◆電解還元水・水素水と名を変えたアルカリイオン水
近年、アルカリイオン水がでたらめな水であることは多くの人に知れ渡ってきてはいるものの、どれほど非難されても、あるいは規制されようとも、まったく異に介さないのがアルカリイオン水の信奉者と未練たっぷりの水業者たちです。
その彼らは、あろうことか今度は「アルカリイオン水」から「電解(酸化)還元水」へと名前を変えて再登場させたのですから呆れます。そして、アルカリイオン水でも使ってきたトンデモ理論の極め付けである「水のクラスター説」に加えて、、新たな「活性水素説」なるインチキ理論を持ち出してきて大々的な宣伝に打って出ました。
この電解還元水・水素水とやらのいちばんのウリは、電気分解によって水の中に「活性水素」ができるというもので、つくった水を「還元水」やら「活性水素水」「水素豊富水」などといった適当な名で呼んでいます。つまり、活性水素を含んだ水は、体内の悪玉活性酸素を消去するから健康にいいと宣伝しているのです。
まさに、一時期もてはやされた「活性酸素は悪玉」といった風説を利用した便乗商法なのですが、これはもう、恥の上塗りとしかいいようのないものです。電気分解によって水の中にできるのは水素分子ガスであり、活性水素(原子状の水素)ができるなどという眉つばな説を信じるまともな研究者や学者はどこにもいません。もしも、これが事実であれば、化学の常識をくつがえす大発見だと、その道の学者が述べているほどです。
さらに何度も記しているように、新しい論が受け入れられるには、万人が認める決定的な証拠が必要となります。しかし、活性水素の存在が実証されたという事実はいまのところどこにもなく、水の中に活性水素ができるとしているのは、たんなる憶測や作業仮説がひとり歩きしているだけにすぎません。
装いも新たに姿を現わしたこの電解還元水・水素水ですが、一時期、まやかしの水の先頭を切って、水業界をひた走っていました。
◆活性水素が活性酸素を消すというでっちあげ
そこで、いったい誰がこんな妙ちきりんな論を世に送り出してきたのかと調べてみると、いました、いました。やはり想像通り、アルカリイオン水でお馴染の白畑實隆・林秀光の両氏が旗を降っていたのです。この、ありえない 「活性水素説」の提唱者がクラスター信奉者である九州大学教授の白畑實隆。そして、その尻馬に乗って宣伝にこれ努めているのが医師で博士号を持つという林秀光氏です。
白畑氏は、水の電気分解によって活性水素の存在を認めたと発表しました。けれども、実験した中身は、水素ガスと電気分解に使う電極の白金微粒子とのたんなる化学反応を、世紀の大発見のようにねじ曲げたものでした。水を電気分解した際の水素の生成ですが、電極表面に水素が結合し、その後、水素ガスとなります。これは、電気分解した水でなくても、白金触媒と水素ガスの試薬を混ぜれば当然に起こる反応なのです。
この現象をもって白畑氏は、電解還元水には活性水素が存在すると決めつけ、次いでこの活性水素が活性酸素を消すというところにまで話を飛躍させました。彼の論文には、試験管内でスーパーオキシドラジカルという活性酸素を発生させる実験装置をつくり、これに電解還元水(アルカリイオン水)を加えたところ、活性酸素が消滅したとして、活性水素(原子状の水素)が活性酸素と結びついたと記されています。
しかし、原子状水素が電解還元水に安定的に存在する可能性はまったくありません。なぜならば、電気分解によって、電極付近でかりに原子状の水素が発生したとしても、それは直ちに水素分子になってしまうからです。これはすでに高校の理科で教えられていることで、水中の原子状の水素は不安定で、普通は水素分子として存在しています。
また、そうした反応性の高い物質ほど不安定で寿命が短いことが知られていて、水の中の水素原子や水素分子ラジカル(活性水素)が、簡単に測定できるほど安定した形状で存在するということは証明されていません。
活性水素のような、酸素ラジカルと直接反応して消去する物質は存在しないというのがいまの化学の常識であり、かりに活性水素が生じたとしても、ただちに消化管内で消費されてしまうはずです。にもかかわらず、活性水素が安定して体内にとどまり、活性酸素を消去するなどというありもしない説に結びつけたのは、まさにこじつけといえます。
さらに、この活性水素説がいい加減なものであると断言できるのは、実験の詳細な条件が論文中に明示されていないからです。つまり、論文に、誰もが追試可能な実験条件が示されていなければ、なんら説得力を持たないということです。ですから、彼の実験そのものが公的に認められることは絶対になく、それが本当ならば化学の教科書を軒並み書き換える発見だと、多くの専門家に冷笑され、かつ相手にされない所以です。
◆怪しい水理論に飛びつくマスコミや業者
ところが悪いことに、この活性水素説は水のクラスター説同様、アルカリイオン水の蘇生、すなわち電解還元水・水素水としての再登場に大きな役割を果すこととなりました。とくに、活性酸素・悪玉説に乗っかったこの説は多くのマスコミや水業者の口の端にのぼり、またたく間に世に広まっていきました。
例のごとく、大学の教授や医師、水業者たちがしゃしゃり出てきて、テレビや新聞、雑誌などで、検証もされていない活性水素説をまことしやかに宣伝文句として並べ立て、消費者もまた、マスコミやそれなりの肩書の人が奨めているのだからと、頭から信用して飛びついてしまったのです。
活性酸素説のような、いかにも耳に当たりのいい説には、マスコミはすぐに飛びつきます。また、それによって利益が得られそうだと思う人種は、臆面もなくビジネスに結びつけて宣伝に努めます。当然、肩書のある者は、それを最大限に活かすといった行動に出るのです。
テレビで見た、新聞や雑誌に載っていた、大学の教授や医者が奨めているといった類いの情報をすべて真実だと思い込むことは、あまりに愚かです。まずは、本当かな? と疑ってかかり、専門書やインターネットなどで調べたり公的機関に問い合わせたりする姿勢こそが、賢い消費者として自分を守ることにつながります。
◆酸化還元電位で水を評価する愚
電解還元水・水素水には、もうひとつ大きなウソが塗り込められています。それは、電解還元水・水素水は「酸化還元電位」が低いから健康にいいという、これもまたなんら科学的根拠のない宣伝文句です。そして、いろいろな水の酸化還元電位を測定したという値をパンフレットなどに示して、電解還元水・水素水の優位さを喧伝しています。
しかし、酸化還元電位のプラス・マイナスの値は、水の中にどんな種類のイオンが溶けているかで決まるものであって、生物の用いるエネルギーとはまったく無関係です。とくに、電気分解した水は溶存水素ガスの濃度も変わっていて、測定結果に大きく影響します。したがって、酸化還元電位の測定はそのときの条件次第ということで、水の中にどんな物質がどれほど溶けているかで値が変わります。その成分を明確に示さずに、ただ溶液の酸化還元電位の値を測定してもなんら意味がありません。
また、酸還元電位の低い(マイナスの)水がからだにいいというのもでたらめです。たとえば、金属イオンの酸化還元電位の値を見ると、もっとも低い酸化還元電位を示すのはリチウムで、そのリチウムは人体に必要ではあるものの、過剰に摂取すれば有害に働く物質です。つまり、酸化還元電位が低い水が生物に必要なエネルギーを持っているわけではまったくなく、この説そのものが成り立たないことがよくわかります。
水素の還元電位は他の物質に比べて相対的に低く、比較的還元性のある物質といえます。さらに、水素そのものの圧力(分圧)が高いほど酸化還元電位は低くなり、還元力を持つことになります。電極近くでは、水素が大量に発生するので分圧も高いといえます。
しかも、この電解還元水・水素水とやらを飲む際には、かならず空気に触れるはずです。通常の1気圧中の水素の圧力などわずかなもので、水中の水素はただちに触れた空気中へ逃げていってしまいます。ですから、水の酸化還元電位を測定すること自体まったく意味がなく、そもそも指標としては使えないものなのです。実際、水素ガスが発生している状況での電解還元水の酸化還元電位は、通常の水と同じであることがすでに実験で確かめられています。
他に、水素分子による還元反応はおしなべて遅いということもよく知られています。たとえば、酸素ガスと水素ガスを混合しても反応は起こりません。触媒がなければ水素ガスが酸素ガスを還元することはありません。こうした事実から見ても、電解還元水・水素水にはそれほどの還元性がないことが即断できます。現在のところ、電解還元水・水素水の還元性はほとんど無に等しいか、もしくは低いもので、なんの効果も期待できないと断じても差し支えありません。
電解還元水・水素水の関係者が口をそろえてPRしている「酸化還元電位がプラスの水を飲んでいと体内が酸化的になる」とか「マイナス電位の水を飲めば体内が還元的になる」などのうたい文句は、すべてインチキなのです。どうしてもマイナス電位の水が飲みたければレモンジュースでも飲むか、ビタミンCやビタミンEといった「抗酸化物質(還元剤)」を食物から摂取したほうが、はるかに気休めになると思われます。
◆電解還元水・水素水は一方的な「伝言ゲーム」
このように、パイウォーターやアルカリイオン水ブームのときと同様の状況が、喉元過ぎたいま、電解還元水・水素水によって繰り返されています。とくに、アルカリイオン水のいかがわしさが社会的な問題となり、以降、人体への効果が実際にあるかどうかを、動物や臨床試験で試そうと申し合わせている最中にあって、もう次のまやかし水が登場してくるといったこの事態を、いったい我々はどう受け止めたらいいのでしょうか。じつに、おぞましい光景です。
「酸化還元電位」を論じている一人である法政大学の大河内正一氏という教授は、現在、日本トリムという特定の会社の「電解還元装置」のPRを盛んにしています。この会社の沿革をネットやパンフレットで見てみると、還元電解水関連の業績で東証1部上場まで果しているのです。また、前出の林氏も肩書きを振り回して、電解還元水・水素水をつくるという怪しげなキットを、自ら会社を興して大々的に売っています。
たとえそれがウソの情報であっても、権威や肩書をもって喧伝すればいとも簡単にビジネスとして成り立ってしまい、また、それら権威らしきものやたんなる肩書が、日本ではいかに大きな力を発揮するのかが見て取れます。よく考えてみてください。有名大学の教授であろうが医者であろうが、博士号を持っていようが、それと人間性とは無関係であり、金欲しさに肩書を武器にして科学的に無知な消費者を欺く輩がいてもおかしくはありません。つまり、肩書や社会的名声が、ビジネスの中身を保証するものではまったくないということです。
それにしても、まやかしの電解還元水・水素水ごときで会社上場とは恐れ入った、と思わず天を仰いでしまいますが、その蔭で、伝言ゲームにすぎない効果を信じ込まされ、意味のない水を飲んでいる数え切れない善良な消費者がいることも忘れるわけにはいきません。
もちろん、パイウォーターや電解還元水・水素水以外にも、まやかしの水はまだまだ巷にあふれています。そして、それらはすべて「水に機能を持たせる」ことを第一義にしています。しかし、機能水などという概念自体がもともと邪道であり、いうなれば、水に、水以上の役割を付加しようとする思考そのものが、「奇跡の水・魔法の水」を生み出す元凶となっているのです。
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