「第九軍団のワシ」
ローズマリ・サトクリフ作
猪熊葉子訳
岩波少年文庫
守り人シリーズの作家上橋菜穂子さんが敬愛する、サトクリフの作品。
史実に基づいて書かれていますが、戦いで大怪我を負い、軍を離れた男の執念の物語といった感じなので、戦いはほどんど描かれていません。
どこか神話を読んでいるような不思議な感覚もあります。
サトクリフ自身も子どものころの病気が元で歩けなくなり、車いすで生活していた人。
紀元百年ごろの時代を描いているのに時代も国も遠い感じがしないのは、サトクリフと猪熊葉子先生の筆の力の豊かさゆえ。
感服いたしました。
猪熊先生に至っては、国を越えてこれほどスムーズに伝えられることが奇跡のように感じられます。
他の文献も知識もなく、ただただこの作品のみを読んだ私の感覚と感想を。
民族や征服といった大きな動きの中にも個人に焦点を当て、個人の愛や生きがいを描いている点が、もしかしたら、近代的で女性的な視点によるものかもしれないこと。
とてものどかな詩のようなものが流れていると感じること。
危険な潜伏生活でのスリルや野性の嗅覚を描いている肌感覚が味わえること。
他の民族が支配するというときの土着の種族の反応が少し垣間見られること。
民族や種族、征服と支配、その中で揺さぶられる個人について文化人類学を研究して物語を書き続ける上橋菜穂子さんの大元を感じることができること。
歩くことができないサトクリフが壮大なスケールの物語を探究した底知れぬエネルギーへの感嘆。
そういったものを感じました。
とにかく、上橋さんの愛する作品が読めて満足です😊
ローマ時代、「想像もつかない時代背景の中に違和感なく入り込」まれて、
隊長のマーカス、奴隷だったエスカ、少女コディアたちとともに生きるような時間を過ごされた体験でしたでしょうか。
かつて上橋菜穂子さんのお話を聞いたことがあり、そのあと『精霊の守り人』を読み始めました。
でも途中で挫折してしまいました。
岩波少年文庫なのですね。
とても素敵な、深く読まれたご紹介に、一度のぞいてみたくなりました。
まずは手に取ってみるだけでも。
とてもうれしいコメントをありがとうございます。
投稿したのが率直な感想です。
上橋さんや猪熊葉子先生を尊敬しています。
この方々の語彙豊かに世界豊かに描き上げるお力に感服しております。
神の手、天才の域です。
猪熊先生は翻訳は作品をもう一度作り上げること、というようなことをおっしゃっていますが、本当に素晴らしいです。
守り人シリーズは国やその世界特有の言葉や人物を覚えるのか少し難しいですが、ドラマチックさで言えば、サトクリフのこの作品の何倍ものハラハラドキドキ、劇的な展開があります。
上橋作品がすきな方には少し淡々として感じられるかもしれません。
守り人シリーズには号泣したこともあります。
(特に「蒼路の旅人」)
難しく感じられたら、「獣の奏者」の方が入りやすいかもしれません。
いつか、ぜひお読みください。
素晴らしすぎて表現できませんが、本当の愛、誠、民を治めることとは?感動が待っていると思います😊
私の感動に応えてくださり、ありがとうございました❤️
ことねこ