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パラオ共和国(ベラウ共和国) 1993年  その10

2021-08-10 12:53:54 | 写真 海

 六本目 ブルーホール

 ラストはパラオの名物ポイントのひとつであるブルーホールである。

 名前から想像できるようにブルーコーナーのすぐ傍にあった。
 艇がポイントに近づいた。海面は多少波立っている。

 ジャイアンが錨を持って立ち上がった。投錨。うまくアンカーリングできない。
 ガイドはバウでふんぞり返っている。顎をしゃくってジャイアンに命令を下していた。
 協力しようと言う意志はまったく見えない。その態度は視ているだけで不愉快になる。
 
 ニコノスを辰也に手渡ししてからエントリーする心算でゆったりと構えていた。
 「急いで下さい」挑戦的な口調でガイドが言った。
 オバサン軍団が潜行するのにはかなりの時間を要する。
 ラストエントリーでも充分に余裕があるはずだった。
 事実、先の五回とも迷惑をかけた憶えはない。
 だが子供相手に言い争いをする心算は無かった。黙ってグローブをつけ始めた。
 「グローブは水中でも着けられます」
 『喧嘩を売っているのか?こいつは』

 エントリー。ドロップオフを20mほど降下。
 ぽっかり空いた横穴に入って行く。
 普通はタートルコープと同様に穴を垂直降下する。
 だが潮汐の関係で艇が穴に近づけない。通常とは異なるルートをたどった。
 総勢十三人が犇めきあっていたので仕方がないか。
 頭上を見上げた。
 ダイビング雑誌に載っていた神秘的なブルーは何処にも見当たらない。
 少々残念である。
 婆が降って来た。フィンで頭を蹴られた。凄い数のウェイトを着けていた。
 うまく沈め無いのでオーバーウェイトにしているようだ。
 BCのエアを抜くと一気に沈む。否、落ちる。深場は危険。
 
 壁沿いに移動。
 緩やかではあるが流れがある。
 ドリフトダイビングほどでは無いが流れに乗っていた。
 大型のハタタテダイが三匹、ソフトコーラルの陰に潜んでいた。

 流れの有るところで停止している魚は殆ど全部が同一方向(流れに向かって)を向いている。口を開いている場合が多い。
 これは流れて来る餌を効率よく待ち受けているらしいです。また水源に向かっていれば干上がることは無い。と何かの本での解説を視た記憶があります。
(貴方がダイバーならば次の機会に観察してみると宜しいかと)



 オバサン軍団エキジット。
 数分後、殆ど減圧停止時間もとらされずに我々もエキジット。

 ・・・・・・

 マリーナへ到着。
 「足元滑りますから注意してください」私もしつこい。SASが笑った。
 本来なら毎回スタッフが注意を促すべきなのだ。
 お隣さんたちは遠方のポイントに言っているのでまだ帰港していない。
 明日は帰国。本日は器材一式を持ってバスに乗り込んだ。

 パラオホテルへ到着。まず、シャワー。
 ・・・珈琲を淹れて静かに味わう。
 ・・・辰也がタオルを腰に巻いて出て来た。
 入れ替わりに再びバスルームへ。
 今度はバスタブに水を貼った。ニコノスを水に漬けた。塩分をある程度落としてからタオルの上に並べた。
 次に三日間使用したダイビング器材を漬けた。軽くゆすり洗いをしてテラスに干した。
 どちらも帰宅してから再度丁重に塩抜きをする。

 ログブックに記入。ベッドに横たわっていた。辰也もぐったりとしている。

 ドアを開く音。お隣さんが帰って来たようだ。暫くしてノック音。
 「開いてるよ」フィジーが顔を出した。
 「今日は面白い話があるぞ」

 「えっー!どんな?」
 「あとでゆっくり話してあげますよ。予約は七時だからね、とりあえず風呂に入って支度をしてください」
 「いまシオちゃん(丸ポチャ)が入っているからもう少ししてからね」
 頷いた。
 「で、ペリリュー島はどうでした?」
 「シオちゃんたちは三本潜ったのね、私はパスしたら近くの島に降ろされた」

 「一人で?」
 「うん」
 「無人島?」
 「違うと思うよ。現地の人らしい人をちらっとみたよ」
 「怖くなかったかい?」
 「少しね。女一人で海岸にいたからだと思うけど、よそのボートが使づいてきて『どうかしましたか?』ですって」
 「漂流とまちがわれたんだそれは」
 「『大丈夫です。みんながダイビング終るのを待ってるんです』って答えたら手を振って行っちゃった」

 午後七時 あおしま

 奥の別室に案内された。テーブルは二組。一組はすでに宴たけなわだった。
 我々はその奥の席に誘われた。



 辰也と丸ポチャ。私とフィジーが並んで座った。



 テーブルの中央に真っ赤に茹で上がったマングローブ蟹の皿。俎板の上に大きなゴシキエビ、魚、貝の刺身。
 「おお!凄い」辰也が目を見張るようにして叫んだ。
 F4にフラッシュを装着。料理の写真を撮った。
 昨日のウェイトレスが鍋を運んできた。



 蓋を開けてみた。黒いカタマリ?・・・蝙蝠だ。
 フルーツバットがスープの中で恨めしそうな顔をしていた。
 私を覗くみんなが顔をしかめた。






 さらに料理が運ばれて来た。最初はテーブルが広すぎるように感じたがが手狭になった。
 「乾杯!」グラスを合わせた。
 まずはマングローブ蟹。思った以上に美味い。
 だがフィジーは口に合わないようだ。・・・いい娘だ。
 海老はやや大味。ホタテは敢えてここで喰う必要は無し。
 蝙蝠スープは濃厚で美味。三人にも無理矢理勧めた。



 ウェイトレスが空になった鍋の「蓋の上に蝙蝠を広げた。
 「カワイソーネ」・・・だったら料理するな。

 話題は当然『辰也行方不明事件』である。
 ことのいきさつを掻い摘んで話した。二人が顔をしかめた。
 「どうしてガーンと言ってやらなかったの?。私だったら・・・」
 フィジーの言はなかなか手厳しい。
 「他が女の子と年寄りだったからね。みんなが楽しみに来ているのに大声をあげたらぶち壊しだろう」
 「それにしても・・・・・・」
 「あと一本残っていたんだよ。言うのは簡単だけれども腹癒せに何かしそうな奴だろう。・・・飯を喰っている間にBCとかレギとかに悪戯するとか、意地悪そうな顔をしていたしね」
 「ぽーさん。三回くらい切れそうになりましたね」張本人の辰也が言った。
 「莫迦野郎。何を言う。俺くらい人間が出来てくると少々のことでは・・・」
 「いや、Cカードを取り上げると言ったとき、船を降りたとき、それから二本目の直前。顔つきが変わりましたよ」
 「よく視ていやがる。水中でもそれくらい周りを視ていろよ」
 「へへ」
 「しかし、あいつは怖さと云うものを知らないのかね。誰が見たって俺の方が腕力がありそうだろう。図体も二回りほど違うし。・・・パンチが飛んでくることなんか考えないのかね」
 「いまに何か取り返しのつかないことをしそうですね。そうなるまでわからないのでしょうね」
 「それからでは遅いな・・・第一その時の客はどうなるのだ」
 「・・・・・・」

 「面白い話をしようか。ライフガードのアルバイトに来たものにメガホンを持たせるだろう。些細なことまで怒鳴り散らすのはだいたい出来の悪かったやつだな。
  ・・・学生時代におよそ何とか委員てのに縁が無かった奴だ。・・・錯覚するんだろうな。自分が偉くなったと。・・・奴もその口だな」

 食後のフルーツが運ばれてきた。西瓜だった。
 私はこれは喰わない。「何故?」と思うならば夏の海水浴場に来てみれば分かる。夕刻にゴミの一つでも拾えばその異臭に閉口するだろう。
 蟹のお礼にフィジーに進呈。
 珈琲で仕上げ。
 全員で$135.

 

 もうちょっと つ づ く 

 

 

 

 

 



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