plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

ポール・マッカートニー on ドラムス!

2006年07月04日 | 音楽
目当てのテレビ番組を見たあとチャンネルを切り替えていたら、アコースティックギターを抱えたポール・マッカートニーが写った。どうやら最近BBCが制作した番組らしい。

50人くらいは入るんではないかっていう広いレコーディングスタジオに集まった観客の前で、ソロ・パフォーマンス。どちらかというと話しが多かったかな?途中から見たので良く分かりません。会場もひょっとしたらスタジオではなくて多目的小ホールみたいなものだったかも。

それはさておき、番組ではビートルズやウィングス時代の曲を一部分ずつ披露していた。会場には様々な楽器や録音機材があり、有名な曲を録音した時に使ったものをチョロっと弾いたり使ったりして再現していた。例えば、ビートルズの「ストロベリー・フィールド」のイントロ(あのフルートみたいな音色ですね)をメロトロンを使って、とか。

また再現だけでなく、往年の曲を全く違うアレンジで歌ってもいた。例えば元々8ビートの「レディーマドンナ」は、ゆっくりしたシャッフルフィールのピアノを弾きながら、同じメロディーを印象を変えて歌った。

作曲時の裏話みたいのもしていた。その中で印象的だったのが個性的なギターが有名な「ブラックバード」のくだり。デビュー前に友達とバッハの曲を練習していた時、間違えて偶然できたコード進行が後々まで頭にこびりついていたそうで。その思い出からできた歌を一つ歌った後、ブラックバードをレコードと同じ調子で歌った。

テレビ画面にはしっかりドラムセットが写っていたので期待してたら、最後の最後でやってくれました、ワンマン多重録音。まず最初にドラムを叩いた。ギターやベースは左利きなのにドラムは右利きだったのは意外だったけれど、安定したビートは予想していた通りだった。

歌を知り尽くしている人が叩くドラムビートは、ただそれだけ聴いてもノリが出る。そしてなんだか色々な歌が聴こえてくる。そんなノリを出すってのが単純作業なだけにかえって難しい。結局一つ一つの歌に最適なノリを出せ、細かいテクニックを歌を引き立たせる最適なポイントでサクっと発揮できると売れっ子ドラマーになれます。

ポール・マッカートニーは専業ドラマーではないから、細かいテクニックどころか基本テクニックすら、どうかねぇ?て感じだが、番組で叩いたドラムビートはまぁまぁカッコ良かった。

少しマニアックですが、そのドラムビートは一般的には8ビートと呼ばれ、ロックビートの定番。
なんで8ビートと呼ぶか?音楽用語では、真っ先に感じられる拍を4分音符と言い、それを半分にしたのが8分音符。英語では8th note、それが核となっているドラムビートを8th-note feel/beatと言う。8ビートの他に8分音符を更に半分にした16ビートというのもある。4ビートもあるけど、これはジャズのビートのことで英語ではswing feel/beat 、あるいはstraight ahead feel/beatと言う。16ビートや8ビートだったらなんとなく直訳できるけど、4ビート、こればっかりは英語に直訳してquarter-note feel/beat と言っても誰一人として分かってくれない。

閑話休題。ワンマン多重録音でのマッカートニーの8ビートは、前出の8分音符を更に頭の中で3等分し、そのうち一つ目を常に叩き三つ目は時々叩くビートなので、少し跳ねた感じが出ていた。この跳ねた感じを心地よく出すのは、決して簡単でない。

だからポール・マッカートニー、ジョン・レノン、ジョージ・ハリソンがいたバンドでドラムを叩いていたリンゴ・スターって、やっぱりすごいドラマーなんですね。リンゴよりテクニックがあるドラマーなんてこの世に腐る程いるけど、ビートルズの名曲を聴けばわかるように、彼程歌にしっくりきてノリを出せるドラマーはそういない。ロックドラムのお手本になった数少ないドラマーの一人。なんだか改めてドラマーの役割について考えてしまいました。