夕 食
そろそろちゃんとしたものを喰いたい。
だがレストランが開くまでにはだいぶ時間がある。
それまで向かいの高島屋で土産を調達しておくことにした。
まずTシャツ。軽くて嵩張らないので自分の分を含めて数枚。
留守の間、犬の世話を頼んだフレイに帽子を。
マングローブ製、木彫りのマンタ。
※マンタが有ったはずだが見当たらないのでコブシメを。ただしパラオで購入した物では無かったような。
あとはグアムでトランジットの際、免税店で調達することにした。
辰也も私と殆ど同様だった。違うところはポルノ土産をしこたま買い込んでことだ。
「そんなもの、どうするんだ?」
「好きな奴がいるんですよ」
「成田の税関で見つかったらどうするんだ?」
「見つかりますか?」
「さあ、なんとも言えない。だが見つかったら非常に恥ずかしい思いをするぞ」
「・・・・・・!」
!辰也がレジでもめている。
「どうした?」
「2$のこれを買って、5$札を出したらおつりを2$しかくれないんですよ」
現地人の女の子を視て静かに、低い声で言った。
「間違えてませんか?」
「・・・・・・」 1$札が出て来た。
・・・・・・
夕闇。
昼食を摂らなかっただけに空腹であった」
「隣に声を掛けて来いよ」
「行ってきます」辰也が飛び出した。だがすぐに帰って来た。
「いませんよ」
「ふられたか?。じゃあもう一組の方(SASとピンク)に声を掛けるか。
しかしこちらも留守であった。
ホテルをでた。向かいの高島屋にフィジーと丸ポチャ。
手を振った。気が付いたようだ。急ぎ足で車道を渡って来た。
「どうする?一緒に飯をどうかな?」
二人に異存は無かった。急いで部屋を往復、荷を置いてきた。
四人で連れだって歩き出した。
「ん!」雨。足早になった。
あおしま、 東京にある同名のステーキレストランの支店だった。
ドアを開いた。フィリピン人のウェィトレスが出迎えた。
「予約はしてないが・・・・・・かまわないか?」
「ナンニン?」たどたどしい日本語。
「四人だけれど」
テーブルに誘われた。
「ナンニスル?」
「あおしまスペシャルディナー」
「ダメ、ヨヤクシナイト」
しばし四人で協議。それは翌日の七時に廻すことにした。
この日はステーキに落ち着いた。
私と辰也はTボーンステーキ。フィジーはサーロイン。丸ポチャはハンバーグステーキを。
「ヤキカタハ?」
「ミディアム」と辰也。
「レア」と私。
「ホントウ?」疑わしそうな目で訊く。
「うん」頷いた。
「ヤメタホウガイイヨ。タベラレナイヨ」
「どうして?」
「カタイ」
「ではミディアムレアだ」
彼女は首を振る。
『じゃあ訊くな』と言いたかったが「分ったミディアムで」
彼女はにっこりと頷いた。
「ノミモノハ?」
『さてどうしようか』と考えていたらフィジーが「ビール」。
『そうとうの呑兵衛だぞこいつは』
ステーキの大皿が並べられた。F4で恒例の食い物シリーズの撮影。
※インスタグラムはまだ存在しない。今だったら撮らない。
ついでに向かいに並んでいる辰也と丸プチャのツーショット。
「新婚旅行みたいだなー。オイ」※見出し画像
とりあえずビールで乾杯。
肉の味は?。まあこの程度だろう。南の島で和牛の味を求めても得られるはずがない。
「今日はどうでしたか?」
「まあまあかな・・・我々以外は全員女性だったし。いやホストが一人いたか」
「ヘェー」
「平均年齢が少々高かったけれどね・・・とにかく五人で三百歳以上」
「おばさん?」
「うん、だけどこいつはもててましたよ」
「勘弁してくださいよ。ファスナーをいきなりあげるから肉は挟んじゃうし、水中ではフィンで蹴られるし、さんざんだったんですから」
「ポイントはどうだったんですか?」
「タートルコープとニュードロップオフ。だが、体長不良の所為もあってもう一つと言うところかな」
「船酔いですか?」
「睡眠不足だと思うのだが・・・昼飯も殆ど喰わなかったな・・・」
「お昼は昨日と同じ島?」
「そう、続々と船が集まってくるから君たちも顔を出すかと思っていたが・・・」
「私たちは近くの無人島みたいなところ。良かったよグリコ」のCMに出て来そうな島で」
「ふーん」
「港で『浮気』するなって叫んだでしょう」
「そんなこと言ったけ。・・・ん!・・・言ったかもしれないな」
「もう、みんなに好奇の目で視られてたいへんだったのだから。でも一緒に行きたかったな」
「そうしたら写真も撮ってあげられたのにネ」
「欲しい。一枚でいいから水中での写真」
「明日一緒の船になるように頼んでみれば」
「明日はペリリュー島に行くそうです。そこで三本。そうだドリフトダイビングってなんですか?」
「簡単に言えば水中を流れに乗って移動することだな」
「そうなんだ・・・でも私にできると思いますか?」
「危険があったら連れては行かないと思うが・・・?でも三本は止めておいた方がいいかもしれない」
「そうします」
※ペリリュー島 ペリリュー島のダイビングは中級者以上。フリー潜行ができるなど…パラオの中ではかなり条件が厳しい。
Cカードを取り立てのビギナーを連れて行くことは無謀。
♪ここは お国を 何百里 ・・・ 奥の方の席から軍歌が聞こえて来た。
かなり年配の女性グループ。あの戦争で家族を失った方々のようだ。
小声で一緒に唄った。
食事を終えてあおしまを出た。
「どうしますか?これから」
「珈琲が飲みたいな」とフィジー。
「部屋に来ますか?。インスタントではないドリップ珈琲を御馳走できますよ」
昨夜と同様に夜が更ける迄・・・海の話 『早く寝ろ!』
つ づ く