ナイアガラから車に乗せてもらい、1時間半でトロントへ着いた。
前々日、トロント空港からナイアガラへ行った道を戻ったことになる。
オンタリオ湖沿いを、ぐる~っとまわる道である。
途中、激しく吹雪が舞い散っていたが、トロント市内に入るとやんだ。
トロントは、人口で言えば、ニューヨーク、ロスアンゼルス、シカゴに次ぐ北米第4の都市だそうである。つまりカナダでは第一の都市ということになる。
カナダと言えば、夏期オリンピックが開かれたモントリオールや冬季五輪が開かれたカルガリー、同じく次期冬季五輪開催地のバンクーバーがよく知られ、さらに首都もオタワだから、トロントはどことなくイメージが薄い。
しかし実際の街をこの目で見ると、思っていたよりずっと大きな都市であった。高層ビルが建ち並ぶ外見も堂々たるもので、ここがカナダの文化、政治、経済の中心地であるということも、来て見ればよくわかる。

トロントの街。オンタリオ湖畔に高層ビルが建ち並ぶ(ネットから転載)。
その昔、大西洋に注ぐセントローレンス川から英国人をはじめいろんな人種の人たちが川を上ってきて、最初に到着したのがオンタリオ湖畔のトロントであった。「トロント」というのは、原住民の言葉で「集まる」という意味を持っているそうだ。そうして集まってきた人々が、今日のトロントの隆盛を築いた…というのである。だから、トロントにはさまざまな民族が共存し、50ヶ国以上の言語が飛び交うと言われている。まさに典型的な多民族都市である。
何回かカナダに旅行に行ったことのある女性から旅行前にメールをもらったが、そこには「マーケットに行ってみるといいですよ。さまざまな野菜があり、多民族性がよくわかります。トロントの街は異色で、とても活気があり、私としてはもう一度行きたい興味深い街です」とあった。午前中にトロントへ着いた僕たちは、その女性のお勧めのとおり、まず、ホテルから1時間近く歩いて、トロントで一番大きいと言われているセントローレンスマーケットに行った。
マーケットは地図と磁石を頼りに歩いて行くとすぐに見つかった。
(余談だが、磁石だけは、どこへ旅行するにも絶対に欠かせない)。
中へ入ると、なるほど、さまざまな人種の人々で賑わっていた。
売っているものも、見たことのない野菜や果物などが多くあった。

市場の中は活気にあふれていた。 人々の生活の匂いが充満している。

むむっ。どんな味がするのだろう。一つひとつ試食してみたい気がする。

お惣菜屋さんは特に、よく繁盛しています。

マーケットから外へ出たとたんに、熱気はしぼみ、寒さが再び身に沁みる。
マーケット見学は、まあ社会見学である。それはそれでよかったのだが、僕はついでに、ここで、どうしても買いたいものがあった。ビールである。
ナイアガラの店には、水やジュースなどの清涼飲料水はいくらでも売っていたが、アルコール類は一切置いていなかった。レストランに入らなければビールを飲めない。部屋に持ち帰って飲むような缶ビールが売っていないのだ。窓の外の滝を眺めながら飲む缶ビールはさぞ旨いことだろう…。でもそれがナイアガラではできなかった…。これはあまりにも寂しいことではないか。
トロントは大都市だからコンビニくらいはあるだろう、と期待した。
期待どおりホテルの向かい側にセブンイレブンがあったので行ったが、肝心のアルコール飲料は置いていなかった(がっかり)。ならば「何でもある」というマーケットへ行けば、ビールやワインぐらいは売っているだろう、と思っていた。しかし、そのトロント随一のマーケットにも、アルコールはなかった。
「おかしいなぁ。なんで、どこにもビールが売ってへんね」
その夜も、ホテルのレストランで生ビールを何杯か飲んだけれど、そのあと部屋に戻ると何も飲むものがない。義姉が僕のためにと、日本からおつまみを沢山持って来てくれていたのに、それだけボリボリかじるのは味気なかった。
翌日、トロント半日観光に案内してくれた60歳ぐらいの日本人のおじさんガイドにそのことを尋ねた。
「あ、ご存知なかったんですか? このオンタリオ州では、アルコールは民間では販売できないことになっているんです」
「げッ。販売していない…? なんちゅう国やねん」
思わずこの国を非難してしまった。
「アルコール類はLCBOという政府直轄の店でしか売られていません」
とガイドさんは言った。
なんだって? へぇ~、厳しいんだなぁ。日本ならどこでもビールくらい買えるのに。スペインやイタリアなどは、マクドやミスドみたいな感じの店でも、ビールやマティーニなんかが置いてある。パリのレストランでは、ランチタイムでも、ワインのグラスが出ているのだよ~ん。隣席では昼間から美味しそうにワインを飲んでいる紳士の姿があるっていうのが、おフランスの流儀なんだ。それに引きかえ、ビールの「ビ」の字も店で売られていないのはナンでやねん。
おじさんガイドの説明によると…
トロントやナイアガラが属するオンタリオ州は英国系の州である(そういえばナイアガラにもイギリス国旗があちらこちらではためいていた)。英国系は厳格だからアルコールの販売は政府機関でしか売らないというのである。
「でもね、お隣のケベック州へ行けば、そこはフランス語圏ですから、ビールやワインなんかはどこにでも売っていますよ」とおじさんガイド。
ふ~ん…? 同じ国でも、洲によってこれだけ違うんだ。
そういうことなら仕方ない。とにかくLCBOとやらの政府直轄の酒類販売店に連れて行ってもらおう…とおじさんガイドに頼んだのは言うまでもない。
イギリス人はそれほど酒に厳しいのか…。知らなかったな~。
僕は一度ロンドンへ行ったことがあるが、わずか2日だけだったので、ビールを求めて走り回ることはなかった。だからそんなことには気がつかなかった。
ただ、オーストラリアのゴールドコーストの郊外だったと思うが、ある海鮮料理店へ入ってビールを注文したら、「ない」と言われたことがある。オーストラリアでは、飲食店でも客にアルコールを提供するには許可が必要で、その許可を持っていない店では、ビール1本すら置けない…ということを誰かから聞いたことがある。オーストラリアといえばイギリスの親類である。やっぱり、ここもアルコールには厳しい国だったんだろうか。
とまぁ、話はまたビールのことになってしまったのだ。
トロントの気温はマイナス10度前後であった。もちろん大阪では考えられないほど寒い…というより、冷たい。でも、想像を絶する寒さ…というほどでもなかった。なんとか耐えられる範囲だった。僕たちがトロントから帰った直後には、恐るべき寒波がトロントを襲ったと、じゃいさんが教えてくれたけれど、そんなことは想像もせず、僕らは、まぁ、カナダの冬はこんなものか…これならなんとか凌げなくもないな~とのんきに考えたものだ。
この街は地下道(地下街)が発達していて、外を歩かなくても街の主なところはどこでも地下街を通って行ける仕組みになっている。寒い冬にわざわざ外を歩かなくてもいいように、ちゃんと工夫がされているのである。僕らは外が寒くなったら、地下に降り、店も沢山並んでいる地下街の中をあちらこちらとうろついた。そこにはノースリーブで歩いている娘さんもいた。
外は寒くて人通りも少ないが、地下に入ると華やかな都会の風景があった。
それでも、やはり外を歩かなければ旅をしている気になれない。いくら寒くても、やはり外国では外を歩くのが楽しいことには違いない。
トロントの名所の一つはCNタワーというところだ。
僕たちのホテルの窓からも見えていたが、高さが553m もあり、つい最近、ドーハに建った564m の塔が出現するまでは、世界で一番高いタワーであったという。そのタワーにも、案内してもらい、展望台まで上ったが、別段そんなに高いタワーだという感じはしなかった。これなら昔、東京池袋のサンシャイン60に上がって最上階から景色を見た時の感激のほうがはるかに大きかった。
「ものすご~い高いでしょう。上から車を見たら、豆粒のようですよ~」
と興奮気味にタワーを紹介してくれたおじさんガイドには申し訳ないけれど。
おじさんガイドは、タワーのほか、イタリア街、中華街、韓国街、ギリシャ街などを車で回ってくれ、洲議事堂前では雪を踏みしめつつ記念写真を撮り、そのほか、トロントの街を車でぐるぐる回ってくれた。
驚いたことに、雪の道路わきのあちこちに、ホームレスがいた。
雪の上に身をすくめて寝転んでいる姿は、どうみても死体が転がっているとしか思えない。そんな光景を見るたびにギョッとする。コンビニの前にも、雪の中に埋もれるように座って物乞いをしている老人がいた。車窓から街を眺めていると、そういう姿がやたらに目に付くのである。
おじさんガイドが言う。
「こういうのを日本人のお客さんが見ると、不思議なんでしょうね。あの人たちはあのまま死んでしまいそうなのに、なんで誰も助けてやらないのか? …と心配されるんですよ。それを言われると我々も困るんです。このホームレスたちは、こういう形で自由に生きていくのを望んでいる人たちなんですよ。決してトロントの市民が冷淡なのではない、ということを、私はいつもお客さんに申し上げています」
話は変わるが、トロントの目抜き通りで「ヤング通り」という通りがある。
そのわりには、年寄りの人たちばっかり歩いている。
「どこがヤング通りやねん!」と言いたくなる。
「いや、ね、ヤングというのは『若い』の意味じゃなく、ヤングという歴史上の人物の名前からつけられたものなのです」とおじさんガイド。
このヤング通りが、ギネスブックに載っているという。
CNタワーがドバイの建物に世界一を奪われてしまったカナダっ子は、このヤング通りが今では自慢なのだそうである。この通りは、世界一距離の長い通りとして、ギネスブックに登録されているのだそうだ。
オンタリオ湖畔に、このヤング通りの起点があった。
そこに、何か記念碑のようなものが建っていた。
「この通りはね、ここから1900キロも続いているんですよ」
1900キロ! 世界一長いストリート!
1900キロといえば日本の本州の長さぐらいあるのではないか(知らんけど)。
それはすごい。
「すごいでしょう~!」
おじさんガイドは、大いに自慢気であった。
すご~い…と思っても、まぁ、それだけで終わる話であるけれど。
あぁ…、旅のことを書いているとキリがなくなる。
どこでどう記事を締めていいかわからない。
だらだらと書きましたが、以下、まただらだらと写真を掲載します。

トロントの街には、長い長い地下街とショッピングモールがある。

CNタワーのすぐ隣に、ロジャース・スタジアムがある。
米大リーグのブルー・ジェイズの本拠地で、ヤンキース戦などは超満員になるそうだ。

車を降りて、雪の中をCNタワーに向かって歩く。

ついこの間まで、世界一の高さだったというCNタワー。
タワーの展望台から、トロント市街とオンタリオ湖を望む。

このCNタワーは、僕たちが泊まったホテルの窓からも見えていた。

オンタリオ州の議事堂前で。おじさんガイドが撮ってくれた。
僕たち3人は、この車でおじさんガイドに市内を案内してもらった。

トロントは多民族都市である。おじさんガイドは、中華街、韓国街、イタリア街
などを回ってくれた。写真のあたりは中華街である。

向き合っている2つのビルは、トロントの市役所である。 ふわぁ~、カッコいい。

トロント市役所の前の広場がスケートリンクになっており、大勢の人が楽しんでいる。
日本のお役所も、こんなふうに、市民の憩いやレジャーを提供する場所を兼ねたら、
もう少し、親しみがあって市民に愛されるお役所になれるのではないか…と思ったり。
ナイアガラとトロントの旅は、それぞれ2泊ずつの短い旅でしたが、
やはり海外旅行ならではの体験や勉強をすることができました。
このブログに書けなかったことも、またご紹介したいと思います。
さて昨日から野球のWBCが始まりました。もう、夢中になりますね。
昨日の中国戦はまるでサッカー日本代表のような「決定力不足」で、
思わぬ苦戦を強いられました。
早くイチローが調子を取り戻し、明日の韓国戦には必ず勝ってほしいです。