(本頁は「エンレイソウ三種」の続きである。)
エンレイソウ、ツクバネソウの仲間は従来のエングラー分類ではユリ科に含められていたが、
新分類体系のAPG分類ではシュロソウ科という聞き慣れない名前の科になってしまった。
ツクバネソウの仲間のプロフィールは、こちらも古い書籍だが、朝日新聞社発行、
週刊朝日百科・植物の世界 112号の解説から引用させて頂く。
「ツクバネソウ属は多年生草本で、ヨーロッパから東アジアに3~5種が分布する。
地下に細長く這う根茎をもち、一本立ちの茎の先に数枚の葉が輪生し、
その中心に一個の花をつける。
近縁なエンレイソウ属の花が三数性であるのに対し、
ツクバネソウ属の花は外花被片と内花被片が各4枚、
雄蕊が8本、子房が4室と、4数性である。
果実は液果状で黒く熟し、裂開しない。
和名は、葉あるいは花被片の付き方を羽根付きの羽根に見立てたもの。
学名は、ギリシャ神話に登場するトロイの王子、パリスに由来する。」とあった。
2021/05/26 姫神山にて。
代表種、ツクバネソウ Paris tetraphylla の特徴は
既に属の解説で述べた通りだが、厳密には内花被片が退化している。
生育地は落葉広葉樹林で、あちこちの山林で見かける。
2021/05/24 男鹿毛無山にて。
果実 2022/10/16 甑山にて。
4数性なので、葉は4枚のものが圧倒的に多いが、
中には葉が5枚やそれ以上の枚数のものが混生する。
5枚葉の個体 2019/05/26 禿岳にて。
6枚葉の個体 2017/07/08 焼石岳にて。
クルマバツクバネソウ Paris verticillata は、6~8枚の葉が輪生し、
花は披針形の外花被片と線状の内花被片をもつ。
こちらも落葉広葉樹林に生育するが、分布にはムラがあるようで、
ツクバネソウのようにどこでも見られるわけではない。
ざっと見た限りでは、岩手県の北上山地には多いが、
奥羽山系や秋田ではほとんど見ない。有ってもエリアは限られている。
2011/07/31 早坂高原にて。
2022/05/07 七座山にて。
2022/05/07 七座山にて。
2021/06/02 真昼岳にて。
次の花は、日本固有種、キヌガサソウ Kinugasa japonica だ。
キヌガサソウ小群生 2019/06/09 八幡平にて。
こちらは週刊朝日百科・植物の世界 112号によると、
「果実が液果状で裂開しない点から、ツクバネソウ属に含める見解もあるが、
肥大した根茎をもつため、一属一種の独立した種として扱われることが多い。
染色体数が異質8倍体であることから、
ツクバネソウ属(あるいは近縁のダイスワ属)植物
とエンレイソウ属植物の雑種起源であるという説や
ダイスワ属あるいはエンレイソウ属の祖先から倍数化に伴い分化したという説などがあり、
その由来についてはまだ未解決の問題として残されている。」
とあった。
キヌガサソウについては、「キヌガサソウは何処に咲く。」でどうぞ。
以上。
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