小学2年生のモミィは、いま、4つの習い事をしている。月曜日にECCの英語レッスン、水曜日にヤマハのエレクトーンレッスン、金曜日と土曜日の午後にダンス教室、そして土曜日の午前にコスパのスイミング・スクール、という具合だ。それぞれを楽しみながら行っているモミィだが、夏休みに妻が短期美術教室に申し込んで連れて行くと、その影響か、最近は僕に「ねぇ、びじゅつ、ならいたい~」などと言ってくる。だいたい、習い事が好きなのである。
でも、学校の宿題も多い。「本業」の勉強のほうをしっかりやってもらわなければ困る。「ダメ。今やっていることに全力をあげることが大事だから」…と、モミィの要請を却下した僕である。
4つのうち、英語やエレクトーンは、週に一度行って済むというモノではない。家でほぼ毎日予習・復習をしなければ上達は望めないし、クラスのみんなについていけない。だから週1回といっても、家でのレッスンを含むと、相当な時間を費やさなければならない。学校の勉強に関してはすべて妻が見ているが、習い事は僕の担当なので、夕食後、「たまごっちのビデオ見た~い」というモミィの尻を叩いて勉強部屋に連れて行き、エレクトーンを弾かせたり、英会話の練習をさせたりしている。習っている本人は楽しんでいるけれど、付き添っているこちらはかなりのエネルギーを消耗する。妻のほうも同様である。
まあ、モミィの習い事に関してはそんなことなんですが…
先週、妻が「こういうの、どうかな?」と新聞に挟まれていた1枚のチラシを僕に見せた。「体操クラブ体験コースのご案内」というものだった。お隣の市に、オリンピック選手も輩出させている評判の高い体操クラブがあることは知っていた。妻が見せてくれたチラシには、11月末から12月にかけて、週1回、全3回の体験コースがあるので、一度試してみませんか…という宣伝文句であった。
モミィは小さいときから怖がりで、運動がまるでダメな子だった。3歳ぐらいのとき、妻が、当時近所に暮らしていたモミィのママに、この体操教室に通わせたらどう?と言ったことがあったそうだ。でもママは「怪我でもしたら大変だし、女の子だから別に運動ができなくても…」と答えたという。
モミィは今でも体育の授業で飛箱や鉄棒が全然できない。お友達は、飛箱を何段飛んだとか、鉄棒で逆上がりを何回連続したとか、雲梯(うんてい→長いはしごに両手で懸垂して渡る遊具)を何度も渡れるとか、女の子でも運動能力に優れている子が沢山いる。しかしモミィは…本を読むのが大好きで、運動も、習っているダンスならそれなりに踊れるのだが、学校の体育の授業で行う鉄棒や飛び箱などは全くダメなのだ。自分でも「わたし、飛箱とか鉄棒がぜんぜんあかんねんで」と他人事のように話すモミィなのである(自慢するなよ)。とにかく運動能力が他の子より劣っていることは、以前から気になっていたところである。
その体操クラブにはいろんなコースがあって、妻が体験コースとして選んだのは「器械体操初級コース(小学生以上の児童)」というものだった。「これ、モミィにどうかしら?」と妻が言うので、僕はそのクラブに電話をした。そのコースは毎週木曜日の午後5時から6時までということだったので、これは好都合だと思った。他の習い事の関係上、空いているのは火曜日と木曜日だけだったから。「では、その木曜日の分、お願いします」と申し込んだ。
そういう経過で、全3回の体験コースの第1回目が、昨日の木曜日の5時からあった。古い体育館のような建物に、若い男女7、8人のスタッフがいて、子どもたちの数も圧倒的に多い。ちょうど4時から5時の部の子どもたちが練習していた時で、館内は活気に満ちていた。
そして5時からの部がはじまった。みんなお揃いのユニフォームを着ている中で、「体験」として参加しているモミィだけ別の服装をしているので、見ていてもよくわかった。準備体操をし、柔軟体操をし、柔らかくて大きなボールを使ってドッジボールによく似たゲームでキャアキャア言いながら楽しんだ後、子供たちはレベル別の3つのグループに分れて、器械体操が始まった。初級のモミィは鉄棒コースだった。他の小さい子供たちが楽々と逆上がりをする中、モミィはスタッフのお兄さんやお姉さんから身体を抱えてもらって「よいしょっ」と回っていた。それを見て、これはやはり3回の体験だけで済ますわけにはいかないな~…と、思った次第である。
帰宅すると、モミィは今日の体験がすっかり気に入ったようで、「体操、ならいた~い。ならいた~い」と僕にすり寄ってくるのである。「まぁまだ2回あるし考えとくわ」と僕。「あしたから学校の鉄棒で猛練習するわ。だから次のとき、ちょっとでも上手にできたら、ならってもいい?」などと言う。「考えとくから」と僕は同じ答えを繰り返すだけだったが、モミィのいない時、妻に「あれだったら、習わせる値打ちはあるだろね」と伝えた。妻も笑顔で頷いていた。
でも、それはまだモミィには内緒である。学校で積極的に鉄棒の練習をすると言ったのだから「来週の木曜日、少しだけでも進歩していたら考えてもいいよ」とだけ伝えている。「よっしゃ、がんばるわ~」と張り切るモミィであった。
またモミィに付き添う習い事が、ひとつ増えそうである。
みんなで準備体操。 最前列で一人服装が違うのがモミィです。
なんだかモミィだけが、へっぴり腰ですけど…(笑)。