親子eighterはじめました。~母はなにわ男子も嗜みはじめました。~

AmBitiousも応援中!真弓のタケ垣にタケ立て掛けたのはタケ立て掛けたかったからタケ立て掛けたのです。

21年6月18日 夜への長い旅路 感想 ー家族という呪いー

2021-06-20 11:01:50 | NaNaによるレポ

※この記事は舞台『夜への長い旅路』のネタバレを含みます。※

















舞台の上部を重たく覆う大きな布がこれから始まる物語の不穏さを表しているのだろうか。

大きく、そして不気味な布は、波のように登場人物らの感情の起伏合わせてうごめき、観客に不安感を与えてくる。

これは、海辺に立つ別荘で起きる一家の長い一日を描いた物語だ。

物語の冒頭では、仲睦まじい夫婦の会話や信頼し合っている兄弟の絆をわかりやすく見せつけてくるが、どうも言葉の裏側に暗い影が見え隠れする。

家族はそれぞれに秘密を抱えている。

成功者として知られる父は俳優としてトラウマを抱えながら生きていたが成功したこときっかけに外面がよくなり家庭を顧みず、その結果、妻を薬物依存に陥らせてしまう。

そして気立てが良く優美な母は、敬虔なクリスチャンであり若き日はピアニストを目指していたが夫と出会ったことで夢を諦め、俳優の妻として支え続けてきた。しかし夫の旅巡業の付き添いに行った際に第2子をなくす。その予後がよくなく、医者から処方された薬物に傾倒していく。

要領のよい兄は、両親が体の弱い弟に愛情を注いでいることから愛を渇望し酒と女に溺れる日々を過ごす。第二子がなくなったしまった原因でもある。

弟は、過去に船乗りとして航海をしていた。長引く夏風邪の正体が結核であることを自覚しており、静かに絶望していく。

このような英語の本を翻訳した内容の演劇は初めて観たかもしれない。長ったらしいセリフの掛け合いが永遠と続く。爆発しそうでしない風船をずっと見ているような胸騒ぎを覚えた。

この作品は劇作家ユージン・オニールが、自身の家族の凄惨な姿を描いた自伝劇であるから、もしかしたら何を伝えたかったとか、そういうメッセージを読み解こうとするのは野暮かもしれない。ただ、そういう人生の人が居たことを知ることで何か考える人がいればいいな、くらいの気持ちかもしれない。(そんな軽くはないかw ノーベル賞とか獲ってるし。)

私は信仰心と依存というテーマでこの物語を理解しようとした。

そう思うとこの物語の主人公は母親になってくる。母親が女学生の頃は、毎日お祈りをささげていてシスターに憧れていたが、夫に出会ったことで恋に落ち、神と結婚するのはやめてしがない役者の妻になる。いざ憧れの俳優の妻になってみたら汚い安宿を転々とし、夜の街で豪遊する夫の帰りを待ち続けながら出産、育児をしなければならなかった。

疲れ果て、夢も諦め、友達もいない、夢中になれるものもない母は薬物しかよりどころがなかったのだろう。信心深い人だったからこそ、より一層依存を深めていったと思う。

一家は、家族という呪いから逃れることはできなかった。家族だから許さなくては。家族だから信じなくては。家族だから愛さなくては。彼らは、健全な家族で居なくてはならないと信じ、安らげる家族であることに依存したかったんだろう。

****

夜への長い旅路(Long Day's Journey Into Night )って、どういう気持ちでつけたタイトルなんだろうか。この家族見てるともうずっと夜って感じの鬱蒼とした感じに見えたけれど。旅だからきっといいこともあったのかな。寄り道したり、迷ったりしても、また安心して眠れる夜が来たのかな。そうだといいよね。

演技的な面で言うと大竹しのぶさんが圧巻でした。生きているうちに大竹さんの演劇を観る事ができて本当にうれしかった。

すべての言葉に表情が有って、たとえ表情が見えない場所にいたとしても声で気持ちがわかる、伝わる。最後のほうは気がおかしくなってしまう演技があるのですけど鳥肌立つほどうまい。鬼気迫ってきて、思わず息をのんで夢中になってみてしまいました。


大倉くんは本当にいい声ですね。たぶんオニールのほんとのお兄さんはろくでなしの酒飲みだったと思うので、それにしては美しすぎたような気もします。声もかっこよすぎるし(2回目)身長も高くて顔も小さくて。知ってるワイフでのふがいない主人公役も素晴らしかったですが、また経験豊富な舞台俳優の皆さんと共に演じることで、さらなる成長を遂げることでしょうね。


演劇は奥が深いですね。とてもわくわくします。私は文章を書くことも大好きですけれど、もしもまた大学に行けるとしたら、演劇を学んでもいいな、演劇をやってみたいな、なーんて、ぼんやり思うNaNaなのでした。

このブログを通して出会った方に久々にお会いできたのも嬉しくて、なんだか感慨深いものがありました。おそらく中学生くらいの時に初めてお会いしたのだと思いますから、ほんとに時がたつのは早うござんすね。

ちなみに写真はこのあいだ見つけた、ロバート秋山さんに似ている仏様です。みなさまよい1日でありますように。

それでは、ごきげんよう。