現代は「VUCA」の時代だといわれています。
VUCAとは、
Volatility(不安定)
Uncertainty(不確実)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
の頭文字を合わせた造語で、元々は軍事用語として使われていたようですが、ここ数年、欧米では社会経済環境をこの言葉で表現することが多くなっています。
こうした難しい社会経済環境の中で、企業は持続的な成長と、価値創造活動たるイノベーションを起こしてゆく事が求められています。 それを実現してゆくには、健全な組織社会の構築と運営を最適化した「場」つくりの洗練性が問われています。
事業戦略や人財戦略、そして財務戦略も重要ですが、筋肉質の組織社会を維持向上してゆくのに不可欠な戦略は、「場」の戦略であり、この領域を管轄する総務部門が担う「戦略総務」あるいは「経営総務」の品質を高めることが企業にとって重要になっています。
『「場」つくり経営』概念は、組織で働く多様な「個」の力を引出し、個と個を繋ぎながらチーム力を高め、縦割り組織風土を風通しの良い組織体に改善する事、更には、組織外の社会知を組織内に誘引してゆくプラットホームを創り、企業活動力を高めてゆくスパイラル経営です。
一部の企業トップマネジメントや人事エグゼクティブが唱える「人事戦略」に 『「優秀な人材」を採用・登用し、「低パフォーマンス人材」は新陳代謝する事で組織を強くする』... 的な趣旨の発言を見聞きします。
こうした経営側の意識は、組織を傷める事になりかねません。少なくとも、低パフォーマーとされた社員を 機械的に「歯車」交換するような制度と経営姿勢を持つ組織は、価値創造の主体である「人財」から「信頼」を得る事は出来ません。
人間には様々な能力があります。
能力レベルは様々ですが、それも個性です。
私は、組織に於いて「優秀」か「平凡」を価値尺度とし、社員を、あたかも組織の歯車や駒の如く「物扱い」する「人材戦略」には疑問を感じます。
かくある私自身、嘗て社長職を担っていた時期には、意識の中で「事業の成果」を優先し、この様な対応をしていた自分事への猛省から思う次第。
今年の3月まで、約10年にわたりエンタテインメント企業の総務部長を担わせてもらったた経験から、今私が考える「場」つくり経営とは、
『低パフォーマーとされた社員であれ「組織の宝」!人気大企業であればあるほど難関の入社試験を突破してきた力を持っている人財である筈』
と考え、何故パフォーマンスが上がらないかの原因や本人の意識を徹底的にコミュニケートする事で、本人の意識改革を促し、高いパフォーマンスを出せる「人財」に変貌してゆく支援をするのが「人が育つ」『場』つくり経営!
私は、「人財戦略」とは、組織で働く人たちの「想い」を汲みしながら「場」の価値創造支援を行うものだと思っています。
一般的には「人財」戦略を考えて実践してゆく組織は人事部門、と考えられていますが、総務部門も「人財」戦略を所管する部門の一つであるべき!です。
その理由は、「場」つくりを担う部門であるからです。
総務部門は「場」つくりに於いて、能力差のある人間集団を「価値創造組織」に変質させて、全ての社職員を誰一人としてドロップアウトさせないSDGs的経営を支える「人財」戦略部門でもあります。
人を創る「場」をプロデュースする総務部門は、オペレーション、管理業務、そして「人が育つ」場つくりをも担う戦略部門として、「組織の萬屋プロ」でなくてはならない時代になっています。