自然災害は最早あり得ない!!
超巨大地震に要注意期間に突入!!
来るべき大地震は、敵の占領強化の象徴として日本列島を襲う!!
■地震は予知できない。「正しく恐れる」ためには、地震の危険性などの「数字」の背景をしっかり理解する必要がある。
■大切なのは自分の命を守ることだ。日常の生活に防災を取り入れ「抗震力」を高めたい。
■地球のダイナミックさを感じ、畏怖の念をいだくことは、自分の命と環境を守ることにつながる。
宮崎県の日向灘で2024年8月8日、M(マグニチュード)7・1、最大震度6弱の地震が発生した。震源は南海トラフ地震の想定震源域の西端で、気象庁は南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を初めて出した。
「平常時よりも大規模地震の危険性が数倍高まっている」と警戒を呼びかけた。
幸い1週間後に自治体への防災対応の呼びかけは終了したが、南海トラフ地震は30年以内に70~80%の確率で発生するとされ、いつ起きてもおかしくない。
大切なのはいざという時に自分の命を守ることだ。この機会に地震などの災害に対する備えを見直したい。
地震の発生を予知することはできない。「正しく恐れる」ためには気象庁が発表する「数字」の根拠をしっかり理解することが欠かせない。
初の「巨大地震注意」
宮崎県の日向灘を震源に8月8日、M7・1、最大震度6弱の地震が発生した。全半壊した家屋はあったものの、幸い死者は出なかった。この地震が大きな注目を集めたのは、日向灘が南海トラフ地震の想定震源域の西端にあったためだ。
気象庁は臨時の評価検討会を開催して、今回の地震が想定震源域内の陸と海のプレート(岩板)境界で発生したもので、地震の規模をより正確に表すMw(モーメントマグニチュード)が7・0であったことを確認した。既定の条件を満たしたため、同日、初めて南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を出した。
「平常時よりも大規模地震の危険性が数倍高まっている」として、29都府県707市町村を対象に防災対応を求め、住民に地震への備えの再確認を呼びかけた。
防災対応はそれぞれの自治体などによって分かれた。和歌山県白浜町では町内4か所の海水浴場が閉鎖された。花火大会を中止する自治体もあった。
高知市のよさこい祭りや徳島市の阿波おどりは、津波避難マップを配布したり、避難誘導図を会場出入り口などに掲示したりして実施された。
最大34メートルの津波が想定される高知県黒潮町では「高齢者等避難」を発表して、要支援者約230人に町職員らが直接避難を促した。
実際に避難したのは7人だけだったが、食料や寝具を避難者が持参する必要があるなど、課題も浮き彫りになった。
東海道新幹線は一部区間で速度を落として運行した。三重県内を走るJR東海や近鉄の特急も一部運休した。
「地震臨時情報」とは
南海トラフ地震臨時情報は、南海トラフ沿いで異常な現象を観測したり、地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価したりした場合に気象庁から発表される。
国はかつて南海トラフ沿いの東海地震について、大規模地震対策特別措置法に基づき、観測網を集中的に整備して「予知」を前提とした対策を考えていた。
しかし、2011年の東日本大震災では観測史上最大のM9・0の地震が発生したにもかかわらず、前兆をとらえることができなかった。
中央防災会議の作業部会は17年に「確度の高い地震の予測はできないため、大震法に基づく地震防災応急対策は改める必要がある」とする報告書を提出した。国は予知を前提にした地震防災対策を断念した。
ただ、南海トラフ沿いでは1944年の昭和東南海地震(M7・9)の2年後に昭和南海地震(M8・0)が発生したり、1854年の安政東海地震(M8・4)の32時間後に安政南海地震(M8・4)が発生したりするなど、大きな地震が連続して発生するケースが知られていた。
そこで、南海トラフ沿いで大きな地震が起きた時に、さらに大きな地震への注意を呼びかける仕組みとして臨時情報が作られ、2019年から運用が始まった。
臨時情報の呼びかけには危険度によって「巨大地震警戒」「巨大地震注意」の二つがある。
安政東海地震のように、想定震源域の半分が割れるM8の地震が発生して半分が割れ残った「半割れ」の切迫した状況は「巨大地震警戒」に相当する。
「巨大地震注意」は想定震源域でM7の地震が発生した時などに出されるもので、警戒に比べると一回り危険度が低いと言える。
日向灘では繰り返し地震
「巨大地震注意」について、今回初めて耳にする人も多かったはずだ。それでも大きな混乱はなかった。理由の一つは震源が日向灘だったことだ。
日向灘は当初、南海トラフ地震の想定震源域には含まれていなかった。
ところが東日本大震災で「想定外」のM9の巨大地震が発生した。南海トラフでは地震の想定を「過去数百年の地震の記録の再現」から「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震」に変更した。
想定震源域を最大限に拡大する中で日向灘も含まれるようになった。
日向灘ではこれまでも、1931年、41年、61年、68年、84年にM7以上の地震が繰り返し発生していた。これらの地震の後に巨大地震は起きていない。
南海トラフの想定震源域内で起きたM7の地震としては、比較的「安心な」地震でもあった。同じM7の地震でも四国沖や紀伊半島沖など南海トラフ地震の想定震源域の「核心」で起こっていたら、もっと緊迫していたかもしれない。
結果的に「南海トラフ地震臨時情報」の制度を周知するには良い機会にもなった。
東京大学総合防災情報研究センターが、防災対策推進地域の住民4400人にインターネットで調査したところ、今回地震臨時情報を見聞きした人は83%にのぼった。
情報を受け取った人の77%が「不安になった」と答えた。ただ、呼びかけを受けて「水や食料の備蓄を確認」は21%、「家族との連絡方法を確認」は9・8%、「家具の転倒防止を確認」は8・6%にとどまった。
「特に何も行動せず」も20%いた(注1)。
政府は今後、地震臨時情報の目的や意味、限界を丁寧に説明していく必要がある。
「半割れ」対応は
今回は幸い大きな混乱はなかった。しかし、「半割れ」の状況で「巨大地震警報」が出された場合、社会インフラなどに既に相当の被害が出ている中、次の大地震の心配をしなければならず、社会経済が大混乱することは避けられない。
巨大地震注意に伴う自治体への防災対応の呼びかけは1週間後に終了したが、この1週間は、科学(地震学)的な根拠に基づくものではない。
いみじくも8月8日の気象庁の記者会見で束田進也・地震火山技術・調査課長が「自然科学的な見積もりではなく、社会的な受忍限度」とコメントしていたように、私たちが生活の制限を受け入れられる期間として定められたものにすぎない。
巨大地震警報では最初の1週間、津波避難の間に合わない住民に事前避難を呼びかける。何もなくてもさらに1週間、巨大地震注意と同じように地震への備えの再確認を求める。
しかし、過去の南海トラフ地震の半割れのケースを見ても、1854年は32時間後に残りの地震が発生したが、1946年は約2年後に発生している。
人間の都合で期間を区切って、警戒すればよいということにはならない。
「正しく恐れる」ために
地震は予知できない。私たちは改めて認識する必要がある。人間と地球では時間の尺度が大きく異なるのに加えて、地球内部についてよくわかっていないことが原因だ。
地震の危険性を過小評価せずまた過度に心配することなく、「正しく恐れる」ためには科学の限界を理解して数字を正しく判断する必要がある。
今回の巨大地震注意で出された数字も実は問題が多い。
巨大地震の危険性の根拠になったのは、世界の過去の地震を調べて、1437回のMw7地震の後、震源の50キロ以内でMw8級地震が1週間以内に6回発生しているというデータだ。
これをもとに、1週間以内にMw8級の大地震が発生する確率を数百回に1回(6/1437)と見積もった。
一方、南海トラフ地震は30年以内に70~80%の確率で発生するとされている。
1週間以内に発生する確率は、期間内の確率は一定(ポアソン過程)と仮定して「千回に1回」と計算した。
二つの数字を比較して「巨大地震の危険性が平常時より数倍高まっている」と注意を呼びかけた。
日向灘の地震で想定震源域の陸と海のプレートの間に働く力が増えたから、危険性が高まったという計算ではない。
根拠の異なる二つの数字を比較しているだけだ。苦労して数字を出しているのは認めるが、中学生や高校生が夏休みの理科の課題でこのようにバラバラの数字を無理やり比較したならば、「科学的ではない」と減点されるのは間違いない。
しかも、南海トラフ地震の30年以内に70~80%という数字自体も、他の地震とは異なる特別な手法で計算されたものだ。
高知県の室戸岬の室津港では、過去3回の南海地震による隆起の高さがわかっている。
隆起の高さを地震の規模と考えて、次の地震までの発生間隔を予測して地震の発生確率を計算した。
1946年の昭和南海地震は規模が比較的小さく、放出されたエネルギーが小さかったため、次の地震までの間隔が短いと予想され、地震の発生確率が高く出た。
他の地震と同じように過去の地震の発生間隔を統計的に処理して計算すると、過去の記録をどこまで参考にするかにもよるが、6~30%程度と大幅に低くなる。
平常時の「千回に1回」は、地震からの経過時間を考慮したBPTモデルで出した70~80%という数字をもとに、期間内の確率は一定というポアソン過程を仮定して計算したもので、本来矛盾がある。
ポアソン過程だけを仮定して計算すると「5千回に1回」になる(注2)。
基準となる数字が変われば、住民への呼びかけも「危険性が数倍高まっている」が「十倍」「十倍以上」になって印象が大きく変わってしまう。
大地震直後に注意
「巨大地震警報」が出される場合も考えてみよう。
同じように世界のデータでは、103回のMw8以上地震の後、震源の50~500キロ圏内でMw8級以上の地震が1週間以内に7回、3年以内に17回発生している。
1週間以内に巨大地震が連続して発生する危険性は十回に1回(7/103)程度で「平常時に比べ百倍危険性が高い」となる。
一方、南海トラフ沿いの8事例の大規模地震のうち少なくとも5事例は東西の領域がほぼ同時期か、時間差を持って破壊された。
1854年の安政東海地震と安政南海地震は32時間差、1944年の昭和東南海地震と46年の昭和南海地震は2年差だった。
東北大学などのグループは、世界の地震のデータと1361年以降の南海トラフ地震の履歴を組み合わせて、半割れのケースで巨大地震が続けて起きる確率を計算した。
6時間以内の確率は1・0~53%(平常時の1300~7万倍)、1日以内は1・4~64%(同460~2万1000倍)、1週間以内は2・1~77%(同99~3600倍)、1か月以内は2・6~85%(同28から910倍)で、大地震直後に危険性が急上昇する。
東北大の福島洋准教授は、少ない標本で計算するので数値に幅がある。数字は目安と考えるべきだが、世界の他の地域と比べても、南海トラフでは巨大地震が連続して発生する危険性が高い可能性がある。対
策を事前に考えておく必要があると話す。
社会経済活動どう制限
地震の予測は、天気予報とは全然違う。
昭和の時代は、天気予報は当てにならないことの代名詞だった。しかし、気象観測網の整備、人工衛星やスーパーコンピューターの活用などで精度が飛躍的に向上した。
今年記録的な大雨や暴風をもたらした台風10号は、自転車並みのノロノロしたスピードで進み、進路予想が何度も外れてニュースになった。
外れることが話題になるほど、台風の予想が信頼されているとも言える。
台風では新幹線や旅客機の計画運休が当たり前になったが、地震ではそう簡単にはいかない。
かつて東海地震では予知が可能という前提で、大震法に基づき内閣総理大臣が警戒宣言を発して、自治体や企業が地震防災計画に従い社会経済活動の制限を伴う防災応急対策を実施することになっていた。
南海トラフ地震はデータが最も揃(そろ)っている地震の一つだ。
それでも「巨大地震警戒」が出されるケースであっても、次の地震が1日後、1週間後、1年後のいつ来るかわからない。
不確かな状況の中、壊滅的な被害を防ぐために、社会経済活動をどの程度いつまで制限できるか。
私たちの生活にも大きな影響を与えるだけに、難しい判断が求められる。
「抗震力」を高める
私たちにできるのは一人ひとりが災害への備えを見直すことだ。避難場所や避難経路を再確認したり、防災用品や非常食を上手に日常の生活の中に取り入れたりすることが重要だ。
何より大切なのは命を守ることだ。地震災害から自分の身を守る「抗震力」を高めたい。
抗震力を提唱する神沼克伊・国立極地研究所名誉教授は「地震が発生した時に身の回りで何が起きるのか、自分のケースに引き寄せて考えよう。
弱点や欠点を知り、足りない部分を補うのが大切だ。地震直後は誰も助けてくれない。自分の命は自分で守るしかない。
ちょっとした気づきが命を守る可能性を高める。
日本は地震が多いが、直接自分自身が大地震を経験することはそれほど多くない。自分ごとではないのですぐに忘れてしまう。
地震に対して一人ひとりが成熟度を高めていくしかない」と訴える。
大自然に畏怖
四季に恵まれて自然豊かな日本列島周辺は、四つのプレートがひしめき合う世界でも有数の地震多発地帯だ。
自然の恵みは危険と背中合わせでもある。
観光地は地球の驚異の宝庫だ。美しく雄大な景観は自然の大きな力が作り出した。
視点を「きれい」「すごい」から「なぜ」「どうして」に変えるだけで、地球のダイナミックさを感じられる。
今夏、象潟(秋田県)の九十九島を訪れた。田んぼにいくつもの小島が浮かぶ不思議な風景だった。
松尾芭蕉が奥の細道でこの地を訪れて「象潟や雨に西施がねぶの花」と詠んだ時は、砂州によって外海と隔てられた潟湖(せきこ、ラグーン)に無数の小島が浮かぶ、日本三景の松島と並び称される景勝地だった。
風景が一変したのは、1804年の大地震で地盤が2メートル以上隆起したためだ。
多くの観光客が訪れる神奈川県の江の島、城ヶ島などでも、周囲に少し目を配れば、関東大震災による隆起の跡を見ることができる。
国内最大級の内陸地震だった1891年の濃尾地震(M8・0)で生じた岐阜県の根尾谷の水鳥断層崖には、掘削して露呈させた断層面を直接観察できる施設がある。
大地震を引き起こした6メートルもの「ズレ」は圧巻だ。
ただ残念なことに、近くにある日本三大桜の「薄墨桜」に比べて知名度は低い。今春すでに桜の散った季節に訪れたが、見学者の数はずっと少なかった。
「花より団子」ではないが「花より断層」で、もっと多くの人に地球のすごさを感じてもらいたい。
自然の大きな力を感じて畏怖の念を抱くことは、人間の存在の小ささを再認識させ、災害から身を守り、地球の環境を守ることにつながるはずだ。