ギシン星との戦いを終えた地球は、一時の安らぎを得た。
地球を守る為のシステム、各惑星基地が整えられ、地球防衛の最終ラインとして、宇宙ステーション・ケレスも建設された。
タケル達クラッシャー隊もベースをケレスへと移転した。
ケレスから眺める地球は漆黒の宇宙に輝くラピスラズリのように美しく、眺める者の心を捉えて離さない。
ミーティングを終えたクラッシャー隊のメンバーが、地球を臨むカフェテラスで一息いれていた時、そこへキャプテンのケンジがやって来た。
「タケル、済まないがちょっと来てくれ」
「タケル、何か仕出かしたのか?」
などとニヤニヤ冷やかすナオトとアキラに
「違うよ、…多分」
と、自信なさげに反論しながら、タケルはケンジの後をついて行った。
小さな、しかしセキュリティーのしっかりしたミーティングルームにタケルは連れて来られた。
「キャプテン…」
と、タケルが真剣な顔で口を開きかけたところでケンジがフッと微笑んだ。
「タケル、お前の新しい隊員カードが出来た。今日はそれを渡そうと思ってな」
ケンジの言葉にタケルが少し首を傾げ
「新しい、カード…ですか?」
「ああそうだ。今のカードをくれないか?」
ケンジが言うままにタケルは左腕のクラッシャー隊のマークの所からカードと呼ぶには小さなチップを取り出し、ケンジに渡した。
ケンジがチップをレコーダー機に入れると、モニターに表示されたのは、明神タケルと言う名と、隊員ナンバー、そして地球での両親である明神夫妻の名前のみで、他は全てUNKNOWNと表示されていた。
タケルは驚いてケンジの顔を見上げた。
「俺の隊員カードって、何も情報が入っていなかったんですか?」
普段隊員は自分のカード情報すら見ることは出来ない。
初めて自分のカードに自分の情報が一切記載されてないことをタケルは知った。
「ああ、正確な生年月日も生まれた場所も何も判っていなかったからな」
タケルの表情に影が差した。
「もしかして、俺は戸籍も…」
「ああ、戸籍も無かった。地球人と同じように成長するのかどうかも判らなかったからだそうだ」
「…」
タケルがグッと歯を食いしばったのがケンジにも判った。
赤ん坊の時から地球人として生きてきたのに、その証しが全くないと言われたのも同然だからだ。
そしてケンジは、ギシン星との戦いの中で、タケルが一番恐れているのが孤独だと気付いていた。
今、タケルはまた孤独感に襲われているのだろう。
「(あの戦いで、タケルが失ったモノはあまりにも多すぎたからな…)」
ケンジは一つ息を吐いて、隊員カードのチップを入れ替えた。
そしてモニターをタケルに向けた。
「タケル、これが新しいカードだ」
ケンジの声に、タケルの視線がモニターに落ちる。
「!?」
タケルの表情が一瞬の驚きの後、笑顔へと変わっていった。
「キャプテン…」
新しいカードには
NAME:TAKERU MYOUJIN/MARS of GISHIN
FATHER:TADASHI MYOUJIN/IDEA of GISHIN
MOTHER:SHIZUKO MYOUJIN/AIEDA of GSHIN
BROTHER:MARG of GISHIN
誕生日はギシン星暦を地球暦に変換した日付で、出生地は自宅のあった静岡とギシン星がそれぞれ併記されていた。
「キャプテン!」
「タケル、お前は正式に地球人として認められたんだ。
同時に本来のギシン星人としての情報も加味され、承認された」
「…」
「お前の戸籍も新しく作られた。
残念ながら明神夫妻の実子ではないから、お前だけの戸籍だ。
そして明神夫人との養子縁組もされている。
ギシン星の方でも、お前が実のご両親から引き離された時点で抹消されていたパーソナルIDが、元に戻されたそうだ」
ケンジの言葉に、タケルの瞳が嬉しさのあまりに揺れている。
「俺…やっと地に足が着いた気がします」
タケルの喜ぶ様にケンジも自然と微笑みが浮かぶ。
「良かったな、タケル」
ケンジが手を伸ばし、タケルの頭をクシャと撫でた。
「はい!有難うございます!」
「タケル、お前が地球人として地球の為に必死に戦った、その事への地球からの感謝だ。
同時に生まれた星の事も忘れないで欲しいと言う願いもな」
ケンジが機器からチップを取り出し、タケルに手渡す。
それを両手でそっと受け取り、タケルはチップを制服の左腕に大事そうに収めた。
「用件は以上だ」
ケンジの声にタケルは椅子から立ち上がり、姿勢を正した。
「はいっ!明神タケル、失礼します!」
と、踵を返してタケルは部屋を出た。
ケンジはタケルの古いチップを手のひらに乗せて見つめた。
『飛鳥さん、約束ですよ!』
10年にもなろうとする、あの日の事を思い出す。
「(本当に一緒に宇宙に行けたな。苦しい戦いだったが)」
ケンジは小さく微笑むとチップを手にして部屋を出た。
このチップは最重要機密として処分される。
タケルの辛く苦しかった日々の記憶と共に。
**********************************************
あとがき
これ、携帯のメールでポチポチと書きました。
一晩で(爆)
実は先日のpromessa-約束-の続きになっていて、そっちも、携帯で一晩で書いたんですよねー(苦笑)
タケルが9歳の時のケンジとの約束は叶えられました。
自分の母星との戦いという、悲しい形ではありましたが。
本編でナオトがタケルの隊員カードを調べた下りがありますが、
ナオトでもかなりのハッキング能力があるってことですね。
そういうのはアキラの専門かと思っていましたが、やはりクラッシャー隊はエリートかと。
タケルが頭が良いというのは、イデアさんの息子と言う事でまあ文句無し。
ただ、兄さんと違って天然が入ってるのがタケルなのよねorz
でも、隊員カードがUNKNOWNしか書かれてなかったと知ったタケルはショックだったでしょうね。
自分の今までの誕生日だって嘘だったわけですから。
そんなわけで、タケルにきちんとした隊員カードを作ってあげたくて、この話を書きました。
ギシン星との戦いが終わった後というのが、一番タイミングが良さそうで、そうしたらケンジからタケルへ渡すという、2人の繋がりも書けますので。
あ、英語のofの使い方、これで合ってるのか判らないまま書いてます。
旅先での英会話なら、なんとかなっても、いざ文章にすると副詞だとか接続詞だとかなんだとか訳判らなくなっちゃいますんで。
間違ってたらこっそり教えて下さい(笑)
最近すっかりケンジ&タケルにハマっておりますw
いつまでこのブームが続くかは不明です。
書きかけのも幾つかあるんですが、暗かったり、Rがついたりwなので、しばらくは放置かな。
2本連続でアップしたので、ちょっとGMは一休みします。
(今日、ニュータイプエースを読んで、ヤマト2199が自分の中で高まってきたので)
携帯メールでSS書くの、結構便利かもしんない( ̄▽ ̄)
地球を守る為のシステム、各惑星基地が整えられ、地球防衛の最終ラインとして、宇宙ステーション・ケレスも建設された。
タケル達クラッシャー隊もベースをケレスへと移転した。
ケレスから眺める地球は漆黒の宇宙に輝くラピスラズリのように美しく、眺める者の心を捉えて離さない。
ミーティングを終えたクラッシャー隊のメンバーが、地球を臨むカフェテラスで一息いれていた時、そこへキャプテンのケンジがやって来た。
「タケル、済まないがちょっと来てくれ」
「タケル、何か仕出かしたのか?」
などとニヤニヤ冷やかすナオトとアキラに
「違うよ、…多分」
と、自信なさげに反論しながら、タケルはケンジの後をついて行った。
小さな、しかしセキュリティーのしっかりしたミーティングルームにタケルは連れて来られた。
「キャプテン…」
と、タケルが真剣な顔で口を開きかけたところでケンジがフッと微笑んだ。
「タケル、お前の新しい隊員カードが出来た。今日はそれを渡そうと思ってな」
ケンジの言葉にタケルが少し首を傾げ
「新しい、カード…ですか?」
「ああそうだ。今のカードをくれないか?」
ケンジが言うままにタケルは左腕のクラッシャー隊のマークの所からカードと呼ぶには小さなチップを取り出し、ケンジに渡した。
ケンジがチップをレコーダー機に入れると、モニターに表示されたのは、明神タケルと言う名と、隊員ナンバー、そして地球での両親である明神夫妻の名前のみで、他は全てUNKNOWNと表示されていた。
タケルは驚いてケンジの顔を見上げた。
「俺の隊員カードって、何も情報が入っていなかったんですか?」
普段隊員は自分のカード情報すら見ることは出来ない。
初めて自分のカードに自分の情報が一切記載されてないことをタケルは知った。
「ああ、正確な生年月日も生まれた場所も何も判っていなかったからな」
タケルの表情に影が差した。
「もしかして、俺は戸籍も…」
「ああ、戸籍も無かった。地球人と同じように成長するのかどうかも判らなかったからだそうだ」
「…」
タケルがグッと歯を食いしばったのがケンジにも判った。
赤ん坊の時から地球人として生きてきたのに、その証しが全くないと言われたのも同然だからだ。
そしてケンジは、ギシン星との戦いの中で、タケルが一番恐れているのが孤独だと気付いていた。
今、タケルはまた孤独感に襲われているのだろう。
「(あの戦いで、タケルが失ったモノはあまりにも多すぎたからな…)」
ケンジは一つ息を吐いて、隊員カードのチップを入れ替えた。
そしてモニターをタケルに向けた。
「タケル、これが新しいカードだ」
ケンジの声に、タケルの視線がモニターに落ちる。
「!?」
タケルの表情が一瞬の驚きの後、笑顔へと変わっていった。
「キャプテン…」
新しいカードには
NAME:TAKERU MYOUJIN/MARS of GISHIN
FATHER:TADASHI MYOUJIN/IDEA of GISHIN
MOTHER:SHIZUKO MYOUJIN/AIEDA of GSHIN
BROTHER:MARG of GISHIN
誕生日はギシン星暦を地球暦に変換した日付で、出生地は自宅のあった静岡とギシン星がそれぞれ併記されていた。
「キャプテン!」
「タケル、お前は正式に地球人として認められたんだ。
同時に本来のギシン星人としての情報も加味され、承認された」
「…」
「お前の戸籍も新しく作られた。
残念ながら明神夫妻の実子ではないから、お前だけの戸籍だ。
そして明神夫人との養子縁組もされている。
ギシン星の方でも、お前が実のご両親から引き離された時点で抹消されていたパーソナルIDが、元に戻されたそうだ」
ケンジの言葉に、タケルの瞳が嬉しさのあまりに揺れている。
「俺…やっと地に足が着いた気がします」
タケルの喜ぶ様にケンジも自然と微笑みが浮かぶ。
「良かったな、タケル」
ケンジが手を伸ばし、タケルの頭をクシャと撫でた。
「はい!有難うございます!」
「タケル、お前が地球人として地球の為に必死に戦った、その事への地球からの感謝だ。
同時に生まれた星の事も忘れないで欲しいと言う願いもな」
ケンジが機器からチップを取り出し、タケルに手渡す。
それを両手でそっと受け取り、タケルはチップを制服の左腕に大事そうに収めた。
「用件は以上だ」
ケンジの声にタケルは椅子から立ち上がり、姿勢を正した。
「はいっ!明神タケル、失礼します!」
と、踵を返してタケルは部屋を出た。
ケンジはタケルの古いチップを手のひらに乗せて見つめた。
『飛鳥さん、約束ですよ!』
10年にもなろうとする、あの日の事を思い出す。
「(本当に一緒に宇宙に行けたな。苦しい戦いだったが)」
ケンジは小さく微笑むとチップを手にして部屋を出た。
このチップは最重要機密として処分される。
タケルの辛く苦しかった日々の記憶と共に。
**********************************************
あとがき
これ、携帯のメールでポチポチと書きました。
一晩で(爆)
実は先日のpromessa-約束-の続きになっていて、そっちも、携帯で一晩で書いたんですよねー(苦笑)
タケルが9歳の時のケンジとの約束は叶えられました。
自分の母星との戦いという、悲しい形ではありましたが。
本編でナオトがタケルの隊員カードを調べた下りがありますが、
ナオトでもかなりのハッキング能力があるってことですね。
そういうのはアキラの専門かと思っていましたが、やはりクラッシャー隊はエリートかと。
タケルが頭が良いというのは、イデアさんの息子と言う事でまあ文句無し。
ただ、兄さんと違って天然が入ってるのがタケルなのよねorz
でも、隊員カードがUNKNOWNしか書かれてなかったと知ったタケルはショックだったでしょうね。
自分の今までの誕生日だって嘘だったわけですから。
そんなわけで、タケルにきちんとした隊員カードを作ってあげたくて、この話を書きました。
ギシン星との戦いが終わった後というのが、一番タイミングが良さそうで、そうしたらケンジからタケルへ渡すという、2人の繋がりも書けますので。
あ、英語のofの使い方、これで合ってるのか判らないまま書いてます。
旅先での英会話なら、なんとかなっても、いざ文章にすると副詞だとか接続詞だとかなんだとか訳判らなくなっちゃいますんで。
間違ってたらこっそり教えて下さい(笑)
最近すっかりケンジ&タケルにハマっておりますw
いつまでこのブームが続くかは不明です。
書きかけのも幾つかあるんですが、暗かったり、Rがついたりwなので、しばらくは放置かな。
2本連続でアップしたので、ちょっとGMは一休みします。
(今日、ニュータイプエースを読んで、ヤマト2199が自分の中で高まってきたので)
携帯メールでSS書くの、結構便利かもしんない( ̄▽ ̄)