navikuma のブログ 陽炎のようにゆらめく景色のなかを走行中です。

ユーラシア大陸の端っこからのたわごとです。

遥かなるバルカンの空の下へ-9

2008年04月13日 | 日記
この旅3日目の朝は雨降りだった。*(雨)*

駐車場に残っている車の並びから抜け出し灰色の雨脚に包まれたその小さなホテルを後にした。
ダッシュボードに埋め込まれているデジタル時計は午前9時10分を表示していた。

ホテル以外には他にこれといった施設はない休憩エリアであった。
閑散としたただただだだっ広いアスファルト舗装のされた地面には夜通し降り続いている雨のせいであちこちに大きな水溜りが拡がっている。
幾つかの大きな水溜りをタイヤで押し分けながらゆっくり走り抜けた。

再び4号=E70アウトバーン本線への短い助走路を加速しながらから疾走車たちが巻き上げる雨けむりを追うように合流した。*(ダッシュ)**(車)*

暗く灰色っぽい雨雲に押しつぶされそうな低い空の端っこの方にひたすら突き進んでいくような感じだ。
単調にアウトバーンを120~130km/hのスピードを保ちながらそれほど多くはない車達の流れにのって走る。
ときおり水溜りにハンドルをとられながらもほとんどまっすぐで起伏の少ない所を走り続ける。*(雷)*

走り出してから1時間半ほどたった頃,道路標識でこの先2kmに国境があると表示が見えた。

速度標識に従って徐々にスピードを落としながら出国審査ゲートへ入っていく。
7つ並んでいるゲートのうち乗用車マークで緑色のサインのあるゲートが4つで残りは大型トラックとバス用である。
車列がいちばん短い右端から2列目をえらんでその最後尾へついた。
他のゲートもあまり大差はないのだがそれぞれ7~10台ぐらいの車列である。

あまり混んではいないようだ。
すぐに自分の番になった。
待ち時間も含めてわずか10分足らずで無事クロアチア出国審査を通過できた。

400mほど先にあるこんどはセルビアの入国審査ゲートへ向かう。
ここでも5~6台の車の後ろにつく。

ウインドウグラスの外に見えるゲートや国境管理施設の建物を眺めているとどうも何かが違うという感じがした。

ゲートの高み掲げられた標識に書かれている字形がまず違うのである。
大きなキリル文字表示になっているのだ。
これまではどこもラテン文字表示だった。
当然キリル文字はほとんど読めないのであるが,幸いにも道路標識はキリル文字表示のすぐ下にラテン文字表示がされているので行き先の判読に困ることはない。

いよいよバルカン半島でもセルビア正教徒が多く住む地域へ入っていくのだ。

前のセルビアナンバー(=SRBマーク)の中型車に乗った人の審査が終わり自分の順番になった。

窓口がちょうど横になるようにゆっくり移動しエンジンを止める。
係官のいる窓口は運転席の反対側つまり右側に車のちょうど屋根の高さぐらいのところにある。

助手席側の窓を全開にしてせいいっぱい右腕を伸ばし右側のゲート窓口にいるセルビアの入国係官にパスポート,車の登録証と保険証(グリーンカードと呼ばれる)それから運転免許証をまとめて手渡した。

グレーの制服を着た誠実そうな中年の係官だった。
その係官は座っているところの窓から車の中に他に誰かがいるか確かめるような感じの視線を投げてから,では...。といった感じに手渡した書類を見開いて手なれた動作であれこれチェックしている。

すこし待たされた。

どうなるのだろうか少し心配になった。
そんな心配をよそに“行っていいよ”という仕草をまじえつつその書類を一まとめに重ねて返してくれた。

ここもまたなんら問題なく無事通過できた。
きのう起きたオーストリア出国審査でのヴィニエッテ・トラブルのような問題は
ここではなかった。

ふうっ,何事もなくてよかったよかった。*(いっぷく)**(グッド)*

今までにいろんな国への出入りでもう何百回となく繰り返して体験していることだが,たとえ後ろめたいことがなくても(少なくとも自分ではそう思っている)毎回緊張するものだ。

どう言ったらよいのか,例えばむかしスパイ映画の一場面で偽造パスポートをもつ主人公が不法出入国をしようとしているようなそんなふうな緊張感が漂う。

むかしこんな事があった。

たしか仕事で行った先のハンブルグ空港で出国時のパスポートチェックで係官からお前のパスポートは期限切れではないのかと指摘を受けた。*(青ざめ)*

だがそのパスポート所有者本人がそのことにまったく気づいていなかったのだった。*(怒り)*

その場ではそういわれるのはまったく心外であるという振る舞いをした。
再発給の日付がほれこれこれだからまだ5年間の有効期限内であると言い張ってそこを通過した。

実際そう信じ込んでいていたから強かった。*(グー)**(汗)*


当たり前であるが帰り着いたスキポール空港では入国審査が待っていた。

ハンブルグでは事なきを得たが,改めて言われたことを考えれば考えるほど自信がなくなっていた。
心拍数が高まり極度の緊張をなんとか取り繕って臨んだ入国審査では幸いにもなんにも言われず入国スタンプをポンッと押してもらったけど。
ふうっ~~~~~~。*(いっぷく)*

後日あらためてその件をよく調べてみると確かに先月2月6日に期限が切れていることが判明した。
ハンブルグから帰ってきた日は3月5日だった。*(驚き)**(進入禁止)*

じつはその時もっていたパスポートはその時から遡って約2年半前に盗難に合って在オランダの日本大使館で再発給してもらったものだった。

再発給日からはまだ5年は経っていなかったがハンブルグ空港の係官さんがご指摘されたとおり元々の発給日からはとっくに失効していたのだった。
いやっ~~~~参った!

緊張しますね,いつも出入国時のパスポート審査は。
ですからよけいに!*(ニヤ)*

その事件の続きです。
真実は奇なりの続編です。
じつはそれからも厚かましくも空路と陸路それぞれ1回ずつこんどは蘭国とフランスを行き来していた。

だからそのパスポートには今でも合計6個のスタンプが期限切れ後の日付になって押されていますね。おぉっ~~~!
気合ですね!
若かったですからその頃は。
*(うるうる)*

さてと,両替をしなくては。

そういう類の緊張から解放されて気分も変わりまた見える景色も変わってくるものだ。
今日は罰金の出費はない(まだ)のでよけい気分がかるい。
一晩寝ただけでずい分気分が軽くなった。

クレジットカードではなくそのために持ってきた手持ちのユーロ現金をセルビア・ディナール=DINに両替したいのだ。

入国審査ゲートを抜けた右手に輸出入書類を代筆してくれる色気のない風体のボックス型の簡易事務所が12~13軒ぐらい軒を連ねて並んでいる。
その並びのいちばん端っこに小さな両替屋らしき看板が見えた。
その両替屋のすぐ先に駐車できる所を見つけ停めた。

それほどではないだろうと高をくくって傘をささずに車をおりてその両替屋まで歩いて着たらそれだけでずぶ濡れになってしまった。

不運にも2軒並んでいる両替屋は両方閉店中らしく入ろうとしたがドアに鍵がかかっていた。

昼にはまだ早いしいったいどうしたのだろう。
中は暗く誰もいない様子であった。

その辺をたまたま歩っていた人をつかまえてEXCHANGEはどこかと尋ねると“この簡易型事務所の裏の並びにもあったはずだが”というのでそっちの方へ行ってみた。
しばらく歩き回ったがそれらしきもの見つからなかった。
しずくが落ちるぐらいにさらにずぶ濡れになってしまった。

実はしばらく前から小用を足したくなって仕方がなかったがその近くにはそれらしき所はないようだった。

ついてないようだ。

両替ができないと困るのでそれからしばらくその辺りを行ったり来たりしていた。
するとどこからともなく小柄なおやじ風の人が現われてその閉店中であった一軒の両替屋を開けて両替してくれた。

セルビアは通過するだけであるから50ユーロ分だけあれば充分なはずである。

ここのセルビアの通貨ディナ-ルはこの国の外では両替してくれないそうだ。
だからこんな所で両替する人はあまりいなのだろうか。

アウトバーンの料金所やガソリンスタンドの支払いはすべてクレジットカードで済ますことができる。
多少無理強いすればユーロの現金だって使えるけれどやっぱり現地の通貨が手元にないと何かと不都合である。

そこから出てくるとき両替屋のおやじにトイレはどこかと聞いたら,言下に“そこにあるではないか !”言われた。

どこに?
きょろきょろ辺りを見回してみるとたしかにそれらしきところが真向かいにあるようだったがはっきりとは判らなかった。
看板はまったくないがこの並びと同じような風体のボックス型建物が2棟くっついているところである。

ちょうど四角い箱が2つくっついている真ん中が薄暗くなっていて,その薄暗い中で人が動いているようだった。

そこへ入っていくとおばちゃんが2人いて立ち話に夢中であった。
欧州域ではどこへ行ってもよくお目にかかるおトイレおばちゃんたちである。

“トイレットは?”
とただ一言訪ねると“そっちの方だよ”と後を振り返りながら教えてくれた。

セルビアのおばちゃんが取りしきるボックストイレで用足しをしてすっきりした。

出てきたらいきなりもう一人のおばちゃんから紙片を突きつけられた。

使用料35ディナール=44ユーロセントなり、ご立派な領収書であった。
その領収書には原価は29.66ディナールで付加価値税が18%で5.34ディナール計35ディナールであるとトイレ使用料金の内訳明細が記されていた。
まあ相場料金である。

緊張が解け出すものを出してすっきりしてでは先を急ぎ一路ベオグラードへ向かって再び走り出した。

オランダからはるか1700kmも走って南国へ来ているのにちっとも明るくならないしいまだ雨降りばかり続いている。
バルカンの太陽にまだ出会えないのだ。
どこまで行けば明るい太陽が拝めるのだろうか?*(晴れ)**(はてな)*