大阪国際女子マラソンは、以前は何日も前から楽しみにして、毎年、この日曜日だけは予定を入れず家にこもり、熱心にテレビ観戦していた。 また、テレビでは物足りなく、自転車でコース付近を走りまわり、選手たちの力走に沿道から拍手を送ったこともあった。 アイルランドのキャリー・メイという可愛い選手が、先導車のあとからさっそうと先頭を切って現れたときの胸のときめきは、今もよく覚えている。 カッコよかったなぁ。
しかし、当然のことながら、これだけではレースの流れがわからない。
やはりマラソンはテレビ中継に限る…と思い、それ以来 「実物」 は見ていない。
しかしここ数年は魅力的な選手もいなくなり、ときめくことも少なくなってきた。
いつのまにかテレビを見る習慣も途絶え、その日に外出することも増えてきた。
しかし昨日は寒い1日だった。 しかも風がめちゃくちゃ強かった。
ベランダの洗濯物が、竿ごと風にあおられて落ちるという珍事も起きたほどだ。
寒がり屋の僕としては、極力外出は控え、テレビのマラソン中継を見るしかない。
レースは日本人選手だけの争いとなり、赤羽が伊藤をふりきって初優勝した。
何週間も前から、このレースを中継する関西テレビは、派手な前宣伝をしていた。
出場選手の今回の目玉は赤羽有紀子選手だった。
例のごとくテレビ局がつけたキャッチフレーズは 「最強のママさんランナー」。
端正な顔立ちで、大人の雰囲気を身につけ、美しいフォームで走る。
しかも、昨年のこの大会では、足の故障でレース後半に、無念のリタイアがあった。
夫であるコーチに、「有紀子、もういい!」 と抱き寄せられ、涙を流した。
その映像が繰り返し流され、「30日、大阪国際女子マラソンをお楽しみに!」
そんな宣伝が、連日にわたり、このチャンネルで流されていた。
それからすれば、赤羽の優勝は、テレビ局としては、してやったり、だろう。
レース後半に外人選手ばかりが先頭で優勝争いをしていたら、視聴率も落ちる。
その点、先頭グループはずっと日本人選手だった。
しかもフィナーレは 「テレビ局推奨」 の赤羽の、マラソン初優勝である。
関西テレビのスタッフたちは、万歳~と歓呼の声を上げたに違いない。
しかし、レースが終わるとすぐに赤羽が仮設スタジオのようなところ招かれたのには驚いた。 たった今ゴールしたばかりじゃないか。 赤羽も勝利の喜びに浸る間も何もないだろう。 あまりに早すぎるし、それにまだまだ上位に属する選手たちがゴールインしている最中だ。 観客席もどよめいているはずだ。 それを何も映さずに、急にシーンとした場所に赤羽が連れてこられて、アナウンサーのありきたりの質問に答える…というような場面を、誰が見たいと思うのか。
僕たちは、次々とゴールする選手たち、そして観客に手を振り感謝の意を表す勝者、ゴールしたランナーたちの喜びや口惜しさのさまざまな表情、そしてファンの声援、そういう光景を見てレースの余韻を楽しみたいのである。 赤羽が終わると次は2位に入った伊藤選手のインタビューが始まり、これまたシーンとした部屋の中での辛気臭いインタビューに、視聴者はつき合わされるのだった。
インタビューは競技場の観客の前でやれば良いのだ。
それに、解説やらゲストやらなんやらと、出てくる人間も多すぎるような気がする。
スポーツを純粋に伝えず、なんとか余分な演出を加えようとする魂胆があさましい。
それと、この大会から、コースが変更された。
これまでのコースは僕も熟知しており、実際に走ったり歩いたりもした。
だから、テレビを見ていても、今どこそこを走っているというのが全部わかった。
そういう楽しみも、このマラソン中継にはあった。
それが一部というか、かなりというか、変更になった。
新聞に新しいコースが出ていたので、それとテレビ画面を見比べる。
ここで右折するのだな、あ、これが玉造筋か、画面右が大阪城で、ここが…おっと、毎年人間ドックを受けているホテルニューオオタニだ。 お、大阪ビジネスパークに入ったぞ…と、選手の走る道の両側の景色を楽しんでいたが、それを邪魔するのがCMである。
つまらないCMが流れている間に、選手たちは僕にとって目印となる場所を通過してしまい、CMが終わると、どこを走っているのかわからなくなる。 新コースを覚えて、そのコースを走ったり歩いたりしようと思っていた僕も、これだけCMで遮られては詳しいコースがわからない。 新聞のコース地図は大雑把だから、細かいところはテレビを見ながら自分の頭の中の大阪地図と照らし合わせてたどるのだが、大阪ビジネスパークあたりがよくわからなかった。
まあ、それだけでなく、CMの途中でレース展開が大きく変わることもたびたびあるので、いくら民放と言ってもあのCMの洪水は何とかならないものか。 現にサッカーは、試合中は絶対にCMが入らないではないか。 マラソンもそれと同じで、休みなく続いている競技である。
マラソン中継はNHKのみとする…というような法律を作ってくれよ、民主党。
…と、文句ばっかり言っているけれど、マラソンファンとして、わかりきったことではあるが、これだけは書いておかなければならない。
優勝した赤羽選手のタイムは2時間26分台で、今夏の陸上世界選手権への出場権を、わずかなタイム差で獲得することができなかった。 しかし昨日の大阪は、わが家の洗濯物まで吹き飛ばされる強風であった。 あんな風の中で走ったタイムとしては立派なものだと思う。 マラソンはタイムではなく、いかに勝つかである。 それぞれ条件の違うマラソンを、一律のタイムで選考基準にすること自体に問題がある。 1位の赤羽、2位の伊藤は大健闘だったと思う。
ただし、世界を相手に戦うとなると、2人とも物足りなさが残る。
有森や高橋のような素晴らしいランナーには、もう二度と出会えないのだろうか。
以上、私の大阪国際女子マラソン観戦記でした。
ほとんどレース内容には触れていませんけど…