいいので、やはり顧客と継続して接点を持ちやすくなります。
リピート購入を促したり、オプションをつけて新たな価値を提供したりしながら、一人の顧客から長く利益を獲得しやすい環境になっているのです。
孫社長が言う「牛のよだれのようなビジネス」とは、「LTVが大きいビジネス」と言い換えられるわけです。
■サブスクなら市場と対話して資金調達できる
では、LTVを追求するには何が必要か?
では「企業価値」です。
要するに、「株式市場がその会社の価値をどう評価するか」が重要になるということです。
短期的には赤字になっても、「このビジネスは継続性があり、高いLTVを獲得できる」と市場が判断すれば、企業は資金調達しながら事業を拡大していくことができます。
例えばNetflixは2018年のはじめに、約8,000億円の予算を投じてコンテンツの充実を加速させると表明しています。
なぜこれほど巨額の投資が可能かといえば、市場がNetflixのビジネスを高く評価しているからです。
2017年10月には16億ドルを、2018年4月には19億ドルを市場から調達。さらに同年10月には、過去最高額となる20億ドル(約2,250億円)の増資を発表しました。
市場が高く評価する理由は、サブスクリプションなら企業価値が明快だからです。
定額制なので、顧客数や継続率を掛け合わせれば、将来にわたるキャッシュフローがすぐに計算できます。もちろん、顧客数や継続率の数字は上下する可能性がありますが、過去からのデータをもとにすれば一定程度の確度で予測できます。
それに対し、映画製作は資金調達がしにくいことで有名です。有名な監督や俳優の作品でも、「資金集めに苦労した」という話をよく耳にします。
これは映画の場合、その1本だけで勝負が決まってしまうからです。大ヒットするかもしれまいし、大コケするかもしれない。まさに一か八かの賭けのようなものです。
そんな確度の低いものに、投資したいと考える人はほとんどいないでしょう。だから資金調達が難しいのです。
でも定額制の映像配信サービスのように、LTVが見通せるビジネスモデルなら、市場と対話しながら必要に応じてお金を集めることができます。
よって市場も、短期的な赤字はさほど気にしません。特に新規事業の場合、一時的な赤字は織り込み済みです。
Amazonが黒字化するまで、創業から10年近くかかったことはよく知られています。
その間、積み上がった累積赤字はなんと1兆円。それでもAmazonは、流通や在庫を自社で管理するための投資を続け、競合のECサイトにはない圧倒的な利便性を武器に企業価値を高めていきました。
その結果、Amazonは圧倒的多数のユーザーに選ばれる企業になったのです。
同社が独占企業とまで言われるほど成長できたのは、短期的な赤字はものともせず、長期的なLTVを追求したからです。
■ソフトバンクが4期連続赤字だった理由
孫社長も常に「短期的には赤字でいいから、徹底してLTVを追求する」という方針を貫いてきました。
ソフトバンクは右肩上がりの成長を続けてきた企業のように思われがちですが、実は2001年度から2004年度まで4期連続で赤字を出しています。5期連続で赤字を出せば上場廃止になるという瀬戸際でした。
これだけ赤字が続いたのは、2001年にADSLサービスの「Yahoo! BB」を立ち上げ、「最初は赤字になってもいいから、どんどん顧客獲得コストをかける」と決めたからです。
そして日本全国で大々的な販促キャンペーンを展開し、街頭でモデムを無料配布するという常識外の戦略に打って出ました。販売を委託した代理店は数十社、配布した場所は北から南まで数千箇所に上ります。
これほど大きな顧客獲得コストをかけてでも、まずは一人でも多くのユーザーに新しいサービスを体験してもらうことを優先したのです。また、1度にできるだけ多くの方法を試すことで、どれが本当に効果のある販売手法や販売チャネルかを見極める狙いもありました。
本当はもっと早く黒字化できたのですが、孫社長はあえてギリギリまで顧客獲得コストの投入を続けました。4期連続の赤字は、5期目には必ず黒字化できるという確信を持った上での結果だったのです
そして実際に、2005年度の営業利益は約600億円、2006年度は約2,700億円と、その後は利益を拡大し続けていきました。
数字を読むことにかけては天才の孫社長にとって、「顧客獲得コストをどこまでかけていいか」を計算するのはたやすいことでした。だから自信をもって赤字にできたのです。
そもそも、「Yahoo! BB」のサービス開始時の料金設定からして、「月額のADSL利用料が990円」という当時では考えられないほどの格安でした。
当時のADSL業者の平均的な料金は月額で6,000円前後でしたから、破格といっていい値段です。
それまでADSLは「一部のマニアが使うもの」と世間では考えられていて、一般ユーザーは「インターネットに詳しい人でないと使えない」と思っている人が大半でした。
孫社長は圧倒的な低価格に設定することで、一般ユーザーがこうした心理的ハードルを飛び越えて、「そんなに安いなら使ってみようかな」と思わせることに成功したのです。
Yahoo!オークションがスタートしたときも、手数料ゼロ円に設定しました。だから多くの人が、「だったら使ってみようか」と思ったのです。
ビジネスの初期段階では、たとえ赤字になってもいいから売り手がコストを負担し、買い手のリスクを極力減らして新規顧客の獲得に集中する。
これがソフトバンクの経営モデルです。
最近ではPayPayが大々的なキャンペーンをうっているのも同じ理由です。
「新規登録するだけで500円がもらえる」「100億円あげちゃうキャンペーン」といった出血大サービスの内容が話題となりましたが、これもキャッシュレス決済に慣れていない人たちに「それなら使ってみようかな」と思わせる顧客獲得戦略です。
もちろん、永遠に赤字では事業が成り立たないので、どこかの時点で黒字化する戦略を立てなくてはいけません。
■LTVはシンプルな計算で算出できる
ここで、ソフトバンクで使っていたLTVの計算式を紹介します。
LTVを厳密に計算しようとすると、かなり複雑な数式を使わなくてはいけませんが、本質を捉えるにはキャッシュフローのプラスとマイナスを分けた概算がわかりやすいと思います。
・プロダクトを売買する場合
LTV=(平均購買単価×購買頻度×継続購買期間)-(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
・サブスクリプションの場合
LTV=(顧客の年間取引額×継続購買期間)-(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
これで計算すると、「顧客獲得コストをいくらまで追加投資したらLTVがプラスになるか」がわかります。
プロダクトを売買する場合なら、前半の(平均購買単価×購買頻度×継続購買期間)が3万円だとします。そして一人目の顧客を獲得・維持するために100円のコストがかかるとすると、「3万円―100円=2万9,900円」が一人目の顧客のLTVになります。
しかし顧客を獲得するには、一人目より二人目、二人目より3人目と、コストを追加していかなくてはいけません。よって200円、300円と費用は増えていき、仮に300人目の顧客を獲得するのに3万円かけたとしたら、その顧客のLTVは「3万円―3万円=0円」になります。
よって、「3万円以上の顧客獲得コストをかけると損になる」とわかります。
サブスクリプションの計算式も同様です。
つまり、このLTVの計算式を使えば、単年度や1回あたりの購買ではなく、プロダクトのブランドまたはサブスクリプションの長期的な契約関係を前提とした最適な投資が可能になるのです。
LTVを管理するには、数字を使いこなす力が必須です。
ソフトバンクでは、すべての社員が数字を使って経営にコミットすることが求められていました。
三木雄信(みき・たけのぶ)
トライオン〔株〕代表取締役社長
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