鈴木の「窓に西陽が激しく当たる部屋」melow

メジャーとマイナーの漂流者・鈴木。
常に両極を嗜好するわたくしの徒然ブロ&グー。

掃除婦は…見た!

2007年02月11日 | 【鈴木の部屋】
通勤電車のはしっこで、地味に舞台の台本をヨミヨミしている最近の鈴木。
そんなある日の帰宅時に起きた事件のお話をしよう。

地元駅近くで急行から各停に乗り換えるため途中下車した鈴木。ホームを吹き抜ける風に寒気を催し、各停が来るまでの間に駅ビルのお手洗いに立ち寄った。
駅ビルは閉店時間。
店に網を掛け始めている店舗もちらほら。
そんな中、「二階の方がきれい」というプチ知識をもった鈴木はわざわざ二階のお手洗いを目指す。さすがは地元である。
広いお手洗いエリアは左に長い造りになっていて、手前の洗面エリアの正面と右側に、ばばん!と鏡が張られている。明るい。
その前で、女の子が一人「早くでないと」とばかりにお化粧を直している他、フロアにいたお客さんももうはけきってしまったようで、「蛍の光」もフェードアウト寸前である。
閉店後のデパートの、誰~もいないお手洗い…。
1人大好き・鈴木はマイペースに用を足し(書かなくてよいのにいつも書いてしまう)個室から出ると見事にひとっこひとりいなくなっていた。
鈴木にとってそれはまさに「トイレ・マイルーム」とでも言えるラグジュアリー空間…(言い過ぎ)!
ま、是非TOTOのCMに使っていただきたい感じだ(パクリ)。

さ、そんな警戒心がゼロを下回る状態で手を洗い終えた鈴木。
広いスペースに大きな鏡、照明の明るさに何かひらめいたようで、おもむろに鏡に向かい姿勢を正して、
…自主練を始めた。
台本を読みながら想像していた動きの数々を、なんとトイレで実践に入ったのである。

知らない方の為に書いておくと、うちの劇団は普通じゃ有り得ない大げさな動きをモットーとしており、観ようによっちゃかなりのコント。
鈴木は閉店後の駅ビルの、しかもひろーいトイレの鏡の前でただ1人、そんな激しくもアツい動きの練習をしていた。
トライしてはダメ出しもした。
もちろんこれも1人だ。
電車の時間などもはや忘却の彼方、ここがどこの駅なのかも意識が飛んでおり、見えているのは自分だけ。
もしもこの場に「M.Cハマー」がいたならば、私に向かって「ユー・キャント・タッチ・ディス」を熱唱いただけたろう…。
余談だが鈴木の今の目覚ましうたは、何を隠そうこの曲である(笑)

…話がそれてしまった。
引き続き自主練をエスカレートさせていった鈴木だが、この時このような「人に見られたらやばい行為」をするなら絶対に気をつけなきゃいけないコーナーに侵入していたことに全く気づくいていなかった。
そのコーナーとは、簡単に言うと
「死角だと思ってたらあれれ!何故かこの位置からだと丸見え!」
的な、要は「無防備なエリア」のことである。
今回のデッドスポットは入口右の鏡の前。しかもかなりの猫の額。
だがひとたびそこに立ったなら、鏡越しに外の通路が丸見えど、ということは逆もまた然りで、「通路からも丸見え」なのだから大変だ。
そんなエリアに珍入しながら鈴木は危険なほどに練習に集中。危険中の危険である!
そんな時に限って事もあろうに過去最高に激しいポーズを取ってしまった鈴木であるが…
その瞬間、鏡越しの鈴木の視界に突如黒い影がパッ!と現れビクッ!っとして止まったのだ…!
「ギョッ!」
我に返った鈴木は即座に後方に飛びすさりデッドスポットから退避したが…時すでに遅し!
「…み、見られたっ!」
鏡越しに目撃された鈴木たるや「!?」と表現するに相応しい奇人ぶり。
腕をワイ字に振り上げ、腰をひねって足クロス。おまけに「オ行」を発する口の形で眼力鋭く鏡目線。格好たるやマツケンサンバの振り付け師・真島さんばり。なのに身なりはバリバリのOL風。
我ながら人を錯乱させる統一感のなさである!
鈴木は

「し…シマターッ、見られターッ!!」
っと、飛びすさった死角で完全に固まった。忍者のように息をひそめた。
まるで入浴シーンを覗かれてしまった婦女子のように心が乱れていた…!
しかし、このまま固まり続け、掃除婦と思われるその人物が先に入ってきてしまったら!それはそれで余りにもお恥ずかしい!
瞬時にそう判断した鈴木は、攻めに入る決意をした。
ちなみにここで言う「攻め」
とはすなわち
「逃げる」
に相違なく、こちらの動向を伺ったまま動きを見せない壁の向こうの人物に対して、大芝居を打って出たのだ。
ここで重要なのは、如何に何事もなかったかのようにトイレを出るかにかかっている!
そう勝手に攻めの方針を決めた鈴木は、即座にモードをOLに変更し、「せいやっ」とばかりについにトイレから飛び出した!
やはり、そこに確かにいた人物は掃除のバイトと見られる女の子。
おおきなゴミラックの端を両手でつかみながら、予想通り固まっていたのだろう。
ついに出てきたトイレの中の不振人物(私)が驚いたことに「すいません」
とスマートに言い残し、狭い通路をすり抜けていったのを見て彼女はきっと錯乱したであろう。
ハイテンションな姿を鏡越しに目撃されハッ!とおののき鏡から退避、まるで別人が如く颯爽とトイレからでていくまで、その間わずか10秒ほど…。
掃除婦の感覚からしてみれば、それは京劇の早変わりに等しい変貌ぶりであったろうと、閉店した駅ビルから逃げるように走り出ながら、鈴木はちょっと笑ってしまいましたとさ。
鏡には注意したいものである。