想い事 家族の記録

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苦悩にまみれた使命すら、希望に満ちた夢だと笑う。幼かった君は、いつの間にそんなに強くなっていたんだ。

2025-01-29 22:13:30 | 日記
映画鑑賞 『地獄の便意と緒方拳』


〜時代劇、それは思わぬ伏兵〜

専門学校時代のある日、
クラスメイトのYちゃんに映画に誘われた。

「時代劇なんだけどね」

…またしても,新たなるジャンルをぶちこんできましたな!
今度はどんな試練を課されるんだ? 
と思いつつ出演者を聞いてみると、

「緒方拳だよ」

渋い。渋いがすぎるぞ、Yちゃん!

しかし、前回の「クズアウトロー男が浮気して殴って精神崩壊」
みたいな地獄よりは 100億倍マシ だろう。
桃太郎侍や遠山の金さんくらいは好きだったし、
これは意外と楽しめるかも知れない。
そんなことを考えながら映画館へ向かうと、
クラスメイトのA君とB君にばったり遭遇。

A君「君たちも観に来たんだ。
この映画、期待していいみたいだよ!」

お、なんだか期待が膨らむ。
だが、その横でB君の顔色が妙に悪い。

「どうしたの?」

Yちゃんが聞くと、B君は静かに告げた。

「便意を…我慢しているんだ…」

…いや、行けよ。
しかし、B君は神経質で
「気に入らないトイレでは用が足せない」
という繊細なフェアリー系男子だった。
映画館のトイレは彼の基準値に達していなかったようだ。
「生理的に受けつけないんだ」と訴えるB君に、
「映画を観てるうちに腹も落ち着くだろ」と、
A君は適当なフォローを入れ、ふたりは劇場の闇に消えた。


〜そして、上映開始〜

結果的に 、その映画、めちゃくちゃ面白かった。
時代劇らしい勧善懲悪の筋書き、
高潔な武士道。
ソードアクションはキレキレだし、
ド派手なファイヤースタントや
ダイブスタントが桁外れだった。
きっとそれが話題を呼んだのだろう。
次々と凄惨に散りゆく
正義の浪人たちや、
(この散り方が、いちいち、
個性的で壮絶だった。
考案者はおそらくサイコ)
圧倒的多数の敵陣に斬りこんでいく緒方拳。
文句なしにカッコいい。
守るべき者を命を張って守る。
渡される命のタスキ。

この展開、大好物だ。
いいぞ、この映画。素晴らしい!


〜そして、戦の終焉〜

興奮冷めやらぬまま外へ出ると、
再びA君とB君にばったり。
A君が「いやあ、良かったね! 面白かった!」
と爽やかに感想を述べる。

私 & Yちゃん「緒方拳、かっこよすぎ!」
「主題歌も良かったよね!」
「CD出たら買うかな!」

そんな話で盛り上がる中、
B君は限界ギリギリの状態で立ち尽くしていた。
彼は2時間近くずっと便意を耐えていたのだ。

映画の中では、
浪人たちが命をかけた戦いを繰り広げていたが、
劇場の片隅では、
B君が己の腹と 壮絶な死闘 を繰り広げていたようだ。

「早くきれいなトイレを探してあげなよ」と、
ふたりを見送るしかなかった。


〜そして、平和な日常へ〜

帰路につきながら、Yちゃんがしみじみと呟いた。

「B君、アホだな」

その後、私とYちゃんは、
テリヤキバーガーにかぶりつきながら、時代劇考察に花が咲いた。

「私、高橋英樹さんがわりと好きなんよ」と告白すると、
「渋い趣味だな」と、Yちゃんが微笑んだ。

やはり、映画は趣味が合う人と行くのが一番だ。

ちなみに、あの日観た映画は、
『将軍家光の乱心・激突』である。









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