終電間際に新宿で足早に歩いていると見知らぬ若い男から「今、研修で名刺交換をしているのですが...」と声を掛けられました。曰く、研修の一環で見知らぬ人の名刺を持ち帰らねばならないらしいのです。仮に本当に研修でやらされているにしても、名前も名乗らぬ不躾な男と終電めがけて急いでいる僕がなぜ名刺交換しなければならないのでしょうか。あるいは新手のキャッチセールスかとも考えるとターゲットにされたことが腹立たしく、手短に断って駅の改札に急ぎました。ただ、もしも声を掛けてきた主が大好きなタレントだったり、仕事上のキーパーソンだったらどうでしょう? 同じ行為が夢のように思えたり、のどから手が出るほど相手の名刺が欲しかったり(逆に自分の名刺を渡したかったり)しないでしょうか。当たり前ですが、立ち位置が違えば同じ行為の持つ意味も変わってきます。
『13階段』は、ちょっとした言い争いから人をあやめてしまった青年と、刑務所の刑務官の二人が無罪を主張しながらも死刑が確定した死刑囚の無罪を証明しようとする物語です。刑務官は職務上の都合から死刑囚に死刑を執行することもあります。口論の末に意に反してなのか、あるいは仕事上やむを得ずなのか、きっかけや理由は違えど人を殺すことに関係する人たちの物語です。
街中で殺人を犯せば理由は何であれその罪の償いを求められますが、刑務官が死刑を執行するのは仕事ですので、罪を問われるどころか場合によっては勤務成績に良い結果をもたらすこともあるかも知れません。同じ行為でも立場によってその意味は異なるのです。
私の印象では複線が丁寧すぎるのか先が見えてしまう感はありましたが、一度読み出したら止まりません。また先が見えようが見えまいが、突きつけられる問題提起からすればさして気にする内容ではないと言えましょう。かなり感動した『夏の流れ』と比べても、迫り来るリアリティについては本書の方が上だと思います。後味が悪いという声もあるようですが、読んで良かったと思わせる1冊でした。
『13階段』は、ちょっとした言い争いから人をあやめてしまった青年と、刑務所の刑務官の二人が無罪を主張しながらも死刑が確定した死刑囚の無罪を証明しようとする物語です。刑務官は職務上の都合から死刑囚に死刑を執行することもあります。口論の末に意に反してなのか、あるいは仕事上やむを得ずなのか、きっかけや理由は違えど人を殺すことに関係する人たちの物語です。
街中で殺人を犯せば理由は何であれその罪の償いを求められますが、刑務官が死刑を執行するのは仕事ですので、罪を問われるどころか場合によっては勤務成績に良い結果をもたらすこともあるかも知れません。同じ行為でも立場によってその意味は異なるのです。
私の印象では複線が丁寧すぎるのか先が見えてしまう感はありましたが、一度読み出したら止まりません。また先が見えようが見えまいが、突きつけられる問題提起からすればさして気にする内容ではないと言えましょう。かなり感動した『夏の流れ』と比べても、迫り来るリアリティについては本書の方が上だと思います。後味が悪いという声もあるようですが、読んで良かったと思わせる1冊でした。
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