パリ旅行中に疑問に思ったことが、帰国してから少しずつ解決していくのはなかなかうれしいことである。
これは、ブログを読んでいただいた方から詳しい情報がもらえるという、ネットならではのつながりのおかげであろう。旅行も、ブログのおかげで、ずいぶん実の多いものになってきた。
ルーブル美術館前の「トホホ」の像や、同美術館の中の「乳房の美しい女性」を描いた絵画の謎は、ネット仲間のじゃいさんが、恐るべき検索力でたちまち解明をしてくれ、コメント欄に当該サイトを貼り付けてくれました(このことはまた後日、あらためて記事にアップしたいと思います)。
そして、今度は元パリ在住で、今回の旅行でも多くのアドバイスをいただいたボワシエールさんが、嬉しいことに、僕の記事を読まれ「触発された」とのことでした。そして、フランスで過ごされた3年間を思い起こしながら、「パリ生活のあれこれ」を、ご自身のブログでつづっていかれるそうです。これまた、楽しみなことです。そのまず第一回目がさっそくアップされました。
ボワシエールさんのブログ → La Vie en Rose
記事は、トイレについての僕の疑問にさっそく応えていただいた形だった。
「男女兼用」というトイレの標示である。
その記事に書かれているように、トイレに「女性用」と「男女兼用」の2つが並んでいるというのは、パリではときどきあるそうだ。混んでいるときは男女混合で1列に並び、女性は両方どちらでも入れるが、男は男女兼用にしか入れない。じゃ、どっちみち両方とも個室なのだから、ともに男女兼用にしておけばいいじゃないか、と男の僕は思うのだが、フランスはこういうことからしても、女性への配慮を重んじている国であることがわかる。しかし日ごろトイレ(小さいほう)で並ぶことに慣れていない男は、こういうのって、つらい。
男子がおしっこをするのに、わざわざ個室は必要ない。日本の男子トイレには、一部例外を除くと、どこでも大小二通りの便器が並んでいる。これが僕たちのニッポンの常識だ。しかしパリには、男子トイレでも、個室だけ、というところが時々ある。だから、話は少し複雑になってくる。
先日のパリで、男子用のトイレのドアを開けると、洗面所で女性が鏡に向かい化粧をしていた姿が目に飛び込んできだ。見渡したところ、男子用小便器もない。
「あ、しまった!」と、自分が間違えて女子トイレに入ったと思い、いったん出てドアを確認したらやはり男子マークがついていた。首をかしげて、もう一度中に入って、よ~く見ると男性も2人ほど洗面所にいた。しかしやっぱり「男子専用」の小便器がないのだ。奥に4つほど個室があるだけ。それも、見た目には全部ドアが閉まっていた。どうしたものか…とためらっていると、奥にいた年配の男性が僕を見て、「ここ空いてますよ」と、親切に1つのドアを指差してくれた。それでやっと、どうにか個室まで行って、用を足すことができたのである。
手を洗おうと思ったら、隣では、さっきの女性がまだ化粧をしていた。
そこでまた、水道の水の出し方がわからず、あちこちさわったり、押したり、叩いたりしていると、隣の女性が「こうするのよ」と、蛇口の頭を2回ドンドンと強く押したら水が出た。メルシー。
次に手を乾かす温風器も、どこをどうしたら温風が出てくるのかわからず、押したり叩いたりしていると、別の男性が「こうするんだよ」と、ある部分を押して温風を出してくれた。メルシー。
やれやれ…。トイレに行くだけでも、ぐったりと疲れます。
ボワシエールさんが書いておられるように、高速道路のサービスエリアなどに行くと、男子トイレにも女性が殺到する。男子トイレが女性の行列で埋まり、それをかきわけて中へ入っていくのは、なかなか勇気のいることである。
僕も、モン・サン・ミッシェルの行き帰りのサービスエリアでそれを経験した。
女性たちが並んでいる男子トイレに遠慮がちに入り、女性たちのすぐそばで、なんの間仕切りもない場所でおしっこをする…というのは、これはまあ、他に比べようもないほど大変な苦行である。出るものも、出ない。とほほ。
まあ、考えたらこれも、男子トイレは「男子専用」ではなく、「男女兼用」みたいなものである。
また、カフェの中で、ごちゃごちゃと人の出入りが多いカフェでは、地下のトイレに通じる階段にロープを張り、進入禁止にしているところがある。客でもないのにトイレだけを使いに来る人間を排除しようということなのだろう。しかし、客であれば、もちろん使っていいはずだ。
あるカフェに入ったとき、ロープが張られている階段があったので「この下がトイレになっているんだな~」と思って眺めていたら、若い女性が僕の隣に来て、
「トイレに行きたいのだけど、ロープが張ってあったら行けないわねぇ…」
みたいなことを言うので、僕は、
「さぁねぇ…。わてには、よう…わかりまへんわ~」と答えるのみ。
そこへ店の兄さんが来て、女性に何かをしゃべり、自分のポケットから硬貨を一枚出してその女性に渡したのだ。女性はその硬貨を受け取ってロープをまたぎ、階段を下りてトイレに行った。兄さんは僕のほうには見向きもせず、どこかへ行ってしまった。
地下トイレは0.5ユーロだかのコインを入れなければ開かない仕掛けになっているそうで、彼女はお客だったからコインをもらったのだろう。
しかし…
だったら何であの兄さんは、同じ客の僕にはコインをくれなかったのだろう(僕は別にその時トイレには行きたくはなかったんだけどね。それにしても…)。
…なんだかなぁ。
要するに、フランス人は、ゼッタイに女性に甘いのだ。
甘い、といえば叱られるかもしれない。
女性を大切にしている、ということにしておきましょう。
(異国の習慣に振り回される頼りない男も大切にしてくれえ!)
パリに関する本を読んでいると、男同士でトラブルが起きても、そこに女性が出てくるとすぐに解決する、という話がある。あらゆる局面で、男性よりも女性の方が、事がスムースに運ぶことが多いのだという。
では、最後に…
トイレの話のついでに、このことも書いておこう。
ボワシエールさんも知らない(…と思われる)話である。
ハッキリ言おう。
男性用小便器の背が高いのだ。高すぎるのだ。
僕など足が短いので、用を足すのに踏み台がいるのでは…と思うほどだ。
精一杯背伸びしてしなければならぬ。そんなケースが多かった(泣)。
フランス人の平均身長は、ロシア人やオランダ人のように高くはないのに、このアサガオの高さはナンなのだ。日本のように、隅っこに子供用があることもない。
物の本には「高いほうがハネカエリ(おつり)が少なくて良いからだ」とある。
ほんまですかいな…?