「模倣犯」で犯人ピースに翻弄され最後まで戦い、そして勝利した
あのフリーライター前畑滋子の9年後のお話。
あれだけ大きな事件を扱ったフリーライター前畑は、
結局のところ本も出版せず、あの9年前の事件について何も語らずにいた。
知人の経営する小さな出版社に身を置き、細々と仕事を続けていた前畑の元へ
ある日、萩谷敏子という主婦が尋ねてくる。
「死んだ息子の描いた絵を調べて欲しい」というのだ。
彼女の息子「等」の描いた絵を見た前畑は愕然とする。
等の描いた絵の中に、9年前のあの事件の現場である山荘の絵があり
そこには、警察と前畑しか知りえない物が描かれていたからである。
等には何らかの超能力があったのだろうか?
さらに前畑が等の絵を調べていくと、
最近ワイドショーを賑わせていた事件の現場が描かれている絵があった
蝙蝠の風見鶏の付いた家の床下には、少女の死体が横たわっている絵
しかし、等はこの事件が発覚する前に交通事故によって亡くなっていたのだ
どうやって、等はこの事件のことを知り得たのだろうか?
事件の現場である土井崎家は火事により焼失した
火事現場にたたずむこの家の主、土井崎夫婦は自分達の住んでいた床下を指差し
「家出をしたと言っていた長女の茜を、自分達が殺し床下に埋めた」と供述する
しかし、娘を殺害してから既に16年の月日が流れており時効が成立していた。
等の能力の裏づけを取るために、沈静化しつつある事件を掘り下げていく前畑は
土井崎家のもう一人の娘、殺された茜の妹である「誠子」と会う。
誠子もまた、両親がなぜ茜を殺したのかという疑問を抱えており
それを前畑に調べて欲しいと依頼してくる。
一人息子を交通事故で亡くし、悲しみのなか、息子の遺品を調べているうちに
息子には、誰にも言えなかった秘密の能力があったらしいと感じた母。
16年ものあいだ、共に生活していた家の床下に、家出したはずの姉が埋められており
その姉を殺害し埋めたのが両親であったと知った娘。
9年前の事件を引きずり、あの事件について語ることも書くことも出来ずにいる前畑
放っておいても害はないが、絶えず喉元に掛かる小骨のようなそんな出来事に心を縛られ、
前に一歩を踏み出せない女性3人。三者三様の心の動きが絶妙に描かれている作品である。
読んでいるうちに、「もう、いいんじゃないの?」っと思う場面が何度かあった。
なぜそこまで前畑が固執し調べるのかが解らなかった。
9年前の事件もそうだが、今回の出来事も彼女は本にする気がない。
どこに発表するわけでも、誰を救う訳でも、何の益になるわけでもない。
それなのにナゼ彼女はこうまで固執し、調べを続け、全てを明らかにしようとするのか?
そんなことをズ~っと考えながら、読んでいた。
最たる理由の一つは…「自分の為」なんだろうな。
9年前、「模倣犯」を読んだ時、実は前畑のことが好きになれなかった。
自己中な行動が多くみられ、むしろ嫌いな部類に入る人だったと記憶している。
今回の前畑は、やっぱり自己中的な要素も残っていたけれど
「自分の為」に動く彼女を、そんなに嫌いじゃないと思った。
私が歳を取ったことと、なにか関係があるのだろうか?(笑)
最近私も先を見据える年齢となり「まず、自分のために生きたい」っと思う気持ちが
強くなったからかもしれん(ハハハハハ)
「模倣犯」を読んでいなくても、読める作品ではあるが
「模倣犯」を読みたくなる作品でもある。
すっかり「模倣犯」の内容を忘れていた私であったが、チラっと読み返してみたくなった
でも…「模倣犯」って…もの凄く、文章量が多いのだ
しかも、大判の本なのに上下二段に分かれて書かれておるので字が小さい。
9年前は、この程度の文字でも何の苦もなく読めていたんだの
少し老眼気味になって来た今の私の目には、可なりシンドイ(笑)
この先、こんな文字をまた読めるようになる日が来るんじゃろうか???
気力が快復したら、また読んでみたいもんだ(アハハハハハ)
ポチっとで、作者のヤル気でるかもです(笑)