第3部 未知への挑戦(11) 低減への模索 無駄になった「原木」
「こんなに無駄になってしまった」
県原木椎茸生産者の会の会長を務める国分進(61)は22日、本宮市の自宅敷地のビニールハウス内に保管していたシイタケ栽培用の原木を見詰めた。東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質濃度の基準である1キロ当たりご50ベクレルを超え、使用や流通を制限された原木だ。約7000本に上る。廃棄するため、黒いビニールシートを外して運び出し、トラックの荷台に積み込んだ。
原発事故前の平成22年の本県の原木生シイタケの生産量は約775トンで、全国5位を誇っていた。濃厚な味わいの本県産は全国でも高い評価を受けていた。だが、放射性物質の影響で状況は一変する。原発事故後の23年の生産量は、半分以下の約361トンに激減した。
■ ■
特に影響を受けたのは、露地シイタケだった。菌を植え込んだ「ほだ木」と呼ばれる木を外に置いて栽培する。23年4月、県内各地で食品衛生法の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)=現在は1キロ当たり100ベクレル=を超える放射性セシウムが検出された。
政府は4月13日に伊達市や相馬市など16市町村に出荷停止を指示した。今も福島市や本宮市などの中通りと浜通りを中心に16市町村で出荷制限が続く。
国分も出荷停止に追い込まれた1人だ。露地栽培で年間約400キロの原木乾燥シイタケを生産・出荷していた。現在はハウスで規模を縮小して原木生シイタケを栽培しているが、収入は8割減った。「収入が減ったことよりも、風味の良いシイタケを作れなくなったことが何より悔しい」
■ ■
原発事故前、本県の原木の県外出荷量は全国1位だった。22年は2万7212立方メートル、23年は原発事故の影響が出るまでに2万1287立方メートルを出荷していた。比較的温暖な阿武隈高地の広葉樹は表面付近が柔らかく、シイタケ栽培の原木に適している。しかし、多くが使用制限の基準となる1キロ当たり150ベクレルを超え、流通がほぼ途絶えた。現在、県は24年の出荷量を集計中だが、大幅に減少する見込みだ。
国分も阿武隈高地で伐採された原木を使っていた。入手が困難となり、23年12月、栃木県産の原木約7000本を買い求めた。
だが、24年4月、原木の使用基準が、より厳しい1キロ当たり50ベクレルになった。新たに購入した原木の放射性物質濃度は70ベクレル前後。廃棄せざるを得なくなった。「想定外だった」。国分はため息をつく。
苦しい状況にあるのは国分だけではない。本県産の原木が出回らなくなった影響で、全国的に原木が品薄状態に陥り、確保は容易ではない。比較的空間放射線量が低い地域のシイタケ農家も生産できずにいるのが現状だ。
県きのこ生産組合連合会長の北野徹(60)=西郷村=は「ほとんどの農家が休業するしかなかった」と原木シイタケ農家の窮状を代弁する。「原木から放射性物質を取り除かなければ、再開はできない」。原木の除染が急務だと考えている。
原木の放射性物質を減らす方法はないのか-。その手立てを探っているのが郡山市の県林業研究センターだ。(文中敬称略)
2013/05/24 13:40 福島民報
「こんなに無駄になってしまった」
県原木椎茸生産者の会の会長を務める国分進(61)は22日、本宮市の自宅敷地のビニールハウス内に保管していたシイタケ栽培用の原木を見詰めた。東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質濃度の基準である1キロ当たりご50ベクレルを超え、使用や流通を制限された原木だ。約7000本に上る。廃棄するため、黒いビニールシートを外して運び出し、トラックの荷台に積み込んだ。
原発事故前の平成22年の本県の原木生シイタケの生産量は約775トンで、全国5位を誇っていた。濃厚な味わいの本県産は全国でも高い評価を受けていた。だが、放射性物質の影響で状況は一変する。原発事故後の23年の生産量は、半分以下の約361トンに激減した。
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特に影響を受けたのは、露地シイタケだった。菌を植え込んだ「ほだ木」と呼ばれる木を外に置いて栽培する。23年4月、県内各地で食品衛生法の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)=現在は1キロ当たり100ベクレル=を超える放射性セシウムが検出された。
政府は4月13日に伊達市や相馬市など16市町村に出荷停止を指示した。今も福島市や本宮市などの中通りと浜通りを中心に16市町村で出荷制限が続く。
国分も出荷停止に追い込まれた1人だ。露地栽培で年間約400キロの原木乾燥シイタケを生産・出荷していた。現在はハウスで規模を縮小して原木生シイタケを栽培しているが、収入は8割減った。「収入が減ったことよりも、風味の良いシイタケを作れなくなったことが何より悔しい」
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原発事故前、本県の原木の県外出荷量は全国1位だった。22年は2万7212立方メートル、23年は原発事故の影響が出るまでに2万1287立方メートルを出荷していた。比較的温暖な阿武隈高地の広葉樹は表面付近が柔らかく、シイタケ栽培の原木に適している。しかし、多くが使用制限の基準となる1キロ当たり150ベクレルを超え、流通がほぼ途絶えた。現在、県は24年の出荷量を集計中だが、大幅に減少する見込みだ。
国分も阿武隈高地で伐採された原木を使っていた。入手が困難となり、23年12月、栃木県産の原木約7000本を買い求めた。
だが、24年4月、原木の使用基準が、より厳しい1キロ当たり50ベクレルになった。新たに購入した原木の放射性物質濃度は70ベクレル前後。廃棄せざるを得なくなった。「想定外だった」。国分はため息をつく。
苦しい状況にあるのは国分だけではない。本県産の原木が出回らなくなった影響で、全国的に原木が品薄状態に陥り、確保は容易ではない。比較的空間放射線量が低い地域のシイタケ農家も生産できずにいるのが現状だ。
県きのこ生産組合連合会長の北野徹(60)=西郷村=は「ほとんどの農家が休業するしかなかった」と原木シイタケ農家の窮状を代弁する。「原木から放射性物質を取り除かなければ、再開はできない」。原木の除染が急務だと考えている。
原木の放射性物質を減らす方法はないのか-。その手立てを探っているのが郡山市の県林業研究センターだ。(文中敬称略)
2013/05/24 13:40 福島民報