plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

「てやんでぇ!」を聴かずに済んだなってなもんで・・・

2006年08月30日 | アメリカあれこれ
昼間っから夜更けまで、浅草に滞在。連れの知り合いが出場する第26回浅草サンバカーニバルを見物しつつ、仲見世や雷門通りはもちろん、新仲見世通りに伝法院通り、国際通りに言問通り、馬道通りに六区ブロードウェイなどを練り歩くこと数時間。名のある通りだけでなく、何てことはない小道へも、何とはなしに足を運んでみたりして・・・。

東京で育ったのだけれど久しぶりに東京に来た僕と、東京に住んでいるけど久しぶりに浅草に来た連れは、半分江戸っ子で半分外人観光客、みたいな気分になってフラフラと。どこに行っても懐かしいと思えるものと、なんだこれ?知らないよ、ていうものが混在している。

食事で失敗したくない、と二人で選り好みをしていたら昼食のタイミングを失い、しばらく空腹で彷徨う。やっと天丼ということで合意し、しもた屋造りの本店を避け入った別館の名は「大黒屋」。んん、殆ど時代劇だ。ちなみにサンバカーニバルがパレードを開始する地点は菊屋食堂の前で、コース中唯一の90度カーブは電気ブランというカクテルで名を馳せた神谷バーの前。この街では幾層もの時代が色濃く積み重なっている。

タレが天ぷらとご飯に染み込みまくった天丼を食べた後は、六区ブロードウェイへ。のぼりが立ち並ぶ劇場を数軒通り過ぎ、浅草演芸ホールに到着。入場料2,500円を払った時に貰ったパンフレットの表紙には「落語といろもの」という文句が。演目をチェックする間も無く夜の部が始まる。その後4時間弱、ず~とそこで様々な芸を観て、聴いた。落語8、漫談3、漫才1、マジック1、ものまね1、歌謡漫談1、ギタレレ漫談1(頭のてっぺんの髪だけちょこっと輪ゴムでしばり、紅白の寝間着みたいなパンツを着て登場)・・・満喫しました。もうしばらくはいいや。(笑)いや、そんなことはないですよ。

それぞれの芸人の持ち時間は15分前後。様々な演目はもちろん、それぞれの前の芸人がこしらえた雰囲気を自分なりに受け継ぐ様子もおもしろかった。ややしつこく前の演目のギャグを繰り返したり、普通に関係無い話題に持っていったり・・・。こういうのはライブでしか体験できない。

客が全体的に引いていたせいか、残念ながら大爆笑の渦は殆ど起こらなかった。ただ時たま激しく泣くかのように笑っている人はいた。僕と連れもそのクチですけどね。一発強烈ギャグもいいけど、しらける3歩手前くらいの軽いやつでじわじわと攻められ、段々ペースとレベルを上げて畳み掛けられたほうが笑いが長持ちする。上手くそれにハマるとその後しばらくは何を言われても笑ってしまう。

そして芸ではなかったが、この日のメインイベント「禁演落語」についての解説が、面白くてタメになった。解説担当は年配の男性。なんでも落語好きの間では有名な下町生まれの大学教授だそうで、どおりで話し方が上手いはずだ。また、僕はこの時初めて知ったのだけれど、禁演落語とは太平洋戦争中、当時の時局柄に不相応だという理由で、落語家達が自主的にお寺に葬った53演目のこと。

9時に演芸ホールを出たらお腹が空いたので、商店街にある何の変哲もない普通のラーメン屋でワンタン麺を注文する。中身は濃いめの醤油スープに薄~い皮を使ったワンタンと細めの麺とシナチク数キレのみ!刻みネギはスープに予め入っている分だけ!もやしも海苔も、当然背脂も無し!という昔ながらの東京のラーメンを随分久しぶりに食べた。おそらくその店は殆どのグルメ記事やブログには載っていないだろうけど、こういう普通のラーメン屋、好きだな~。そういえば僕らの後から隣に座ったおっさんは、ビールとワンタンのみをサクッと引っ掛けて帰っていった。ありゃ通だね。

その後全国チェーンでは無さげの100円ショップで買い物。名刺入れとか綿棒とかが100円ていうのは分かるが、下着やベルトが100円て一体・・・?それでも買いましたけどね、ベルトを数本。どうせすぐボロボロになるだろうけど。

帰り際、がりがり君をコンビニで買い、店先のガードレールに腰を降ろして食す。コンビニはそれなりに繁盛し、その近辺にはキャメロン・ディアズみたいな人が手ぶらで一人、見るもの全てが不思議!てなオーラを放ちながら彷徨っている。マット・デイモンみたいなバックパッカーもいる。こんな感じで浅草の夜はゆらりゆらりとゆっくり更けていった。