納豆を食べると心筋梗塞などのリスクが低下 糖尿病の食事に
発酵性大豆食品をよく食べている人では、総死亡リスクが低いことが、国立がん研究センターなどが実施している多目的コホート「JPHC研究」で明らかになった。研究成果は医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル(BMJ)」に発表された。 植物性食品の代表ともいえる大豆を食べる食事スタイルは健康的と注目されている。大豆にはタンパク質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンなどのさまざまな栄養成分が含まれる。とくに納豆や味噌といった発酵性大豆食品は、加工中のこれらの成分の消失が少ない。
大豆食品には血圧・体重・血中脂質などを下げる効果があるという報告がある。一方で、大豆食品と死亡リスクの関連について、これまでの研究でさまざまな結果が出ている。そこで研究チームは、多目的コホート研究で、大豆食品や発酵性大豆食品の摂取量と死亡リスクとの関連について調査した。
その結果、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多いほど、死亡全体(総死亡)のリスクの低下していた。
さらに、大豆食品のうち納豆、味噌、豆腐について死亡リスクとの関連をみたところ、女性では納豆や味噌の摂取量が多いほど死亡リスクが低下していた。豆腐については男女ともに低下の傾向はみられなかった。
循環器疾患については、男女ともに納豆の摂取量が多いほど死亡リスクが低下した。がんについては、総大豆食品、発酵性大豆食品などの摂取量と死亡リスクの関連はみられなかった。
今回の研究で、総大豆食品摂取量と死亡リスクとの関連がみられなかったものの、発酵性大豆食品の摂取量が多いと死亡リスクが下がることが明らかになった。また、納豆の摂取量が多いほど循環器疾患による死亡リスクが低いことも分かった。
納豆などの発酵性⼤⾖⾷品を1⽇におよそ50g食べている人では、ほとんど食べない人にに比べ、死亡リスクは約10%減少した。50gは納⾖1パック程度だ。
「JPHC研究」の以前の調査では、エネルギーに対する植物性タンパク質の割合が多いほど、総死亡・循環器疾患死亡のリスクが低いことが明らかになっている。大豆は植物性タンパク質の主な摂取源であり、とくに納豆などの発酵性大豆食品は、加工中の栄養成分の消失が少なく、効果的である可能性がある。
日本食の特徴のひとつは大豆をよく食べること。日本的な食事スタイルが日本人の長寿の要因になっている可能性がある。
とくに納豆は、糖尿病や高血圧、脂質異常症の食事療法にも活用したい食品だ。納豆は、煮大豆を納豆菌が発酵させることでできる食品で、この発酵過程で「ナットウキナーゼ」をはじめとするさまざまな栄養素が生成される。
ナットウキナーゼは、納豆のネバネバ部分に含まれるタンパク質分解酵素で、血栓の主成分であるフィブリンに働きかけて分解する作用や、血栓を溶けにくくする物質を分解する作用などがある。
納豆には良質な植物性タンパク質が含まれ、1パック(50g)のカロリーは100kcalと低カロリーだ。カルシウムは45mg、カリウムは330mg、食物繊維は3.3g、それぞれ含まれる。骨タンパク質の働きや骨形成を促進するビタミンKも含まれる。
また、納豆などの大豆食品に含まれる「イソフラボン」についても、骨粗鬆症の予防や脂質代謝の改善などに有効であるという報告がある。