僕は子供の頃から、そして今でも時々猫になりたいと思うことがあります。理由は分かりませんが、あの自由奔放な生活、愛らしい仕草、滑らかな毛並みなど猫のすべてに心惹かれるのです。この猫に対する盲目的な愛情は何と表現すれば良いのでしょう?
半年ほど前のことですが松浦理英子氏のインタビュー記事を目にしました。お恥ずかしながら松浦理英子氏の名前にはあまり覚えがなく、『親指Pの修業時代』の著者と言われて初めて分かった気になるという程度の知識しかない僕にさえ、非常に興味深いことをインタビューの中で同氏は語っているのでした。
「人間の男女はそれほど相手を愛していなくても、体の仕組みから簡単にセックスできる。相手に別のことを求めているのかもしれないのに、親密になるにはセックスに進むのが自然だと思いがちです。そこで、セックスを介さずに大切な相手に喜びを抱き合える関係として、犬と人間との絆(きずな)を思い出したんです」
当たり前のようで少なくとも僕には新鮮な指摘でした。ロジカルには相手に求めていることを理解しているつもりでも、相手が異性だと、どこかでセックスを意識している自分がいるような気がします。要・不要はともかくも、一定の親密度を超えるマイルストーンとしてのセックスは、小さからぬ存在だということなのでしょう。
加えてこうしたセクシュアリティの議論に、人間とは別種の「犬」という評価軸を持ち込んでいるのも目新しいと思いました。しかも『犬身』
では「知人女性の犬になりたい」という主人公の願いが叶い、実際に彼女の犬として一緒に生活をおくる設定です。冒頭にも書いたように「猫になりたい」と思ったことは僕にもあるものの、「誰かの犬になって飼われたい」という発想はなかったので、非常に興味深い論点だと感じました。
『犬身』はかなりボリュームがあります。しかし話の展開が飽きさせず、夢中で読んでしまいました。長編が苦手の僕にしては異例中の異例です。個人的にはもっとドロドロになって、まったく救いのない結末を迎えて欲しかったのですが、人と動物の愛はそのような結末を許さない程、強くて純粋なもののようでした。
僕も早く誰かの猫になれるよう頑張りたいです。
半年ほど前のことですが松浦理英子氏のインタビュー記事を目にしました。お恥ずかしながら松浦理英子氏の名前にはあまり覚えがなく、『親指Pの修業時代』の著者と言われて初めて分かった気になるという程度の知識しかない僕にさえ、非常に興味深いことをインタビューの中で同氏は語っているのでした。
「人間の男女はそれほど相手を愛していなくても、体の仕組みから簡単にセックスできる。相手に別のことを求めているのかもしれないのに、親密になるにはセックスに進むのが自然だと思いがちです。そこで、セックスを介さずに大切な相手に喜びを抱き合える関係として、犬と人間との絆(きずな)を思い出したんです」
当たり前のようで少なくとも僕には新鮮な指摘でした。ロジカルには相手に求めていることを理解しているつもりでも、相手が異性だと、どこかでセックスを意識している自分がいるような気がします。要・不要はともかくも、一定の親密度を超えるマイルストーンとしてのセックスは、小さからぬ存在だということなのでしょう。
加えてこうしたセクシュアリティの議論に、人間とは別種の「犬」という評価軸を持ち込んでいるのも目新しいと思いました。しかも『犬身』
では「知人女性の犬になりたい」という主人公の願いが叶い、実際に彼女の犬として一緒に生活をおくる設定です。冒頭にも書いたように「猫になりたい」と思ったことは僕にもあるものの、「誰かの犬になって飼われたい」という発想はなかったので、非常に興味深い論点だと感じました。
『犬身』はかなりボリュームがあります。しかし話の展開が飽きさせず、夢中で読んでしまいました。長編が苦手の僕にしては異例中の異例です。個人的にはもっとドロドロになって、まったく救いのない結末を迎えて欲しかったのですが、人と動物の愛はそのような結末を許さない程、強くて純粋なもののようでした。
僕も早く誰かの猫になれるよう頑張りたいです。
犬身松浦 理英子 朝日新聞社 このアイテムの詳細を見る |