このところ日本中がずっと猛暑に見舞われている。毎日毎日焼けてしまいそうな暑さで、行こうかどうしようかずいぶん迷ったが、去年のちょうど今頃、8月4日に和田峠に行った時も猛暑の日だったことを思い出して、行くことに決めた。
新宿から登山者や観光客で超満員のスーパーあずさに乗って、大月で普通に乗り換え、甲斐大和に着いたのは8時33分だった。
小さな日陰を見つけて自転車を組んでいると、
「こんにちは」
と声をかけられた。振り向くとリュックを背負った男性だ。40くらいだろうか。
「きょうはどちらを走るんですか」
「笹子峠と黒野田林道、そして雛鶴峠を越えて上野原まで行くつもりです」
「峠三昧ですね」
「もう年だから、のんびりとね」
「私は清里まで行く予定なんですが、甲府を抜けて行くのがきついです。なにしろこの暑さですからね」
リュック姿なので、てっきり登山者かと思っていたら、自転車だという。しかもロードバイクではなく、自分と同様にランドナーを袋から出していたよ。仲間に出会えたようでなんだか嬉しかったね。
写真を撮ってもらったよ。
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甲斐大和自体標高がかなりあるので、自転車を組んでいても汗をかくことはなかった。日差しは強いが、日陰は涼しい。
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駅の近くのコンビニで、いつものように水とおにぎり、それにアンパンを仕入れて出発したよ。
国道20号から県道212号へ入るとすぐに初日橋という橋があり、日川を渡る。
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あれは中央自動車道だね。あの下をくぐって行くのか。
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また橋だよ。ちょっと古い、いい感じの橋だ。こういう橋はいつまでも残しておいてほしいね。こまかい橋と書いてある。
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「日影」の集落を抜けていくよ。なんとなく雰囲気のいい集落だ。
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おや、また橋がある。天狗橋というんだね。川は笹子沢川だ。
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少し行くと木の間に涼しげに水を落とす堰堤が見えた。
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さあ、笹子峠に向かう上りだ。
道はだいたい木陰を進んでいくので涼しいよ。
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水が落ちてるよ。水の音は心地いい。
蝉の声がしきりだ。笹子沢川の水音と蝉の声がついて回る。暑苦しい蝉の声が涼しげな沢の水音で打ち消されているといったところかね。
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おや、ここは旧甲州街道ということなのかね。ハイキングコースにもなっているんだろうな。
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暑さはあまり感じない。標高はこの辺で850mほどあるようだからね。涼しいわけだ。それに道は木陰だし。ずっとこんな感じが続いているよ。
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いつまでも上って行けそうなほど勾配は緩やかだ。ただ、眺望はほとんどない。ごく稀に近くの山並みが見られる程度だ。
これは甲州街道峠道と書かれた道標のところから少し行った先に、一瞬眺められた山の景色だ。山の名前はわからないが西北西方向の眺めだよ。
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大きな堰堤だが水が落ちていない。上ってくるにつれて、こんなふうに水を落とさぬ堰堤が目に付くようになったね。苔むしていて、何か巨大な廃墟のようで、これはこれで惹かれるものがあるよ。
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涼しい道はずっと続く。国道20号の旧道で一般道だが、舗装された林道のような雰囲気だ。だいぶ高いところまできた。いつの間にか蝉の声が聞こえなくなっていたよ。蝉は下の方だけかね。
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一瞬開けたところに出て、遠くの山の景色が眺められたが、山はモヤがかかったように煙っていたよ。この暑さで、山々が多量の水蒸気を放出しているからなのかね。雷雨にでもならなければいいけど。
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峠までは200mごとにこんな表示があった。あとどれだけ走れば峠に着くのかがわかるのでいいね。
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東屋だ。峠だね。眺望がないから、休む人もほとんどいないのか草に覆われている。
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笹子隧道だ。中は真っ暗だし、心霊スポットという噂もあるのでちょっと怖い。
笹子峠は、昭和13年にこのトンネルが開通されるまで、甲州街道最大の難所といわれる険しい道だったそうだ。この辺り熊も出没するらしい。
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やっと出口だ。わずか240mほどだが、ずいぶん長く感じられた。狭いうえに真っ暗だったからね。外の光にホッとするよ。
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出口は趣のある造りになっている。歴史を感じさせるよ。いい雰囲気だね。
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さあ下りだ。下りも気持ちのいい木陰が続くよ。
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少し下ると、有名な矢立の杉だ。県道からは100mほど山道を下ったところにある。恐ろしく巨大な杉だ。高さ28m、幹回りが9mほどあるらしい。樹齢は1000年を超すという。写真ではわかりづらいが、そばで見るとかなりの迫力があるよ。う~ん、おみごと。
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矢立の杉のそばにこんな道標があった。旧街道の峠道だね。昔の人はここを歩いて旅をしたのかね。
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やっぱり下りは気持ちがいい。
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もう集落が見えてきたよ。静かな風景だね。
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あっという間に国道20号だ。
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400mほど国道を走り、ここを右へ入ったよ。
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さあ、次はいよいよ黒野田林道だ。この林道は序盤に長い急勾配があるそうだ。
神社があった。奥野稲村神社だ。旅の無事を祈った後、すこし意気込んでペダルをこぎ始めたよ。
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ところがどっこい、道の行く手が巨大な堰堤に遮られていた。まるで道がそこからもぎ取られたように無くなっていたんだ。
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とりあえずゲートをくぐって進んで見た。
やっぱり道が切れているよ。どっ、どうなってるんだ?横の階段を上れってことかね。
地図を確かめたが間違っていない。ナビも同じ地図だ。どうしよう…。
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いったん引き返して人に尋ねることにした。しかし、人の姿が見つからない。真夏の真っ昼間、山の小さな集落では人を探すのも大変だ。みんなどこかに隠れてしまったのかね。
国道へ戻ると、幸いすぐにガソリンスタンドが目に付いたよ。
スタンドのお兄さんが教えてくれた。どうやら道が違っていたようだ。国道を少し戻った左に「やまびこ」という食堂があり、その先に入る道があるらしい。
カシミールの解説本の地図を頼りに道をたどっていたんだが、巨大な堰堤で分断された道の他には、地図には道が見当たらなかった。ナビの山地図にも表示されなかったんだ。地図は更新しなければダメだね。
教えてもらった道を行くとすぐに上りになり、トンネルが現れた。追分トンネルとある。
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後で調べたら、カシミールの電子国土地図にはちゃんと道もトンネルも載っていたよ。解説本の地図が古かったんだね。これもだいぶ前に買ったやつだから。
トンネルの出口だ。トンネルの出口から見る外の景色というのは何かいい。
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なるほど、さっきの堰堤わきの階段はここへ通じていたのか。
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奥野沢川を渡る奥野橋だ。この橋の先から急勾配が始まるんだよ。
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まっすぐに延びる長い急勾配で、心が折れそうになる。一番軽いギアーにしていたけれど、とうとうジグザグ走行で上ることにしたよ。誰もいなかったけれど、見られたらちょっと恥ずかしい。
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ようやく序盤の急勾配をクリアーしたよ。きつかったね。
ここが黒野田林道の起点なんだね。あの急勾配はまだ林道ではなかったんだ。
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あれっ?ゲートが閉まってるよ。
…まあ、行ってみよう。右側から入る。
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林道に入って、しばらく勾配の緩い上りを上って行くと、林道保安の作業をしている人たちが5,6人道いっぱいに広がってお弁当を広げていたよ。
中の一人が不機嫌そうに
「とおりぬけられないよ」という。
崩落でもあったのかと思った。そうでなくても、こちらは通行止めのゲートを越えてきたのだから、通れないぞと言われても仕方がない。変な質問だとはわかっていたが、ちょっととぼけて、
「えっ、どうしてですか?」
と聞いてみた。
「ゲートが閉まってるからだよ」と。
なんだか意地悪そうな返事だ。こうなったらこちらも負けずに、
「ゲートはまったく通れないんですか」
「通れないよ」
「ガッチリ閉まってますか」
「ガッチリ閉まってるよ」
まるで取りつく島もない。
「う~ん、困ったなあ…」
仕方がない、戻ろうか。戻ってどこを走って行こうかと考えていると、すこし離れたところから、
「手で開けられるよ」
「手で開けられるのか?」と最初の男。
「あけられるよ」
「開けられるそうだ。開けたら元に戻しといてね」
「ありがとうございます」
開けられるよと言った年配のほうにお礼を言って走りだした。とにかくよかったね。引き下がらないでよかった。
この林道の様子は、笹子峠の県道212号とほとんど変わりがないね。木陰の道で、眺望がない。涼しいのはありがたいが。
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水の音が聞こえるよ。苔むした堰堤を水が落ちている。
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一瞬の眺望。木と木の間に眺められた山の景色だ。夏の山だ。
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前方に再び急勾配が見えてきた。
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ピークを過ぎると、多少のアップダウンはあるがほぼ水平な道だ。
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涼しいのは鶴ヶ鳥屋山の北斜面を巻くように道が進んでいたからだね。
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2つ目の小さなピークを過ぎ、高度150mほどを一気に下ると東屋があった。
東屋の手前に、通交止めのゲートが置かれていたが、訳なく手で動かすことができたよ。
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ここでお昼を食べることにした。
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この東屋のある場所が、この林道では唯一の展望ポイントだね。
富士山は残念ながら上の方が夏雲に隠れ、わずかになだらかな裾野が見えるだけだった。右の方には三つ峠山が見える。
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ほかにもいろんな山が見えたが、どれがどれだかよくわからなかったよ。
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さあ、下りだ。道は山の南斜面に移り、日陰がほとんどなくなった。日差しはまともに浴びると、やはり暑いね。標高があるから空気はまだ涼しいけれど。
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ゲートだ。ここが黒野田林道の終点だね。
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ここからは県道705号だよ。日差しが強いね。そして眩しい。
しかし、まだこの辺りで700mくらい標高がある。めちゃくちゃ暑いというわけでもないよ。
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大幡川に沿ってずっと下りだ。下って行くと、どんどん気温が上がってくるのがわかる。次第にモワッとしてきて気持ちが悪い。
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大幡川と桂川の合流地点に架かる橋と橋からの眺めだよ。
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中央自動車道に沿って、その下の道を「禾生」まで行き、富士急の踏切を越えて県道35号を進む。この朝日川に沿った道は、とてものどかな風景の中を行くが、とにかく暑い。強い日差しがまともに照りつけてくるんだ。
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石船神社だ。3年前、鈴懸峠、雛鶴峠を走ったときに水を求めて立ち寄った神社だよ。しかしその時は、水は止まっていて、どこかの工事場のおっさんたちが木陰で昼寝をしていたんだ。
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そして、その時と同じこの道をまた走っている。懐かしいが、やはりあの時と同じように恐ろしく暑い。日陰が全くないうえに、照りつける強い日差しとアスファルトの反射熱で、立ち止まったらもう走れなくなりそうだよ。
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峠の手前の少し急な勾配を我慢して上り切ると、見覚えのあるトンネルが近づいてきた。新雛鶴トンネルだ。
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トンネルを過ぎるといくらか日陰も現れ、涼しくなったよ。あとは下る一方だ。嬉しいねえ。
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3年前、この場所で汚れた子犬に出会った。ペットボトルの水を与え、後ろ髪をひかれる思いで立ち去ったときの辛い気持ちがよみがえってくる。あのときの子犬はどうしているだろうか。
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さらに道を下って行くよ。時間は既に4時を回っている。いくらか暑さが和らいできただろうか。日差しが弱まってきたようだ。
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ここもやはり3年前、遅いお昼を食べた場所だ。まったく同じままだよ。
あの時は輪行旅を始めてまだまもない頃で、鈴懸峠、雛鶴峠と2つ越えるのにずいぶん時間がかかったんだ。
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景色も同じだ。う~ん、懐かしいね。
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この急勾配の下りの標示板にも記憶があるよ。
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日差しが弱まってきたせいか静けさを感じさせる山と空だ。
道は秋山川に沿ってずっと下りだ。
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廃校になった小学校の校舎の前を通り、桜井隧道へ。
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桜井隧道だ。そしてトンネルの手前の大きな観音様はやすらぎ観音だよ。
この隧道の道は2年前の5月、厳道峠を訪れたときにも通ったんだ。あのときの観音様は、朝の日差しを浴びて優しく微笑んでいたけれど、今日は夕暮れの中にひっそりと立っている。そんな印象だ。
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これは旧天神トンネルだよ。天神隧道と書いてある。
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さあ、この桂川の橋を渡ると上野原駅だ。
夏の夕暮れの雲がきれいだね。
暑い一日、また旅が終わるよ。お疲れさん。
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ところで、上野原駅で自転車をばらして輪行袋に納めるときには大汗をかいたよ。やっぱり地上は暑いね。
この日の暑さは猛烈だったようで、東京で35.2℃、群馬県の舘林で39.8℃、涼しいはずの北海道でも、池田町というところで37.1℃ということだった。驚いたね。山の上の林道を走っているとこの猛暑が嘘のようで、全く信じられないよ。
新宿から登山者や観光客で超満員のスーパーあずさに乗って、大月で普通に乗り換え、甲斐大和に着いたのは8時33分だった。
小さな日陰を見つけて自転車を組んでいると、
「こんにちは」
と声をかけられた。振り向くとリュックを背負った男性だ。40くらいだろうか。
「きょうはどちらを走るんですか」
「笹子峠と黒野田林道、そして雛鶴峠を越えて上野原まで行くつもりです」
「峠三昧ですね」
「もう年だから、のんびりとね」
「私は清里まで行く予定なんですが、甲府を抜けて行くのがきついです。なにしろこの暑さですからね」
リュック姿なので、てっきり登山者かと思っていたら、自転車だという。しかもロードバイクではなく、自分と同様にランドナーを袋から出していたよ。仲間に出会えたようでなんだか嬉しかったね。
写真を撮ってもらったよ。
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甲斐大和自体標高がかなりあるので、自転車を組んでいても汗をかくことはなかった。日差しは強いが、日陰は涼しい。
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駅の近くのコンビニで、いつものように水とおにぎり、それにアンパンを仕入れて出発したよ。
国道20号から県道212号へ入るとすぐに初日橋という橋があり、日川を渡る。
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あれは中央自動車道だね。あの下をくぐって行くのか。
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また橋だよ。ちょっと古い、いい感じの橋だ。こういう橋はいつまでも残しておいてほしいね。こまかい橋と書いてある。
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「日影」の集落を抜けていくよ。なんとなく雰囲気のいい集落だ。
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おや、また橋がある。天狗橋というんだね。川は笹子沢川だ。
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少し行くと木の間に涼しげに水を落とす堰堤が見えた。
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さあ、笹子峠に向かう上りだ。
道はだいたい木陰を進んでいくので涼しいよ。
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水が落ちてるよ。水の音は心地いい。
蝉の声がしきりだ。笹子沢川の水音と蝉の声がついて回る。暑苦しい蝉の声が涼しげな沢の水音で打ち消されているといったところかね。
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おや、ここは旧甲州街道ということなのかね。ハイキングコースにもなっているんだろうな。
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暑さはあまり感じない。標高はこの辺で850mほどあるようだからね。涼しいわけだ。それに道は木陰だし。ずっとこんな感じが続いているよ。
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いつまでも上って行けそうなほど勾配は緩やかだ。ただ、眺望はほとんどない。ごく稀に近くの山並みが見られる程度だ。
これは甲州街道峠道と書かれた道標のところから少し行った先に、一瞬眺められた山の景色だ。山の名前はわからないが西北西方向の眺めだよ。
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大きな堰堤だが水が落ちていない。上ってくるにつれて、こんなふうに水を落とさぬ堰堤が目に付くようになったね。苔むしていて、何か巨大な廃墟のようで、これはこれで惹かれるものがあるよ。
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涼しい道はずっと続く。国道20号の旧道で一般道だが、舗装された林道のような雰囲気だ。だいぶ高いところまできた。いつの間にか蝉の声が聞こえなくなっていたよ。蝉は下の方だけかね。
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一瞬開けたところに出て、遠くの山の景色が眺められたが、山はモヤがかかったように煙っていたよ。この暑さで、山々が多量の水蒸気を放出しているからなのかね。雷雨にでもならなければいいけど。
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峠までは200mごとにこんな表示があった。あとどれだけ走れば峠に着くのかがわかるのでいいね。
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東屋だ。峠だね。眺望がないから、休む人もほとんどいないのか草に覆われている。
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笹子隧道だ。中は真っ暗だし、心霊スポットという噂もあるのでちょっと怖い。
笹子峠は、昭和13年にこのトンネルが開通されるまで、甲州街道最大の難所といわれる険しい道だったそうだ。この辺り熊も出没するらしい。
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やっと出口だ。わずか240mほどだが、ずいぶん長く感じられた。狭いうえに真っ暗だったからね。外の光にホッとするよ。
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出口は趣のある造りになっている。歴史を感じさせるよ。いい雰囲気だね。
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さあ下りだ。下りも気持ちのいい木陰が続くよ。
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少し下ると、有名な矢立の杉だ。県道からは100mほど山道を下ったところにある。恐ろしく巨大な杉だ。高さ28m、幹回りが9mほどあるらしい。樹齢は1000年を超すという。写真ではわかりづらいが、そばで見るとかなりの迫力があるよ。う~ん、おみごと。
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矢立の杉のそばにこんな道標があった。旧街道の峠道だね。昔の人はここを歩いて旅をしたのかね。
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やっぱり下りは気持ちがいい。
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もう集落が見えてきたよ。静かな風景だね。
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あっという間に国道20号だ。
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400mほど国道を走り、ここを右へ入ったよ。
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さあ、次はいよいよ黒野田林道だ。この林道は序盤に長い急勾配があるそうだ。
神社があった。奥野稲村神社だ。旅の無事を祈った後、すこし意気込んでペダルをこぎ始めたよ。
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ところがどっこい、道の行く手が巨大な堰堤に遮られていた。まるで道がそこからもぎ取られたように無くなっていたんだ。
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とりあえずゲートをくぐって進んで見た。
やっぱり道が切れているよ。どっ、どうなってるんだ?横の階段を上れってことかね。
地図を確かめたが間違っていない。ナビも同じ地図だ。どうしよう…。
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いったん引き返して人に尋ねることにした。しかし、人の姿が見つからない。真夏の真っ昼間、山の小さな集落では人を探すのも大変だ。みんなどこかに隠れてしまったのかね。
国道へ戻ると、幸いすぐにガソリンスタンドが目に付いたよ。
スタンドのお兄さんが教えてくれた。どうやら道が違っていたようだ。国道を少し戻った左に「やまびこ」という食堂があり、その先に入る道があるらしい。
カシミールの解説本の地図を頼りに道をたどっていたんだが、巨大な堰堤で分断された道の他には、地図には道が見当たらなかった。ナビの山地図にも表示されなかったんだ。地図は更新しなければダメだね。
教えてもらった道を行くとすぐに上りになり、トンネルが現れた。追分トンネルとある。
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後で調べたら、カシミールの電子国土地図にはちゃんと道もトンネルも載っていたよ。解説本の地図が古かったんだね。これもだいぶ前に買ったやつだから。
トンネルの出口だ。トンネルの出口から見る外の景色というのは何かいい。
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なるほど、さっきの堰堤わきの階段はここへ通じていたのか。
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奥野沢川を渡る奥野橋だ。この橋の先から急勾配が始まるんだよ。
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まっすぐに延びる長い急勾配で、心が折れそうになる。一番軽いギアーにしていたけれど、とうとうジグザグ走行で上ることにしたよ。誰もいなかったけれど、見られたらちょっと恥ずかしい。
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ようやく序盤の急勾配をクリアーしたよ。きつかったね。
ここが黒野田林道の起点なんだね。あの急勾配はまだ林道ではなかったんだ。
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あれっ?ゲートが閉まってるよ。
…まあ、行ってみよう。右側から入る。
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林道に入って、しばらく勾配の緩い上りを上って行くと、林道保安の作業をしている人たちが5,6人道いっぱいに広がってお弁当を広げていたよ。
中の一人が不機嫌そうに
「とおりぬけられないよ」という。
崩落でもあったのかと思った。そうでなくても、こちらは通行止めのゲートを越えてきたのだから、通れないぞと言われても仕方がない。変な質問だとはわかっていたが、ちょっととぼけて、
「えっ、どうしてですか?」
と聞いてみた。
「ゲートが閉まってるからだよ」と。
なんだか意地悪そうな返事だ。こうなったらこちらも負けずに、
「ゲートはまったく通れないんですか」
「通れないよ」
「ガッチリ閉まってますか」
「ガッチリ閉まってるよ」
まるで取りつく島もない。
「う~ん、困ったなあ…」
仕方がない、戻ろうか。戻ってどこを走って行こうかと考えていると、すこし離れたところから、
「手で開けられるよ」
「手で開けられるのか?」と最初の男。
「あけられるよ」
「開けられるそうだ。開けたら元に戻しといてね」
「ありがとうございます」
開けられるよと言った年配のほうにお礼を言って走りだした。とにかくよかったね。引き下がらないでよかった。
この林道の様子は、笹子峠の県道212号とほとんど変わりがないね。木陰の道で、眺望がない。涼しいのはありがたいが。
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水の音が聞こえるよ。苔むした堰堤を水が落ちている。
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一瞬の眺望。木と木の間に眺められた山の景色だ。夏の山だ。
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前方に再び急勾配が見えてきた。
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ピークを過ぎると、多少のアップダウンはあるがほぼ水平な道だ。
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涼しいのは鶴ヶ鳥屋山の北斜面を巻くように道が進んでいたからだね。
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2つ目の小さなピークを過ぎ、高度150mほどを一気に下ると東屋があった。
東屋の手前に、通交止めのゲートが置かれていたが、訳なく手で動かすことができたよ。
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ここでお昼を食べることにした。
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この東屋のある場所が、この林道では唯一の展望ポイントだね。
富士山は残念ながら上の方が夏雲に隠れ、わずかになだらかな裾野が見えるだけだった。右の方には三つ峠山が見える。
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ほかにもいろんな山が見えたが、どれがどれだかよくわからなかったよ。
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さあ、下りだ。道は山の南斜面に移り、日陰がほとんどなくなった。日差しはまともに浴びると、やはり暑いね。標高があるから空気はまだ涼しいけれど。
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ゲートだ。ここが黒野田林道の終点だね。
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ここからは県道705号だよ。日差しが強いね。そして眩しい。
しかし、まだこの辺りで700mくらい標高がある。めちゃくちゃ暑いというわけでもないよ。
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大幡川に沿ってずっと下りだ。下って行くと、どんどん気温が上がってくるのがわかる。次第にモワッとしてきて気持ちが悪い。
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大幡川と桂川の合流地点に架かる橋と橋からの眺めだよ。
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中央自動車道に沿って、その下の道を「禾生」まで行き、富士急の踏切を越えて県道35号を進む。この朝日川に沿った道は、とてものどかな風景の中を行くが、とにかく暑い。強い日差しがまともに照りつけてくるんだ。
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石船神社だ。3年前、鈴懸峠、雛鶴峠を走ったときに水を求めて立ち寄った神社だよ。しかしその時は、水は止まっていて、どこかの工事場のおっさんたちが木陰で昼寝をしていたんだ。
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そして、その時と同じこの道をまた走っている。懐かしいが、やはりあの時と同じように恐ろしく暑い。日陰が全くないうえに、照りつける強い日差しとアスファルトの反射熱で、立ち止まったらもう走れなくなりそうだよ。
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峠の手前の少し急な勾配を我慢して上り切ると、見覚えのあるトンネルが近づいてきた。新雛鶴トンネルだ。
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トンネルを過ぎるといくらか日陰も現れ、涼しくなったよ。あとは下る一方だ。嬉しいねえ。
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3年前、この場所で汚れた子犬に出会った。ペットボトルの水を与え、後ろ髪をひかれる思いで立ち去ったときの辛い気持ちがよみがえってくる。あのときの子犬はどうしているだろうか。
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さらに道を下って行くよ。時間は既に4時を回っている。いくらか暑さが和らいできただろうか。日差しが弱まってきたようだ。
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ここもやはり3年前、遅いお昼を食べた場所だ。まったく同じままだよ。
あの時は輪行旅を始めてまだまもない頃で、鈴懸峠、雛鶴峠と2つ越えるのにずいぶん時間がかかったんだ。
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景色も同じだ。う~ん、懐かしいね。
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この急勾配の下りの標示板にも記憶があるよ。
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日差しが弱まってきたせいか静けさを感じさせる山と空だ。
道は秋山川に沿ってずっと下りだ。
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廃校になった小学校の校舎の前を通り、桜井隧道へ。
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桜井隧道だ。そしてトンネルの手前の大きな観音様はやすらぎ観音だよ。
この隧道の道は2年前の5月、厳道峠を訪れたときにも通ったんだ。あのときの観音様は、朝の日差しを浴びて優しく微笑んでいたけれど、今日は夕暮れの中にひっそりと立っている。そんな印象だ。
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これは旧天神トンネルだよ。天神隧道と書いてある。
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さあ、この桂川の橋を渡ると上野原駅だ。
夏の夕暮れの雲がきれいだね。
暑い一日、また旅が終わるよ。お疲れさん。
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ところで、上野原駅で自転車をばらして輪行袋に納めるときには大汗をかいたよ。やっぱり地上は暑いね。
この日の暑さは猛烈だったようで、東京で35.2℃、群馬県の舘林で39.8℃、涼しいはずの北海道でも、池田町というところで37.1℃ということだった。驚いたね。山の上の林道を走っているとこの猛暑が嘘のようで、全く信じられないよ。
いつも楽しく拝読させて頂いています。
10/31に昔の仕事仲間と道志村に宿泊するイベントがあったので以下のコースで走ってきました。
■高尾山口駅⇒大垂水峠⇒相模湖⇒雛鶴神社⇒雛鶴峠(旧道)⇒二十曲峠⇒山中湖⇒山伏峠⇒道志村
雛鶴峠の旧道を登っていったところトンネルは閉鎖されており、人が一人やっと通れるすきまが開いていました。そこに自転車をなんとか押し込んで歩きました。トンネルの中なのに壁が一部はがれ落ちたのか瓦礫だらけで一人で通るのは心細くて不気味でした。
みみ爺さんはこの旧道のトンネルを通られたのでしょうか?
■私は林道を一人で走る経験はあまり無いのですが、今回、スマートフォンだけをたよりに走りましたが、圏外になってしまって少々困りました。予備として紙の地図とコンパス、または専用のナビ等を併用しておく必要があると思いました。みみ爺さんは地図は何を使われているのでしょうか?
差支えなければご教示して頂けるとありがたいです。
ところで、私が利用している地図はもっぱらカシミールの地図です。地図に併用して、ガーミンのNUVI205という、5年ほど前に20,000円くらいで買ったものに山地図を入れて、外部電源(エネループ単三電池3本)をつないで使っています。
ただ、NUVI205は現在は製造されていないそうです。今はもっといい自転車用のナビが売られているのではないでしょうかね。
ナビについては、ブログのトップページを見てくださいね。紹介しておきます。