尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

2006年12月08日 10時59分45秒 | 詩の習作
私は石組みの
高い塔である
屹立のその角度は
蛇でさえそりかえり
銀の腹を光らせ
神が投げた棒のように落ちていく

至上の楽しみは
頂上の物見から
前をたゆたう川の
山の方の始めと
海の方の終わりを
幾度も目で辿り目眩することだ
わき起こる不思議な郷愁は
このような超人の人生を
かつて私は生きたこともあるのだろう
しかし今
私は朝霧の多い
石組みの塔である

霧が晴れれば
この孤立の角度に
旅人が頭と背をあずけ
その来歴の 筋のない 寂しい
青い天を仰ぐことがある
そのために
影のような人の形の
石のくぼみもできはじめたが
緑色の蛇が落ちてきて
爬虫類と人類の
二つの悲鳴が木霊し
私の追えない小さな旅が
ふたたび始まるのだ
蛇も人もそれぞれの
記憶の海を探す川である

コメント (2)
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