旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

台湾原住民影像誌

2012-01-26 13:19:06 | 編集長の本棚
そもそもなぜこんな本が存在するのかという話をしよう。

ツオウ族の最初の兄弟が弓を二つにわけ、困った時に助けにくると兄が弓の上部を
持ち北へ、弟が下部を持ってその地にとどまった。
日本人が接触した時に北へ去った兄が帰って来たと思い、先住民のなかで最初に
日本を全面的に受け入れたところから関係が始まり、1979年に初めて
瀬川という学者が調査し残したものを、湯浅という人物が瀬川が亡くなったあと
本にまとめたものだ。

本に書かれた神話では台湾の最高の山、パトウンクオヌ山(玉山)にニブヌという
女神が降臨し人間を作ったという話と、太古洪水によってパトウンクオヌ山に逃れ
生き残ったのがツオウ族となる兄弟であるという二つある。
洪水を警告する大地などの(女神の)声を聞いて、パトウンクオヌ山に逃れ、
生き残った兄弟と考えた方がここでは自然か。

僕がこの本で一番面白いと感じたのは、この太古洪水についてだ。
というのも、台湾だけではなくアボリジニ(オーストラリア)、ホピ(アメリカ)、
ハワイにも、これとよく似た洪水の物語が残っているからだ。

ホピには自分たちは洪水のあと(だと思われる)自分たちの始まりがグランドキャニオンの
下から始まったという似た話があるし、ハワイには太平洋の最高峰「マウナケア」の
山頂に逃げのびた一組の夫婦だけが助かり、その夫婦が人類の親となったという
同じとも思える話がある。

世界の全くちがう場所で同じ話があることから考えても、文字すら無いずっと
むかしに洪水があったということは間違いなさそうだし、それは同時に世界の
先住民が言う『前の世界』が確かにあり、バランスを失った『前の世界』が
浄化の洪水によって終わったということを意味しているのだと僕には思えてならない。
世界の先住民がなにを守り、なにを伝えようとしているのかについては、言葉にする
必要はないと思うのでここではやめておく。

この話の中で台湾とハワイの神話に共通性を感じるが、実際にいまのところハワイの
先住民の祖先は台湾を源流とする説が強い。
ポリネシアンのみんな身体が大きくて、肉付きがよいのは長期の航海に耐えられる
よう、それに合った体格の人物が選抜されたためという話もあるが、確かにアミ族や
ツオウ族の男性の体格はそれと似ていたが、台湾の神話が同じ場所から後にハワイへと
別れたものなのか、祖先を同じとする人たちが台湾とハワイという違う場所で
同じような体験をしたのかは僕にはわからない。

ツオウ族のツオウとは『ヒト』を意味している。