モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

鳥海山十二景(どれがお好み?)

2020年12月20日 | 鳥海山逍遥

鳥海山を撮った写真がけっこう貯まってきたので、今回はその姿形に関して少し語ってみようかなと思う。
しかし私の知識能力では鳥海山の成り立ちや地形をうまく語ることが出来ない。
そこで手持ちの書籍のひとつ、

「フィールドガイド 日本の火山4 東北の火山」(高橋正樹+小林哲夫・編、築地書簡株式会社・発行)
を参考に、
一部抜粋引用しながら話を進めてみる。
同書によると、
「鳥海火山(2236m)は、東北日本の日本海側、秋田県と山形県の県境にある60万歳の巨大な活火山。
長い間にわたって複数の地点から噴火したために、複雑な構造をしている。
周囲の山々からひときわ高くそびえた独立峰で、地元の人々に親しまれてきた。とあった。


2019/12/02 秋田市郊外から望む鳥海山。手前は新幹線こまち。



その形については、

「鳥海火山は、東方の湯沢市から見ると、富士山のように円錐形に見える。
ところが南方、あるいは北方から見ると、山頂から西に向かって低くなるなだらかな姿をしている。
このように姿形が見る方向により変わるのは、火口が東西方向に配列しているため、
火山体が東西に伸びた形をしているから・・・」

また「鳥海火山はその表面地形の特徴から、東部と西部のふたつに分けることが出来る。」とも記載が有った。


鳥海山の大まかなマップ。



東部は仮に「東鳥海火山」と呼ぶとしよう。こちらは約2500年前、北北西方向に馬蹄形カルデラを形成した。
カルデラの南壁には七高山(2229m)、行者岳、伏拝岳、文殊岳と2000m超の山々が並び、これらは外輪山とされている。

江戸時代(1801年)、カルデラ南端付近に最高峰・新山(2236m、溶岩ドーム)が出現し、現在の荒々しい景観となった。
また外輪山の南側中腹、鶴間池付近には急峻な斜面と大きな凹みが有るが、これは地すべりで生じたものと言われる。

2015/10/18 (西鳥海火山の)長坂道稜線から鳥海湖(鳥の海)、東鳥海火山を望む。



西部は仮に「西鳥海火山」と呼ぶとしよう。
こちらは東鳥海火山よりも生成が古く、南西方向に比較的浅い馬蹄形カルデラを形成している。

その中に溶岩流や溶岩ドーム(扇子森や鍋森など)が出現した。鳥海湖(鳥の海)はカルデラ内に生じた火口湖、
千畳ヶ原の緩やかな地形は東鳥海火山生成時の溶岩がカルデラ内に流れ込み、形成された。
全体としての姿はとてもなだらかでアスピーテ火山を思わせるものがある。


2015/10/18 御浜から西鳥海火山を望む。左から鳥海湖、鍋森、笙ヶ岳など。



これら東西の鳥海火山とは別に北側に稲倉岳(1554m)が突き出している。
その成り立ちはよくわからないが、かなり古い鳥海火山の一部と思われる。
しかし東側の急斜面は約2500年前の東鳥海火山の大崩壊で造られたものだとしたら、こちらはまだ新しい。
なおこの山と西鳥海火山の間には奈曽川の深い渓谷が有る。
まるで氷河圏谷のような地形だが、
どのようにして出来たのかいまだによくわかっていない。


2017/10/05 鉾立から、奈曽渓谷、稲倉岳を望む。奥に見える雪山は東鳥海火山。



このような複雑な地形のため、鳥海山の姿は見る方向角度によって大きく変わる。

場所によってはこれが同じ鳥海山かと驚くような形相も有るが、それもまた一興。


それでは
ほぼ真北の本荘を皮切りに山麓を時計回りに走って眺めてみようと思う。
赤いアルファベット大文字は今回、鳥海山を眺めたおおよその地点だ。


参考マップ。




2017/04/24 由利本荘市二本木付近から。手前は子吉川。



旧本荘市の中心部は鳥海山のほぼ真北に位置している。
ここから望む鳥海山は北面の馬蹄形カルデラが大きく口を開けている。
山頂部は二つに割れ、左に外輪山最高峰の七高山、右に新山が突き出した双耳峰になっている。
西鳥海火山は右奥に低く緩やかな姿で、稲倉岳はその手前に埋もれてしまい、よくわからない。

遠く秋田市や男鹿半島から望む姿も基本的には同じ姿だ。



2019/04/17 (由利本荘市)矢島町から。



少し南東に進むと、新山や北面の馬蹄形カルデラ、西鳥海山が見えにくくなり、富士山型に近づく。



2020/05/26 (由利本荘市)猿倉から。



更に南東に進むと、新山や西鳥海火山は全く見えなくなり、ほぼ富士山型になる。
そのため出羽富士や秋田富士とも呼ばれるようだが、本物の富士山に較べると傾斜が緩く、ゆったりした感じだ。
個人的には○○富士と呼ぶことは無い。鳥海山は鳥海山でいいのだ。
なお次のC´は同じ日に近くの旧鳥海町栗沢から見たものだが、中腹の残雪がまだらになっている点に着目頂きたい。


C´

2020/05/26 (由利本荘市)栗沢から。



このまだら模様は富士山や他の富士山似の火山、例えば羊蹄山や岩木山、岩手山などでは見られない光景だ。

同じ成層火山だが、鳥海山の場合はほとんどが粘性の高い安山岩の溶岩が固まったものだと聞く。
そのため溶岩流の皺が凸凹地形として残り、更に積雪量が非常に多いため、
このように残雪がまだら模様になるのではないかと思われる。
実際、祓川から登ると、この凸凹地形や残雪をいやというほど体感できる。
この角度の鳥海山は、遠方では大仙市南部や美郷町、横手市北部など横手盆地の中心部から望む姿と同じか。



2017/12/31 (横手市)十文字町から。



横手市南部や湯沢市北部から見る鳥海山はもろ富士山型だ。
個人的には18歳になるまでずっと見ていたので一番親しみのある形だ。

右側の裾のかげに稲倉岳が家来か子供のように控えている点はご愛嬌か。

真東方向からの鳥海山は更に整った富士山型になるはずだが、
いかんせんその方角は山間部ばかりで平地が極めて少ない。限られた平地は山に阻まれており、
そこから鳥海山を仰ぎ見ることは出来ない。
従ってこの方向から鳥海山を見るには高い山に登るか、次の笹子峠のような特別な場所に行くしか方法が無い。



2020/10/28 (由利本荘市)笹子峠から。このように見える場所はホンの数メートルの区間だ。




2017/05/29 (湯沢市)山伏岳山頂から。



同じような形の鳥海山は、他には丁岳、高松岳、虎毛山、神室山、栗駒山、焼石岳などからも望むことが出来る。



2014/05/12 (山形県)真室川町と金山町の境界付近から。



鳥海山から見て南東方向にあたる新庄、最上地方から見ると、富士山型を維持しているものの、やや肥満気味か。
山頂部(外輪山)が広いことから何やらキリマンジャロを連想してしまう(大アララット山に似ているとの説も有る)。
また西鳥海山の一部が左側に見え出している。
裾野は南東方向にはほとんど張り出していないが、前山(出羽山地)のかげになって確認しようがない。



2017/04/24 (酒田市)経ヶ蔵山山頂から。



真南方向からは出羽山地の低山に阻まれ、鳥海山は見えにくくなる。
月山や経ヶ蔵山など一部の山の上から望むしかないが、高い東鳥海火山の左に低い西鳥海火山が並ぶ姿に変わる。



2017/04/24 遊佐町から。



ここから望む姿は右に東鳥海火山が天空を突くように聳え、左に低い西鳥海火山が馬蹄形カルデラを開きながら並ぶ。
典型的な庄内スタイルの鳥海山だ。

庄内平野に住む大多数の人にとって、鳥海山と言えばこの姿だろう。
中部地方の一部(富士山や立山連峰、安曇野から望む北アルプスなど)を除けば、
国内で2000m超の標高差のある山岳が間近に望めるのはここ庄内平野と秋田のにかほエリアだけだ。



2017/04/24 遊佐町吹浦付近から。



同じ遊佐町だが、吹浦漁港に近づくと、左に西鳥海火山の笙ヶ岳、右に東鳥海山の支峰・月山森が突き出して来る。
また新山のアタマも突き出してくる。東鳥海火山(新山+外輪山)は奥の院のようになり、
全体としては妙高高原から見た妙高山のような形に変わる。

更に北へ行き、真西方向になると、東鳥海火山は西鳥海火山の陰に隠れ、一旦は見えなくなる。




2018/02/02 (にかほ市)上浜付近から。



にかほ市に入り、上浜まで来ると、アスピーテ火山のようになだらかになった西鳥海火山のかげ、
左側から東鳥海火山が再び現れるが、その姿はとても荒々しく男性的だ。また左側に稲倉岳が突き出している。
鳥海山としては硬軟取り混ぜた異形の姿が見えるポイントとも言える。




2014/05/19 (にかほ市)平沢付近から。



ここより北や東に行くと、左に東鳥海火山が猛々しい姿で、右に穏やかな姿の西鳥海火山が続く、
いわゆる秋田スタイルになる。稲倉岳は西鳥海火山の一部のようになってしまうが、
奈曽渓谷が大きな凹みとして食い込んで見える。


以上、ざっと十二の方角から見て来たがいかがなものだろうか。
皆さんならばどの姿(アルファベット記号)が一番好いのか、コメント欄でご意見をお聞かせ頂ければさいわいである。

なお同じ方角でも近くと遠くでは違って見えるし、高い山の上から見るとまた少し違って見える。
山の形とは
不思議なものだ。
鳥海山の姿を拝める場所はまだ無数にある。中には今まで見たことのない姿もまだいっぱいあることだろう。

本件については、今後も引き続き、探し続けて行く所存である。

以上。



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22 コメント

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モウズイカさんへ (nemobaba)
2020-12-20 09:52:06
雪形マニアの私はLの鳥海山です。
鳥海山にはいくつかの雪形があるといいます。
帆掛け舟とか種まき爺はどれかなと眺めました。
余目付近からがよくわかると、「山の紋章・雪形」に田淵幸男氏は撮ってますが・・
返信する
nemobabaさんへ。 (モウズイカ)
2020-12-20 10:26:41
早速のレスポンスありがとうございます。
Lの角度の雪形だと、「2018年の鳥海山、彼方此方から」
https://blog.goo.ne.jp/mouura2/e/5f65bd1379f96912dd3086b4084ac14a
の9枚目写真が明瞭かと思います。
最近はにかほ地方の住人の間で、兎さんやパンダの顔が見えると話題になっております。
余目など庄内地方からの雪形ですが、残念ながら雪形が明瞭な時期には行けておりませんでした。
雪形は来年以降の課題とさせて頂きます。
返信する
Unknown (もも父さん(atikoti))
2020-12-20 10:45:37
Dですね〜。やはり富士山型が良いですね〜また横手には良く行くので見慣れていると言うのもあります。鳥海山も好きな山で何度も撮影に出かけてますが天候との相性が悪いらしく良い時がありませんでした。来年あたりもう一度挑戦しようかと思っています。いつも撮影場所の参考になりますので楽しみ記事のアップを見させて頂いてます。
返信する
おはよう~ (さいちママ)
2020-12-20 11:01:42
どの鳥海山もとっても素敵です。
でもどれが一番かといいますとやっぱり見慣れているDかしら?
Cの田植え後に田園に映り込んだ鳥海山も好きです。
毎年春に田んぼに映り込んだ鳥海山を見て春が来たなとしみじみします(笑
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Unknown (ジュンちゃん)
2020-12-20 11:11:44
それぞれの良さがあって、一つを選ぶのは難しいですね。
鳥海山と分かるDと分からぬKが好みです。
あえて二つ選びました。
雪山は美しいですね。(^-^)
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Unknown (ななだい)
2020-12-20 11:39:43
おはようございます。
鳥海山はまだこの目で見た事がありませんが、田んぼに写り込んだCが好きです。
圏外ですけど、秋田新幹線と映った鳥海山も好きです。
細かく分析されていて素晴らしいです。
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もも父さん(atikoti)さんへ。 (モウズイカ)
2020-12-20 13:00:12
アンケートご協力ありがとうございます。
Dは私の実家近くから見たものなので嬉しいです。
鳥海山は雲がかかりやすくてなかなか見えない山です。
冬場は特にそうで、ひと冬に一、二回という年もあります。
もも父さん(atikoti)さんが今度いらっしゃる時、見えることを祈っております。
返信する
さいちママさんへ。 (モウズイカ)
2020-12-20 13:09:38
アンケートご協力ありがとうございます。
Dは私の実家近くから見たものなので嬉しいです。
ただ残念なのは遠い点ですね。
その点、庄内やにかほ地区は近くてでかいし、その形を見る人口も多いのでファンの数も多いようです。
水田に写り込む姿は鳥海山ならではの愉しみですね。
県南の方はこれ以上、大雪にならないで春を迎えられるよう祈る次第です。
返信する
ジュンちゃんさんへ。 (モウズイカ)
2020-12-20 13:16:24
アンケートご協力ありがとうございます。
Kに着眼された点、すごいです。
おそらく平地から見る鳥海山としては最も知られていない姿だと思います。
鳥海山の姿はいつ見てもいいのですが、やはり雪の有る時の方が神聖な感じがします。
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ななだいさんへ。 (モウズイカ)
2020-12-20 13:21:13
アンケートご協力ありがとうございます。
私の住んでいる秋田市は冒頭のこまちと一緒の鳥海山です。
家を建てたばかりの頃は居間からも小さな鳥海山が見えたのですが、
今は近所に家がいっぱい立ったので、二階から微かに見える程度になってしまいました。
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