ウォークに合流してから、しばらくして台南に着いた。
台湾で注目を集め、話題になっている「Seediq Bale」という映画の存在を知った。
「Seediq Bale」とは「本当の人の意味」。
映画館に着くと、映画は前半・後半合わせて5時間。
前半を観てから続けて後半を観るか決めようと相談するが、前半終了後すぐに後半も観る事で一致した。
1930年、台湾の原住民セデック族による最大規模の抗日暴動「霧社事件」を再現した映画。
出演者は日本でもおなじみのビビアンスー(先住民の血を引く)や木村祐一、安藤 政信で
セデック族の頭首モーナ・ルダオなど重要な人物は台湾の役者が演じるが、それ以外は
みな原住民の素人が演じている。
そして、原住民どうしの会話は全て原住民の言葉が使われ、映画を観ている台湾人も
字幕でしかわからないという映画である。
映画の中に日本軍がセデック族を野蛮人と呼ぶシーンがあるが、人類学者によって
「彼らは動物と同じである」という事がいわれ、それは自分たちがどのように扱ってもかまわない
という「GOサイン」でもある。
しかし、日本軍はその野蛮人に全くとらえる事ができず、違うセデック族をお金で雇うという歴史で
おなじみのやりかたで戦うわけである。
監督は台南市出身の鍵屋の息子。
映画の構想十数年。
映画の制作費は20億円。
この20億円の制作費を作る為に監督は前作品でふざけた映画をつくり「Seediq Bale」の制作費を
稼いだそうだ。
映画収入はいまのところ15億円ほどだそうだ。
ボリビアで先住民出身で初の大統領となったエボ・モラレス大統領は映画「アバター」を絶賛して
いたが、このSeediq Baleはアバターとは次元が違う。
日本軍を非難し、かわいそうな原住民という構図の映画ではなく可能な限りありのままを伝える
ということに力が注いで映画が5時間になったと映画を観たあとダン君の解説を聞いて感じた。
そのくらい1シーンごとに意味が込められている。
霧社事件は原住民がいかにSeediq Bale「本当の人」であり続けるかという戦いであり、それは
セデック族でいう「戦士」として生き続ける事を意味する。
日本での上映は難しいとは思うけど、もし観れる機会に恵まれたら、なにがなんでも観た方がいい。
セデック族の頭首モーナ・ルダオの銅像 霧社にて